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第96話「とある親子の大罪」

「で、どうなっているの? クミン」

 水煙草を優雅に燻らせ、お母さまが問う。

 コポコポとした水の音と、甘い香り。

 クミンはお母さまとのこの時間が大好き。


「どうって?」

 私もひとくち。

 美味しいとは思わないけど、なんかいい。

 ルー興行団(みんな)も吸っていたから、今更この地では成人していないと禁忌だと言われてもやめられない。

 だってこれが私たちの当たり前だもの。

「あの城仕えの男。ユハ…ユナスだったかしら?」

「ユ・ハ・スさまよっ。もうっ、いい加減覚えてよ、私の夫になる人なんだから」

 

 お母さまは、自分の男しか名前を覚えない節がある。

 ユハスさまの前で間違えたことはないけど、心配だわ。


「夫だなんて気が早いわよ。まだあの娘に気持ちを残しているのでしょう?」

 お母さまは、嫌なことを口にする。

 私だってわかってる。

 勉強のできない私より、あの女のほうがユハスさまには似合ってる。

 私はただ爵位があるだけ。

 だけど、それだってお母さまがお義父さまと結婚できたから得たもので、順番は義姉のほうが上。

 この家を継ぐのは、なにも策を講じなければ姉になってしまう。

 離れに追い出したのに、ぜんぜんこたえているどころか城に仕えて出ていってしまった。

 嫌味をいって当たることもできなくなってしまった。

 偶然城で会ったときは、いままでの鬱憤をぶつけることができたけど、あのときだってユハスさまはあっちを庇うような言動をとった。

 それも腹立たしい。

 あの女のどこに魅力が?

 胸だって、板みたいだし、肌だって栄養絶ったら荒れ気味で生白い病んだみたいな女だったのに、城でいいものを食べているんだわ。

 ふくふくと頬に肉がついて、肌艶も良かった。

 あれを見たとき、カーーーッと頭に血が上っていくのを感じたわ。

 早く「貴族」という枷の作法を纏って、学びをある程度は身にして、ユハスさまに選ばれたい。

 あの端正な顔、優しい声、なにより次の王になる人の側近という地位。

 もうあの不安定な日々に戻りたくないもの、お母さまみたいに…ううん、お母さま以上の地位で優雅に暮らすの。


 お母さまみたいに――――――――そうよ!!


「お母さま!!」

「な、なに!? どうしたの? いきなりそんな大きな声出して」

 私の突然の叫びは、お母さまを驚かせてしまった。

「ごめんなさい。でも、でも、ちょっと力を貸してほしいこと思いついたのっ」

 そうよ、私もお母さまみたいにすればいいんだわ。



「昔、お義父さまに使ったあの薬、まだ残ってるわよね?」

 


いつもの半分。遅れた上に。

だってGWあったじゃん? てのはいいわけです、ごめんなさい。

どうしてもここらへんで入れたかった、とある親子の話でした。

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