第38話
「要塞の門が閉じられたぞ」
「2人で6、70体は倒したか?」
「もうちょっと倒してるかも。それにしてもあの2人。あの場所で水を飲んで休憩してるわよ」
「全くなんて奴らだよ」
丘の上から要塞を見ているAクラスのメンバーが言葉を交わしている。彼らの視線の先には門が閉じられた要塞とその近くに経っているノワール・ルージュの2人の姿が見えた。時折鬱陶しそうに剣を左右に振っているのは要塞から飛んできている矢を弾き飛ばしているからだろう。
「これからどうするかな」
そうして再び顔だけ出して丘の上から要塞を見る冒険者達。
「矢も俺達には当たらないとわかった。さてと次は何をしてくるのか」
たまに飛んでくる矢を弾きながらデイブが言った。
「何でも一緒だろう。ランクSの気配は感じるがそれから上のランクの奴らがいるかどうかだな」
ダンもデイブも要塞の中の気配を探っていて、そこにランクS、こちらで言うSクラスの気配は感じ取っていたが要塞の奥までは流石に気配感知ができない。
要塞の前に座り込んで30分程が過ぎた頃、
「おっ」
デイブが嬉しそうな声を上げた。正面の門が開いて魔人を先頭に獣人が背後に3体、合計で4体の敵が出てきたのだ。魔人はSクラス、他はAクラスだ。ゆっくりと立ち上がる弾とデイブ。
「魔人よ」
丘の上で見ていたジャスミンが言うと皆顔を上げてそちらを見る。
「でかいな」
「ノワール・ルージュがいなきゃここから逃げ出してるところだ」
ブルーとジャンが話をしているのを聞いていたマリアンヌもジャンと同じ気持ちだった。自分達だけであの魔人を見つけたら見つからない様に逃げ帰っていただろう。ただ今はノワール・ルージュが彼らと対峙している。これからどうなるのか目を凝らして前方を見ていた。
「2人で俺達の要塞に乗り込んできて仲間を倒しまくるなんてやるじゃないか、人間共よ」
近づいてくる魔人が2人を睨みつけながら声を出すが聞いている2人は平然としながら黙ってその場に立っている。
「お前がこの要塞で一番強いのか?」
デイブが魔人を見ながら言う。
「何故そんなことを聞く」
「お前が一番じゃないなら失せろ。俺達は一番強い奴を倒しにやってきている。雑魚に用はないんだよ」
顔色一つ変えずにデイブが話をしている。その横でダンは目の前の4体の敵に視線を向けたままだ。
デイブの挑発が効いたのか魔人が最初よりも声を大きくして
「俺達を雑魚だと?たかが人間のくせに口だけは立派じゃないか」
そう言って右手を上に上げると背後にいた3体が魔人と入れ替わって前に出てきた。
「人間のくせに生意気な奴らだ」
「楽に殺しはしないぞ」
「じっくりといたぶってから殺してやる」
3体が次々に言うとダンが前に出て
「じゃあいたぶって貰おうか」
そう言うと更に一歩前に出た。それに呼応する様にAクラスの獣人が1歩前に出てきて
「すぐには殺さない」
言うと片手剣を振り下ろしてきた。ダンはその剣を軽く交わすと右手に持っている片手剣を一閃。獣人の首が綺麗に刎ね飛ばされる。その時にはデイブがもう1体を、ダンが2体目を同じ様に右手の片手剣だけで首を刎ねてあっという間に3体の獣人の身体が地面に倒れる。
2人は更に前に出て魔人に近づくと、
「いたぶってくれるんじゃなかったのか?」
「おのれぇ」
大声を上げた魔人がダンに襲いかかった次の瞬間にはその魔人の胴体と首が綺麗に2つに分かれていた。
ダンとデイブはそのまま空いている門から要塞の中に入っていった。
「行くわよ!」
マリアンヌの声で我に返る丘の上に居た冒険者達。彼らは目の前であっという間に獣人と魔人を倒した2人の戦闘力を唖然として見ていた。ほとんどの冒険者達はプリンスからノワール・ルージュが魔人を赤子の手をひねる様に倒したと聞いてはいたものの実際に目の前で見ると正にその言葉通りで言葉がでない。現実でないものを見ている様な感覚でいたところにマリアンヌの声で正気に戻ったメンバーは背後にいたBクラスの仲間と共に丘の上に姿を現し、そのまま要塞に向かって進み出した。
そしてマリアンヌらの動きを見た東と西に移動していたメンバーも同時に立ち上がるとそれぞれの門に向かって進み始めた。
要塞の中に入った2人は目についた獣人を片っ端から切り倒していっていた。剣で首を刎ね、上から弓を構える獣人には魔法をぶつけてノンストップで次々と倒しながら要塞の中を進んでいく。最初は数の論理で大勢で襲いかかっていた獣人だがあっという間に全滅させれられるというのが続いた今は恐怖に慄いた表情で向かってくる人間に挑んでいっては次々と切られて殺されていた。
「奥にいそうだな」
「ああ、ようやくだ」
獣人を倒して要塞の中を進みながら大声で話をするダンとデイブ。今や2人に対する獣人の攻撃は散発的になっていた。ほとんどの獣人は2人にやられ、一部は要塞から逃げ出していた。ただ逃げ出した獣人もそこに待ち構えていた冒険者達が倒していき要塞から完全に逃げられた獣人は1体もいないという状態だった。
2人が要塞の最上階に着くとそこには2体の魔人が2人を待ち受けていた。そしてその奥に更にこの2人より強い気配を感じるダンとデイブ。ダンとデイブは前にいる2人よりも奥の魔人に注意を払っていたが、
「人間を舐めていた様だな」
「ああ、人間の中にもそこそこ強い奴らがいるとはな」
自分達が無視されているとは思っていない魔人2人がノワール・ルージュの2人を見ながら話をしている。ダンとデイブはお互いに顔を見合わせて頷くと無造作に歩きだした。それを自分達への攻撃とかと受け取った2体の魔人は笑いながら
「自分から死にに来ると…」
「バカな奴ら…」
2人画途中まで言ったところで同時に首を刎ねられる。ダンとデイブは歩みを止めずに奥に進むと奥の部屋に1体の魔人が片手剣を持って待っていた。それと対峙すると
「う〜ん、微妙だ」
とデイブ。
「ランクSSの下くらいか?まぁ初めてS以上だ、我慢しようぜ」
ダンが言うとまぁなとデイブも答える。2人のやりとりを聞いていた魔人が、
「貴様ら2人でここまでやってきたのか?」
「なぁ、お前。お前は魔人の中でどれくらいの強さなんだ?」
魔人の問いを完全に無視してデイブが聞いた。
「貴様ら…」
その声をまた無視して今度はダンが言った。
「魔人ってお前らの様に弱い奴らばかりなのか?強いのはどこにいる?北の獣人領に行ったらお前よりも強いのがゴロゴロいてくれるのか?」
怒りで魔人の身体が震えているがノワール・ルージュの2人は気にもせずに
「教えてくれないのなら体に聞いてみるか」
「死ねぇぇ」
魔人がダンに突っ込んできた。ダンはすれ違い様に片手剣を持っている魔人の右手を肩から綺麗に切り落とす。要塞中に響き渡る様な大声を出してのたうちまわる魔人。
ダンはその魔人に近づくとさっきと同じ質問をする。
「お前の様な弱い奴じゃなくて強い魔人は獣人領にゴロゴロいるのか?」
「お、お前ら…何なんだ?何でここまで強い人間がいるんだ?」
「おいおい、質問に答えてくれよ。でないと今度は左手だ」
最初から全く表情を変えないダンとデイブ。ダンが魔人を見ながら聞くだけで魔人の中に恐怖が湧いてくる。
「ま、魔人領の奥にいけば俺よりも強い仲間が沢山いる」
2人を恐怖の目で見ながら答える魔人。
「なるほど。獣人領じゃなくて魔人領と言うのか。それで奥にはこの要塞みたいのがあるのか?そこにいるのか?」
デイブの言葉に首を何度も上下に激しく動かして頷く魔人。話を聞いたデイブはダンと顔を見合わせて
「ありがとうよ」
デイブがそう言って剣を横に振って魔人の首を綺麗に刎ね飛ばした。




