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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第37話


 翌朝ケープ要塞を出た一行は獣人に占拠されている要塞を取り戻すべく北に向かって進み出した。途中でBクラスが単体、せいぜい2体程度で出現するとボルケーノやホワイトタイガーが危なげなく討伐していった。


 途中で野営を繰り返して北上していった5日後の夕刻、目の前に森が見えてきた。地図を見ていたプリンスが先頭を歩いているノワール・ルージュに近づいてきた。


「この森を抜けると要塞だ。どうする?」


「この森で野営をして翌朝一番で俺とダンで要塞に向かう」


 聞かれたデイブが答えた。一行は森の中で野営の準備をする。食事を終えたタイミングで再びプリンスが聞いてきた。


「この前の話だと要塞は1日で落ちないかも知れないって言ってだろう?その場合はどうするんだ?」


「草原の真ん中で野営をするよ。火を焚いてね」


 デイブが笑いながら言い、


「弓や魔法が届かないところで野営をしたら奴らは馬鹿にされたと思うだろう。それで門を開けて出てきたらそいつらをぶちのめすだけだし、出てこなかったら俺とダンが交代で休んで夜を過ごすよ」


「すごい発想をするんだな」


「ここに戻れば仲間がいるかもと思われる。あくまで2人で乗り込んできたというのが大事なんだよ。2人なら相手も油断するしな」


 デイブの後にダンが言った。


 こいつらはただ強いだけじゃない。敵の動きを読む心理戦にも長けている。こいつらの言う通りだろう。目の前の草原で火を焚かれたら頭に来て殺してやろうと門を開けて出てくるかもしれない。そうなったら一網打尽にしてそのまま要塞に入っちまうこともできる。出てこなければ翌朝再び攻撃すればいいだけだ。


 聞いていたプリンスやジョン、マリアンヌらのAクラスのメンバーはその大胆な作戦を聞いて感心していた。


 強くなると逃げたり隠れたりしながら戦うという発想じゃなく自分達のフィールドに敵を呼び込んで討伐するという考え方になるのかとマリアンヌは聞いて思っていた。



 翌朝朝食を食べ終えると立ち上がるダンとデイブ。


「じゃあ打ち合わせ通りによろしく」


 デイブがそう言って立ち上がると隣に座っていたダンも立ち上がった。今度は2人が先に歩いて少し間を開けて冒険者達が後に続いていく。100名ほどの冒険者はおっかなびっくりの格好で歩いていくが前を歩く2人はまるで散歩でもしている様だ。


 草原を歩いて起伏のある丘の手前に来るとダンとデイブはその場にしゃがみ込んで頭だけ上に出して要塞を見る。


 要塞はラエや他の要塞よりも一回り大きくてダンとデイブがいる南側を向いている門が見えている。


「あの感じだと東西にも門はあるな」


「ああ。間違いなくある」


「上の見張りは雑魚だな」


 要塞の城壁の上を獣人が歩いているが遠目に見ても大した奴らじゃないのが見えてとれた。


「ありゃ見張りにもなってない。ただ塀の上を歩いてるだけだ」


 丘の上に頭だけ出しているデイブが言うと横で同じ様に頭を出しているダンも


「人間を舐めきってるな。戦闘準備もしてないだろう」


 そう言うと2人立ち上がって丘を降りて要塞に歩いていく。しばらくして100名程の冒険者が丘の上に着くと数名だけ頭を出して要塞を見た。


「堅牢な作りに見えるがノワール・ルージュの2人はまるで散歩している様に歩いて近づいていっている」


 プリンスが話している間に要塞の門を見たマリアンヌが事前に分けた3つのパーティを西、中央、東に分散させた。西の門はホワイトタイガー、東の門はアクス。そして中央の門をボルケーノが担当する。Aクラスの下につくBクラスの冒険者が3つに分かれてそれぞれのリーダーの下、東西に移動していった。


 彼らが3つに分かれてそれぞれの場所についた頃要塞に向かっていた2人の前、南にある中央の門が開いてそこから30体程の獣人が出てきた。こちらが2人だと見て舐め切っているのが丸わかりだ。門を出たところで突っ立って睨みつけているだけだ。


 ダンとデイブは横に並んで歩く速度を落とさずに要塞に近づいていく。敵の集団と10メートルほどの距離になったところで突然2人が抜刀してダッシュすると集団に突っ込んでいった。


 あっという間に30体の獣人の首が跳ね飛ばされる。


 慌てて要塞からまた30体ほどの獣人が飛び出してきた。今度は剣や棍棒を持って振り上げて唸り声を上げて襲ってくるがそれもまた2人が両手に持った剣を振るうとその場で頭と胴体が綺麗に分かれて30体の死体が地面に転がる。


「圧倒的な強さだ」


「ああ。獣人が自分から倒れている様にしか見えない」


 丘の上から要塞を見ているボルケーノのジャンとアクスが目の前で行われている戦闘を見ながら言葉を交わす。


 2人の剣筋が全く見えない。身体もほとんど動いていない様に見えるのに次々と2人の周囲の獣人の首が跳ね飛ばされていった。


 60体近い獣人を倒したころ門からAクラスの獣人が3体現れ、その背後に20体ほどの獣人が続いて出てきた。獣人の死体の中で立っている2人に近づいてくると、


「なかなかやるじゃないか、お前ら」


 言葉を話ながら近づいてくる獣人。ダンとデイブが黙っていると再び口を開き、


「ここで終わりだ」


「お前がな」


 獣人の言葉にデイブが言い返したと次の瞬間にデイブが一歩前に踏み出したかと思うと彼の剣が横に振られAクラスの獣人の首が跳ね飛ぶ。それと同時にダンが集団の中に突っ込んでいったかと思うやあっという間に1人でAクラスを含めた残りの獣人全てを剣で倒しきる。


 すると2人の前で要塞の門が音を立てて閉じられていった。


「引きこもりだぜ」


 デイブが言う。2人で要塞の門の上を見ると弓矢を構えた獣人が現れる。すぐに2人が左手から精霊魔法を撃って顔を出している獣人の顔に強烈な魔法をぶつけて倒していく。


 獣人は弓を撃とうとして顔を出すと即座に魔法が飛んできて次々とやられる仲間を見て顔を出すことができない。


 しまいには要塞の向こうから姿を隠したまま狙いもせずにメチャクチャに弓を打ち出した。


「なんだありゃ? めくら撃ちか」


「あんなのが当たる訳がないだろう」


 あらぬ方向に飛んでいく矢。たまにまぐれでこちらに向かってくる矢は剣を振って矢を切り裂き、弾き飛ばしていく。


 業を煮やして狙いをつけようとするとまた魔法でやられる獣人。


 2人が戦闘を開始してまだ1時間も経っていないが既に100体近い獣人が2人に倒されていた。ダンとデイブは要塞の前の広場に腰を下ろして水分を補給する。



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