第92話 底なしの欲望
「もう、すごく嫌だったのよ。噂になっているなんて、恥ずかしくて穴を掘って隠れたかったんだから」
また、用意した分をぺろりと平らげた女神さまのおかわり所望に、私は首を振る。
あのクミンの私を責めるニタリ顔、思い出しては腹が立ってしかたない。
今日だって、噂のこと思ったら頼みづらかったって言うのに。
『もう、これが楽しみで出てくるのに』
ポロリと、本音を口に出してしまっている女神さま。
お母さまの子供の私を心配して、って思っていた自信が揺らぐわ。
「とにかくクリアリ、お菓子や軽食を度々注文に行くのは少し控えたいわ」
『えぇーーーーっ』
不満を口にするけれど、これ以上噂になりたくない。
「2日後にお休みをもらえることになったの。街へ出て、ダリア服飾店に納品して来るからその帰りにお土産買ってくるわ」
最近、ちゃんと寒い。
ミンキーの毛皮で作った防寒着兼可愛い肩掛けは貴族に飛ぶように売れ、追加注文が来ていたのだけれど、どうせなら新しいデザインも持ち込んで一度買った人ももう何着か欲しいと思わせたい。
思っていた以上に、貴族が値を吊り上げてくれている。
だけど、早く庶民用のものも量産しないと間に合わなくなる。
納品ついでに、他の店と連携が取れないか相談したい。
とにかく庶民のは、量が必要だ。
モアディさまたちが動いてくれたおかげで、山が全部なくなったわけではないけれど、溶岩は森に流れ込んで木々を焼いた。
防風林の役目もあった森だったのだろう、なくなってからは街に強い風が吹く日が増えた。
体感温度が下がって、まだ秋なのに上着が手放せない。
城は城壁と魔法炭があるから少しは過ごしやすいけれど、ちょっとでも外に出れば髪は乱れてすぐ鳥肌が立ってしまう。
鳥肌と言えば、いま私の肩に止まっている夜鳴鳥のユーはこの寒さにふくふくと一回り大きくなっていてとても温かい。
『ちょっと! ユーこっちに寄越しなさいよ』
頬を寄せて、そのふくふくを楽しんでいたらクリアリにとられてしまった。
ユーは呼ばれてクリアリの隣に降り立つと、ぴとっとくっつく。
なんて賢く可愛い鳥なのだろう。
それに反して、ちょっとたくましい腕とおみ足がちらちら見える女神さまはどうだろう。
「クリアリ寒そうね。あなたの服もダリア服飾店に依頼する?」
白い衣は優雅に見えるけれど、薄手でひらひらとしていて見ている方も寒い。
『そうね、そうして。白いスワーナの羽で歩くたびにふわふわとするのがいいわ』
「スワーナですって!?」
スワーナは北部より来鳥する貴重な水鳥で、美しい羽を持つことで有名。
常にそこにいるわけではないから、値がはる材料なのよ!!
『なによ。私の服の使用量なんてたかが知れているじゃない。ついでに、フォグを細くよって織らせて衣を作らせるのもいいわね』
「…………」
底なしの欲求。
審判の女神ではなく、渇望の女神とかに名乗りを変えたらいいと思うわ。
『そんなことより、この子、文を持たされているわよ』
「え?」
頬ずりしているときに、気づけなかった小さな鞄。
ユーの身体に斜めがけで持っているときは、そこになにか入っているということ。
クリアリがゴソゴソとその鞄から小さく折りたたまれた紙を取り出す。
こんなとき人間よりも、鳥と同じ大きさのクリアリのほうが便利よね。
逆に、この小さな鞄に合わせて紙を小さく畳んで詰めているご主人様の姿を思い浮かべると、ちょっと面白い。
『あら。イリという男からのお茶のお誘いよ』
「は?」
遅れましてこんにちは。
目指せ週一更新!
めざします……メザシは苦手です、ししゃもは好きです。
好きといえば、最近シュークリーム欲が上がって困ります。
カスタードってなんであんなに美味しいの? 吸います。
短くても定期更新がいいんだろうか、それとも更新伸ばしても書き溜めるべきか。
お悩みであります。




