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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第57話 西の山脈

 ダンは要塞を出るとそのまま大河に沿って上流を目指して歩いていく。ランクCになって始まりのダンジョンにデイブと潜った前にソロで活動して以来のソロだ。彼は歩きながら今までの自分を振り返っていた。


 病弱でずっと病院のベッドの上の生活を送ってきたダンが死んでから白い部屋で老人と話をして生まれ変わってこの世界に降り立ってからは自らを厳しく鍛え、鍛錬をして強くなってきた。


 最初は自分の身体を自由に動かせる事が楽しかったがその内に動かすだけじゃなくて強くなりたい、そう思って鍛錬を始めたダン。その内にデイブと知り合い、武器屋のワッツや防具屋のレミー、雑貨屋のミンらと知り合い、オウルのウィーナという鑑定のプロとも知り合った。他にも商人のサムや大勢の冒険者仲間やいろんな人と知り合い、人間としても成長できたと思っている。


 そう、自分は周囲の人たちに恵まれて強くなってきたんだ。この強さはいずれ何らかの形で皆に還元しなければならない。ダンは正面に聳え立っている高い山々に向かって歩きながら気持ちを新たにしていた。



 大河のこちら側、人間領内の平地にはほとんど魔獣がいない。河原で野営をし、森の中で野営をしながら川の上流を目指して歩いていくダン。時折立ち止まっては周囲の景色を目に刻んでそして再び歩いていく。


 ノワール・ルージュが燃やした獣人達の拠点の脇を通りさらに西を目指して歩いていくと大河の要塞を出てから1ヶ月とちょっとが過ぎた頃西の山々が聳え立っているその山裾にたどり着いた。連なっている山の谷間を通って奥に進んでいけそうだとみるとその日は山裾で野営をする。


 大きな木の根元に腰を下ろして暖かいスープを飲み、果実を口にするダン。アイテムボックスがあるおかげで干し肉ばかりじゃなく食事にもバリエーションがある。食事を終えたダンはそのまま木の幹に上半身を預けて目を閉じた。


 翌朝から山の攻略が始まった。と言っても谷間の川沿いを奥に進んでいくだけだ。たまに出会うのはBクラスの魔獣で全く相手にもならない。ダンは川沿いを上流に向かって歩きながら時折河原の石を積み上げたり木を土の上に刺したりと目印にをいくつか作っていく。

 

 風やあるいは川の氾濫で流されるかもしれないということはもちろんダンも自覚しているが、自分が歩いている道を残しておくことが後から来るかもしれない仲間の手助けになればと考えていた。無くなってもいい、気が付かなくてもいい。そんな軽い気持ちで目印を作りながら進んでいった。


 山の奥に入っていってもたまに出会う魔獣は依然としてBクラスばかりだ。高ランクがいない理由がわからないままに野営を繰り返しては奥に進み、山あいを抜けて歩いていく。奥に進むにつれ川幅は徐々に狭くなっていき、流れも速くなっていく。山の中に入ると岩場や崖が多くなり川沿いに進むことが難しくなってきた。ダンは川から少し離れた山の中を歩いて奥を目指していくことにする。右手からは常に水音が聞こえてくるのでそれを目印にして山の中を進むダン。川から離れて山の中に入るとたまにAクラスの魔獣と出会う。それらを倒しながら奥に進んでいく。


 野営をしながら山の中を進んだ10日後の昼過ぎ、前方から水音が聞こえてきた。ダンは森の中を進んで開けた場所にでるとその目の前に滝が現れた。見上げると50メートル程の高さから幅10メートルほどの滝が落ちている。そして視線を下に向けるとそこには滝壺がありそれは深緑の底が見えないほどの池になっていた。滝壺に落ちる水音が聞こえ飛沫が立ち上っているのが見える。滝壺の東側から川が流れていた。


「綺麗だ」


 その場で立ち止まって思わず声を出すダン。前の大陸、モスト大陸では滝なんて見た事がない。昔の本の知識で滝を知っていたダンは実際の滝を目の当たりにして感激する。

 

 もっと近くで見てみようとダンは足場のよくない中をゆっくりと下に降りていく。幸いにして魔獣の気配がない。一応周囲には警戒しながらも岩場を伝ってなんとか滝壺の脇まで降りてきたダンはそこから見上げるとと白く泡立っている滝の水が絶え間なく落下しているのが見えた。決して激しい勢いではないが滝が落ちる音が周囲に響いている。


 幻想的な風景をしばらく見ていたダン。ふと滝の裏側はどうなっているんだろうと思い滝壺の周囲を見ると向こう側、魔人領側には滝壺の周囲の崖にいくつか突き出ている岩があるのが見えた。あれを伝っていけば滝の裏側に行けそうだ。


 ダンは一旦下流側に歩いて向こう側に渡れそうな場所を見つけると、


「魔人領内に入ってしまうが許してもらおう」


 そう言って川の中にある石を踏みながら向こう側、魔人領側に渡ると川沿いを再び西に進みだした。そうして滝壺までたどり着いたダン。日は大きく西に傾いており夕日が滝に当たってオレンジがかった色になっている。


 周囲には警戒すべき魔獣の気配もない。川の水を手に取ると綺麗な透明な水だ。それを飲んで水分を補給し、滝壺の近くで野営の準備をする。


 その夜は滝の音をBGMにして疲れを取ったダン。翌朝起きるとアイテムボックスから取り出した朝食を食べ、水分を取ると滝壺に沿ってぐるっと回り込む様に滝に近づいていった。


 足場の悪いところを慎重に進みながら滝に近づいていったダン。滝の裏が見える場所まで近づくと彼の表情が変わり、滝の裏の一点に視線が注がれる。


 滝の裏側は滝壺の水面の近くから高さ3メートル程にわたって崖が奥に抉れており、その奥には洞窟の様な入り口穴が見えていた。



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