第58話
ゆっくりと進んで滝の裏側に回り込んだダン。滝の裏の抉れた部分に立つとまずは滝の裏側をじっと見る。そうしてしばらくしてから顔を反対側、洞窟の入り口に向けた。
入り口からは奥がどうなっているのかは暗くて見えない。
奥を見ていたのはわずかな時間だった。ダンは無造作に洞窟の中に入っていった。
外から見た時は暗かった洞窟だが中に入るとぼんやりと明かりがある。光苔が壁に生えていてほのかな光を放っていた。
滝の裏から伸びている洞窟はすぐに右にカーブしており、右に回って10メートルも歩くと下に降りる階段が見えた。
「ダンジョンか?」
独り言を呟いたダンは両手に片手剣を持って階段を降りていった。10段程の階段を降りるとそこはダンジョンと同じ様な作りになっていた。洞窟が奥に続いており先には分岐している通路が見える。そして何よりもここがダンジョンだという思いを確信したのは
Aクラスの魔獣の気配が漂っているからだ。壁に生えている光苔が通路がぼんやりと照らしている
ダンはニヤリとすると通路を歩きだした。急ぐ旅でもないし何よりもダンジョンに潜って強い敵と対峙するのを楽しみにしているダン。通路の先からAクラスの魔獣が複数体固まって襲いかかってくるのを片手剣で倒しながら虱潰しにフロアを探索していく。
何体かAクラスを倒していてダンは気がついた。ここのダンジョンの魔獣達はAクラスでも言葉を話さない。唸り声を上げながら襲ってくるだけだ。モスト大陸でのダンジョンと同じだと思うと同時にこの洞窟こそが黒い渦に繋がっているルートではないかと考えたダン。
Aクラスが闊歩する洞窟を隅々まで歩いて中を調べていき、下に降りる階段を見つける。階段を降りると今度はSクラスの気配がそこには漂っていた。
「なるほど。ただSクラスじゃ俺は倒せないぞ」
地下2層も1層と同じく洞窟の造りになっている。階段を降りると寄ってくるSクラスを片っ端から倒しながら上の層と同じ様にフロアを隅々まで歩いて探索していくダン。ひょっとしたら宝箱かあるいは何かのトリガーになるものが落ちているかも知れないと時間をかけてフロアを攻略していく。
Sクラスの魔獣は時に1体、時には複数体が固まってダンに襲いかかってくるが襲いかかって来た次の瞬間には首を刎ねられ床に倒れ込んでいく。そうしてしばらくすると光の粒になって消えていった。
「やっぱりここはダンジョンだな。ただ普通のダンジョンじゃない」
3体のSランクの魔獣を倒して3層に降りる階段を見つけたダン。ここには階段にフロアの攻略を記録する石盤がない。
3層に降りていく階段は真っ直ぐではなくて湾曲していた。長めのその階段を降りたダンは目の前の景色をじっと見る。そこは洞窟ではなくモスト大陸の様な荒野になっていた。広くて奥が見えない荒野。そしてだだっ広くてそこに大きな岩や葉がない枝だけの木が散発的に生えているのが見える。
漂っている魔獣の気配はSSクラスだ。
階段に腰を下ろすと水分を補給する。洞窟に入ってから半日程か。目の前に見えている荒野のフロアは時間の概念がなさそうで夕刻近い時間の様な明るさになっていた。そして視界の先ではSSクラスの魔獣が荒野を歩いている。
ずっと明るいままのフロアを見ていたダンは階段で休憩することにした。休める時にしっかりと休む。冒険者の基本動作を忘れないダン。ここがただのダンジョンであろうが渦につながる道であろうが焦らずに行動するのが生き残る術の1つだ。
数時間仮眠をしたダンは立ち上がると荒野に足を踏み出した。周囲を見て宝箱か横穴の様な部屋がないかを探しながら進んでいく。
ダンを見つけたSSクラスの獣人が大剣を構え唸り声を上げながら襲ってきた。すれ違い様に腹を切り付けて絶命させると地面に倒れた獣人が光の粒になって消えていった。
ダンは次々とSSクラスを倒しながら荒野を探索していく。最短距離を進まずに左右に移動しながら進んでいると、SSクラスの獣人が4体固まっているのが見えてきた。そしてその固まっている彼らの中に宝箱が見える。
ニヤリとしたダンは無造作にそこに近づいていく。ダンに気がついた4体の獣人がダンに体を向けるとそのうちの1体が杖を前に突き出した。その時には既にダンはいた場所から離れた場所に立っていた。縮地というシューズについている効果を使って瞬時に場所を移動する。この縮地は20メートル程移動できるが移動後にわずかに硬直が発生するので使うタイミングを考える必要があるがSS程度の動きなら硬直があっても何ら問題がないと経験からわかっていたダン。
ダンが元いた場所に魔法が着弾した時には既にダンは4体の近くまで近づいていてそのまま両手に持っていた剣であっという間にSSクラス4体の首を刎ねた。
宝箱からは魔獣の気配はしない。ダンが宝箱を開けるとそこには丸いガラスの様な淡い紫色をした透明な球が1つ入っていた。それを手にとると再び荒野を進み始める。
その後もSSクラスとの戦闘は続いたが何なく彼らを倒して探索しながら荒野を進み、フロアに降りてから5、6時間経った頃に下に降りる階段を見つける。
螺旋状になっている階段を降りるとそこは一面草原だった。シグナギ大陸の草原を再現しているかの様な綺麗な緑の絨毯、そして森が先に見えている。漂ってくる魔獣の気配はランクがさらに上がってSSSクラスのそれだった。
「今の荒野がモスト大陸、そしてここはシグナギ大陸か。どうやら当たりのルートを見つけたっぽいな」
階段の途中で腰を下ろして前を見ているダン。ここがSSSクラスであるのならこの下の層にはボス部屋かあるいは門番が詰めているんだろうと予測する。
「一眠りしておくか」
階段の壁にもたれるとその場で目を閉じたダン。




