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第97話 繋がっただけ

「ダリア婦人、いろいろお願いがあるんです」

 並べた上質な布、リボン、毛皮。

 それを色合わせしながらの打ち合わせ。

 ここダリア服飾店は、親友キリカの叔母さまの店。

 最近増えた仕事のために、新しくお針子さんを雇ったと言う。

 たしかに、仕事場には人が増えていた。


「お嬢さまの“おねがい”は大歓迎ですよ」

 まだなにかも言っていないのに、店主のダリア婦人はにっこり微笑んで返した。

「どんな物を作りますか? まだまだ、声をかけられる人脈はあります、どんどん受注できますよ」

 パンと胸を叩いて張る店主の、その頼もしさよ。


「ありがとうございます。早速、これなんですが……」

 私は、作りや装飾の発想を描いた数枚の紙をダリア婦人に渡す。

「これは……今までにないものだわ」

「ええ」

 1年後に流行るものですもの。

「この筒状のものは貴族用には毛皮を使って、街の人用にはもっと安く買えるように、綿をつめて温かさをつくります。首から下げられるようにして、ここに手を入れるだけで、家の中でも外でも使えるかなって」

 寒さを気にしないで遊び回っていた子供が何人か指を凍らせてしまい、失うことになったのを覚えている。

 手袋をしたがらない子供でも、これなら好きなときに暖を取ってくれやしないか色々考えた。

 布を華やかなものにすれば、おしゃれに敏感な女の子も使ってくれそう。

「いい案ですね。こちらは?」

 じっくり私の拙い画を見てくれたあと、ウンウンと頷いてくれた。

「こちらは、頭に被る防寒着みたいな? 耳が冷えるといけないので、丸みのある頭巾は貴族は毛皮、街の人は毛糸で編んで首元をリボンで結ぶタイプと男性用はボタンで止める。それと簡易に巻けるように三角のもので紐やリボンで顎に結ぶ形」

「まぁ、まぁ」

 店主の隣から、新しく雇った人だろうか、女性が覗き込んできて感嘆の声を上げる。

「素敵すぎて、私も欲しいわ」

「つくりましょう、つくりましょう」

 賛同してくれる。

「材料はある程度確保してあります。色合わせや素材合わせなどはダリア婦人の感覚でお願いします。その代わり、これらはダリア服飾店専売にしてください」

「えっ!? いいんですか!?」

 私の提案にふたりは驚いて、顔を見合わせる。

「もちろんです。急に仕事に対応していただいて、とても感謝しています。利益は関わったみんなで分配しましょう」

 握手の手を差し出したら、ダリア婦人は戸惑った顔になってしまった。


「あの、どうして? 姪のお友だちと言うだけで私に仕事を持ってきてくれたまではわかるのですが、利益分配など聞いたことがありません」

「そうですね」

 貴族は、街の人を使用する。

 あくまでも使用人として。

 利益は自分のもので、払うのは賃金以上のものはない。

 それが当然の今までだったけれど、私はちょっと思うところがあった。

 貴族のままなら気づけなかった。

 でも、イリやモアディさまと出会い別の国の人と会ったり、商人と交渉したりする中、奪い続けたら生産力ややりがいはどこに生まれるのだろう、って。

 与えられて、与える。

 それが、幸せの連鎖なのではないか。


「聞いたことがないなら、はじめてでいいんじゃないでしょうか」

 私が巻き込んでしまうことの詫び料みたいな意味合いもあるとは、口にできないけれど。

「みんなで潤えばいいのです。私は、みんなで笑って、美味しいものを食べたい」

「あははっ」

 私がそんなことを口にしたら、笑われてしまった。

 でもそれは嘲笑ではなく、パンと弾けたような明るい破顔。


「お嬢さまは、アメリアさまにとても似ていらっしゃる」

「えっ!?」

 出てきた名前に驚く。

「お母さまを知っているの!?」

「えぇ、もちろん」

 確かに、ダリア婦人はお母さまに歳は近いのだろうけれど。

「私たちの憧れでした。御本人は嫌がっておりましたが、主に下級生を中心として“アメリア会”を結成して慕っていたんですよ」

「ふふふ、懐かしいわ。私もその会に入ってたのよ。アメリアさまが卒業すぐ城に仕えてしまって、追いかけられなくなってしまったのだけど」


 初耳だわ。


 お母さまから、そんなこと聞いたことがなかった。

 自分の功績なんかは、口にしない人だった。

 いつも人のことばかり褒めるような人だった。


 それになに? 城に? お母さまが?


 神器だというクリアリ。

 それを所持していたお母さま。

 神器は大抵城で保管されるもの。


 点が線になる。


 繋がっただけだけれど。


「キリカが、街に来たときは店に寄ってほしいって言っていたわよ。行けてないのでしょう、学園に」

「えぇ、このあと行くつもりでした。彼女に、元気をもらうために」

「いいわね、お友だちって」


 はい。

 彼女は、最期の時までいい友人でした。

 キリカの店に発注したいものもあるし、キリカにも利益を分配したいもの。


「それでは、よろしくお願いします」

 頭を下げて、ダリア服飾店をあとにする。

 次に来たとき、「アメリア会」の話をもっと聞きたいな。


 楽しみがひとつ、見つかった。 



前話は短いけど重要で、今回は……大事なことが出てきましたね。

私は作品ごとにネタ帳を持ち歩き、日々更新しているのですがこの「めがてん」はだいぶネタ帳が厚くなっています。

ふっふっふ( ̄ー ̄)ニヤリ

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