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第四話「Quinque」(中編)

金属に対し、許容値を超えた打撃が激突する音が、断続的に夜に響いて居る



厄介な事になったな、とは思った

漁夫の利こそ得て居るのは、確かな事実ではあるが


血月派と雷啓派

いま眼前で激突して居るのは即ち、魔女の世界に於いて最も巨大な暴力と、最も巨大な技術力の成果物であるのだ


とはいえ、戦いの天秤は『暴力』の勝利へと傾き始めて居た

雷啓派の少年の機械の躰は巨大であり、圧倒的でも在ったが、機敏さで譲る所が有ったらしく防戦が続いて居る

こうして居る合間にも、新しくまた機械の腕の一つが()し折られ、僕の近くに轟音と激しい土煙を立てて落下して来た


その煙の中から、這い出す者の影が在る

機械腕に囚われとなって居たArgentumだった



「まだ生きて居たのか」


僕は駆け寄りながら、それを助走にして顔を蹴り飛ばそうとした

実際にはArgentumが両手で顔を庇った為、思ったようなダメージは与えられず、彼は骨が折れたと思しき手の甲を押さえながら、苦しげな息を吐き出すだけだった


だが、今はそれで良かった

恐らくいま激突して居る二人の強者達は、戦いが終わったら次は、僕達など虫のように殺す事だろう

それを鑑みるに、Argentumにはまだ利用価値が有った



「さっさと起きろ」


肩を貸すと、手早く助け起こす

この男については、僕はある程度知って居る


視たところ、抵抗の意志は既に無い

また、この肩の貸し方ならば、彼を緊急時に攻撃から守る盾にする事も出来る

もし二人とも生存した場合には、恩も着せる事が出来る


いま戦いは僕にとって劣勢かも知れないが、Argentumに対し取った行動だけは個人的には最適解のように思えた



「逃げるぞ」


「そろそろ、決着が付く………」


激しい金属音

また機械腕が壊されたらしかった


あんなに余裕ぶって他人を痛め付けて居た雷啓派の少年が、狼狽えながら必死の抵抗を行う声が聞こえて来る

多少良い気味では在ったが、全く残された時間が無さそうだった



戦いに眼を向ける


残された機械腕が血月派の少年を捕まえる事に成功したらしく、ようやく大きな金属の鋏が、毛皮を纏った捕食者の胴をがっちりと捕らえて居た


だが、捕まえた位置が近過ぎた

血月派の少年は捕らえられながらも、拳を握って力任せに周囲の機械を殴り壊し続ける

雷啓派の少年を投影して居た透明な板に、その打撃の一つが当たり、亀裂が走った


弱点だったのか、或いは他の損傷によるものか

機械の躰は次第に力を喪い、敵を捕まえた腕さえが少しずつ垂れ下がり始めて居た


しかし血月派の少年を掴んだ鋏は、断固として開かない




近くの空気が『騒ぎ始めた』


上手く言語化する事が困難だが、そうとしか言いようが無かった

青白い光が雷啓派の機械の躰を中心に、発生し始めて居る



「────自爆か」


Argentumを地べたに投げ捨てると、僕は戦いの場から逃げるように走り出した


いま起こっている減少の構造解析の為、一瞬だけ振り向く

Argentumも僕と同方向に向けて走り始めて居た

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