とんでもない当たりを引いてしまった
「ふんっ」
「ぎゃあああ!」
目にしたプレイヤーを片っ端から倒しつつ、オレは湖のほとりまでやって来ていた。
森の中を道なりに歩いていただけなのだが、こういう綺麗なところにたどり着くとは予想外だった。
少し休憩していきたいところだが、あいにくそんな時間は無い。非常に残念である。
「……ん?」
ふと、湖の中に一瞬きらりと光る何かに気がついた。
傍まで近づいて水面を覗き込んでみると、そこには宝箱がひとつ沈んでいるのが見えた。
間違いない、例のお役立ちボックスだ。
オレは両手を突っ込んでその宝箱を拾い上げた。
「さて、中身はいったいなんじゃろな、っと……」
武器や防具などは使えるプレイヤーを選ぶ為、そのようなものは入っていない。
出てくるのは、誰にでも恩恵に与れるステータスアップ系か汎用スキルのどちらかのみだ。正直、何が出ても嬉しい。
オレは期待を膨らませ、ワクワクしながら宝箱を開けた。
『ステータス〈VIT値2倍〉の効果を獲得しました』
「……は?」
手に入れた効果に、オレは唖然とした。
「まさかのVIT2倍を引き当ててしまうとは……」
これは素直に嬉しい効果だ。
体力と防御力が上がるという事は、それ即ちやられにくくなったという事でもある。
AGIも格段に上がってるし、強敵と出会ったとしても逃げ切れる可能性がぐんと強まった。
まさに、オレにとっての救世主だ。
「よしよし。これでひとまず安心出来るな……」
オレはすっくと立ち上がり、その場を後にした。
「うっへ……」
森を抜けると、何故か砂漠に出た。
オレ、砂漠は嫌いなんだよな……。
砂が口に入るとジャリジャリして嫌だし、足を取られて進みづらい。オマケに砂漠地帯ではAGIに僅かなマイナス補正までついている始末……。
でも、こういうところにも誰かしらいそうな雰囲気はあるので、一応進んでみる事にした。
「うーん、風景が変わらん……」
歩けど歩けど砂丘ばっかりで、オアシスすらも見つからない。
本当にプレイヤーがいるのか若干不安になってきた……。
「ほう? こんなところにもプレイヤーがいるとはな……」
「……?」
目の前に、ひとりのプレイヤーが現れた。
見た目は剣客風の出で立ち、得物は刀の侍系少女なプレイヤーだ。
やっぱりこのゲームにもいるんだな、侍好きなプレイヤーって……。
「ここで私に出会ったのが不運だったな。メイドのコスプレをしているようなエンジョイ勢だとしても、容赦はしないっ!」
「エンジョイ勢って……おわっ!」
いきなり侍が斬りかかって来たので、慌てて左手の大バサミで防御した。
危ない、今のスピードはあまり見えていなかった。ほぼほぼ反射神経だけで防いだようなものだ。
「む、これを防ぐか。どうやらそれなりの実力者のようだな」
「そりゃあどうも……!」
オレは左手を大きく振って、侍と距離を離した。
「風の型第二式、咬刃!」
「うぇっ!」
侍は居合の型から勢いよく抜刀したかと思えば、そこから肉眼でも見えるほどの風の刃を放ってきた。
しかもその刃はとても速く、飛んで回避は間に合いそうも無かった。
「くぅ……っ!」
オレは大バサミの攻撃スキルで風の刃を挟み、攻撃を相殺した。
「まだまだっ!」
「!」
「風の型第一式、三連風刃!」
侍は至近距離まで一瞬で詰め寄り、刀の攻撃スキルを繰り出してきた。が……。
「は……?」
その刀は、オレの首に当たっても斬れる事は無く、ギチギチと弾かれていた。
「何故、私の刃が通らない……?!」
「ごめん、オレにその程度の武器は効かないんだ……」
「ぐ……っ!」
オレは大バサミを繰り出した。侍は避けようとしたが、距離が近すぎたせいで間に合わず、大バサミはギッチリと侍の細い胴体に食らいついた。
「これで、終わりだな」
「……はぁ、実力を読み誤ったな……」
オレはそのまま胴体を引きちぎり、侍プレイヤーを消滅させた。
正直、めっちゃ強かった。
オレのVITが高過ぎて相手の攻撃が全く通らなかっただけで、PS自体は負けていた。首に一撃もらったのがその証拠だ。
それでも勝てたのは、オレのVIT全振りの防御力による初見殺しによるもの。そして、この大バサミのおかげだ。
防御貫通攻撃じゃなくてホントに良かった……。




