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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第61話

 ダンがゆっくりと広場に近づいていくと閉じられていた魔人の両目がカッと開いてダンを睨みつけてくる。ダンも同じ様に魔人を睨みつけながら門の前にあるちょっとした広場に足を踏み入れた瞬間に立っていた魔人が両手に持っている斧を振り上げて襲い掛かってきた。


 今までの経験から魔人の攻撃のタイミングを予想していたダン。魔人が襲い掛かってくるとぎりぎりで体を左に動かして交わし、交わし側に右手に持っている片手剣を横に払うが相手はその動きを予測していたのか自分の体を左に寄せながら斧の柄の部分でダンの剣を止める。


 一瞬近づいたかと思うとお互いに飛んで離れる魔人とダン。門番の魔人の動き、斧を振るスピード、要塞にいた魔人の首領クラスだ。


「こりゃ楽しめそうだ」


 自分の攻撃が当たらなかったことよりも強い相手と真剣勝負ができる喜びの方が強いダン。しばらく睨み合っていたダンと魔人は再びお互いに近づくと両手に持っている剣と斧で激しく攻撃しあう。

 

 魔人の大きな斧を交わしては片手剣を繰り出すダン。それをまたもう1本の斧で交わしたかと思うとそのまま手首を返して斧でダンの体を狙ってくる。


 魔人領での魔人のボスとの模擬戦ではなく本気武器を持っての戦闘。一瞬も気が抜けない戦い。洞窟の地下の奥深くで人間と魔人とのレベルの高い戦いが続いていた。この戦闘を見ている者がいたとしたら驚愕で声もでないだろう。魔人とダンとの戦闘はお互いの武器が目にも止まらぬ程の速さで繰り出され、身体の動きも常人の目には見えない程だ。斧と剣がぶつかる音だけが地下深くの広場に響いている。


 何度も剣と斧がぶつかるがダンも魔人もお互いに相手の体に傷をつけることができない。既に戦闘が始まってから15分以上が過ぎていた。


 相変わらず激しいぶつかり合いをしているダンと魔人。どちらもまだ相手にかすり傷すら与えていない。そしてお互いにまだ息が荒れていない。

 

 何度目かのぶつかり合いで剣と斧が当たった時、魔人が右足でダンの腹を蹴り上げた。強い蹴りをまともに腹に食らって背後の壁まで飛ばされるダン。すぐに起き上がって壁際から離れた直後、ついさっきまでダンがいた壁の前に魔人の斧が振り下ろされる。


「確かにな、これは模擬戦じゃない。なんでもありって訳だ。そうこなくっちゃな。ふふ、面白いじゃないか」


 お互いに距離をとって睨み合いながらダンが呟く。

 そうだこれは真剣勝負の殺し合いだ。ルールに則った模擬戦じゃない。


 再び両者が突っ込んでいき剣と斧がぶつかって背後に飛んだ瞬間ダンは精霊魔法を魔人の顔を狙って撃つ。片手でそれを避けようとして左手を自分の顔に持っていった瞬間に再び魔人に飛び込んでいったダンが剣を払ってガラ空きの魔人の左の脇腹を切り裂いた。


 ざっくりと脇腹を切られて声にならない叫び声をあげる魔人。ここぞとばかりにダンが魔人に連続攻撃を仕掛けていく。一気呵成に攻め立てるダンに対して魔人は攻めるよりもダンの剣を受けるのに必死になっていく。ここに来てようやく形勢が動いた。


 ダンはこの機を逃さないとばかりに両手に持っている剣をものすごい速さで振りながら魔人に遅いかかっていく。ダメージを与えるたびに体力が回復するダンの動きは戦闘当初と変わらずに早く、そして鋭い。


 そうしてついにダンの片手剣が魔人の右手首を切り落とした。斧を持ったままの右手首から先が広場の奥の方に飛んでいった。


「!!!!!!」


 再び声にならない叫び声を上げた魔人、左手1本になるともうダンのターンだ。

 魔人は必死で左手に持っている斧でダンの二刀流を受けようとするがダンの剣が振られる度に魔人の身体に傷がついていく。


 とうとう我慢できなくなった魔人が地面に膝を着いた瞬間、ダンの片手剣が横に払われると魔人の首が綺麗に跳ね飛ばされる。


 魔人の巨体が倒れ、顔が広場の奥に飛んでしばらくすると顔も胴体も光の粒になって消えていった。それをじっと見ていたダンは光の粒が消えてからようやく両手に持っていた片手剣を鞘に戻す。


「こいつも強かった。対峙すると魔人の首領クラスだった。武器だけの殺し合いならまだ決着がついていなかっただろう。それにしても真剣勝負が一番の鍛錬になるな」


 満足気な表情でそう言ったダン。流石に気を抜けない真剣勝負の後は無尽蔵に体力があるダンでも荒い息を吐いている。肉体的というよりも緊張し続けた戦闘で精神的にぐったりする。


 ダンはその場で腰を下ろしてしばらく休んで回復してから扉に近づいた。頑丈な扉には中央に2つの凹みがある。アイテムボックスからガラス球を取り出してそれぞれの凹みにはめるとギギギと音がして頑丈な扉がゆっくりと左右に開いていった。


 扉の中に入るとそこは円形になった大きな部屋だった。そしてダンの予想通り、以前に見たことがある光景が部屋にあった。


 円形の部屋の中央には大きな丸い穴がありその穴の中では黒い渦が激しく渦巻いているのが目に入ってきた。


 ダンは部屋に入るとその渦に近づいていく。その場に立って足元の黒い渦を見ているとあの時と同じ声が脳内に聞こえてきた。


『…ここにやって来た強き者たちよ。もっと強くなりたければ飛び込むが良い。この星の他の大陸で強くなりたければここに飛び込むが良い』


 以前と同じ声、同じ言葉だ


「やっとここに来たぞ」


その声を聞きながらダンは両手を上に突き上げていた。

しばらく渦の縁に立って下を見ていたダン。


「さぁ帰ろう。デイブ、また来るよ」


 そう叫ぶと大きくジャンプをして渦の中に飛び込んでいった。



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