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ノワール・ルージュ2  新大陸編  作者: 花屋敷


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第20話 北上


 王城を訪ねてから3日後の朝、ノワール・ルージュとホワイトタイガーの2組のパーティ7名は王都を出発して北東にあるモレスビーの街を目指していった。


 途中で出会うB、Cクラスの魔獣を倒しながら進むこと30日弱、目の前にモレスビーの城壁が見えてきた。


「お前さん達に王都に行ってもらって正解だったよ」


 モレスビーのギルドの会議室に入るとそこにいたギルマスのコーエンが開口一番に言った。部屋にはノワール・ルージュの二人の他に王都から一緒に来たホワイトタイガーの5人、それにモレスビー所属のAクラスのボルケーノの5人がいる。王都での出来事はあっという間に国中に広がっていったらしい。人間には倒せないと言われていた魔人を弱いと言って倒したノワール・ルージュの名前も冒険者を中心に王国全土に同時に広まっていた。


「Aクラスになったんだって?お二人なら当然ね。と言うか魔人を2体倒したんでしょ。もうAクラス以上じゃない?」


 ボルケーノのリーダーであるマリアンヌが言った。彼らも王都から流れてきた宰相と国防大臣が殺されて魔人が化けていたという話を聞いてびっくりし、魔人がなりすましているのを見抜いてあっさりと倒したのがダンとデイブのノワール・ルージュだというのを聞いてこちらはさもありなんだと思っていた。


「プリンスも久しぶりね」


とホワイトタイガーのメンバーに挨拶をするマリアンヌら。聞くところによるとホワイトタイガーは以前このモレスビーで活動をしていたことがありボルケーノのメンバーとは皆顔見知りだそうだ。というかこの国のAクラスは少ない、皆知り合いになるという。


 挨拶が終わったところでこれからどうするかという打ち合わせに入る。ダンとデイブが北に進んで国境を川まで上げるつもりだという話をすると、


「ラエの要塞を起点にするつもりか?」


「そうなるな。とりあえずラエをベースにしてそこから周辺にいる獣人を討伐していくつもりだ」


 いつもの様にデイブが答える。ダンは隣で黙って座ってやりとりを聞いていた。デイブの考えはラエを起点としてまずはそこから北の川を目指す。敵を一掃すると別の要塞に移動して同じ様に一掃、最前線の4つの街を廻りながら要塞から北を攻めて国境線をとりあえず川まで戻すという作戦だ。敵の拠点がわからない以上こちらからしらみ潰しに探していくしかないと考えていた。


 話を聞いていたボルケーノのジャンがテーブルの上に紙を広げてそこに簡単な地図を書き出した。ダンとデイブは地図を持っているがこれは機密になっているので二人以外の時には見せない様にしている。もちろん外部にも言っていない。ということでジャンが書き出した地図に視線を落とす。


「ここがモレスビーだ、そして北にラエの要塞がある」


 そう言って話をしていくジャン、モレスビーは王国の北東にありそこから西に向かって4つの街が並んでいてそれぞれ要塞を抱えている。東から順に、


モレスビー   ラエ要塞

リサラ     セグー要塞

パール     ケープ要塞

セロス     コープ要塞


となっている。地図を見ていた二人。デイブが地図を指差して東から西に移動させながらボルケーノとホワイトタイガーのメンバーに説明する。


「この順で廻っていくよ。そしてこのコープ要塞を起点にして討伐した後はそのまま中央部の川沿いを探索して最終的にここに戻ってくる」


「この4つの街から北はほとんど情報がない。どこに獣人の村や街があるかわからないぞ」


 プリンスが言った。


「でも以前人間が住んでいた村はあるんだろう?おそらくそこにはいるはずだ。そして俺達が暴れれば黙ってても向こうから寄ってくるんじゃないか?」


 デイブの説明を聞いてなるほどと頷く周りの冒険者。それまで黙っていたダンが言った。


「この4つの街から北側には今は人間は住んでいないんだよな? となるとそこにある街か村には今は敵しかないことになる。見つけたら片っ端から殲滅していきゃいいだけの話だ」



 モレスビーのギルマスのコーエンが各都市及び王都ギルドに手紙を出してこれからの領土奪回作戦の説明をすると同時に各都市のギルドの協力を仰ぐことになった。


「せっかく村を取り返してもまた獣人に取られない様に取り返した街や村には人間がいた方がいいだろう。軍隊が常駐するまでは冒険者で国境を守る必要がある」


 取り返した街や村にはクエストとして常時数組の冒険者がいる様にし何かあったらすぐに前線4都市の要塞に連絡を取れる様にする。


「ノワール・ルージュががっつりと討伐してくれるだろうから強いのは残っていないだろう。AクラスがいりゃいいがBクラスの冒険者でも対応はできるだろう」


 ギルマスの提案を聞いたホワイトタイガーのプリンスが言った。


「1つ提案があるの」


 マリアンヌが発言を求めた。


「ボルケーノは川の南、失った領土を回復するまでノワール・ルージュと一緒に行動したいの。もちろん戦闘に迷惑はかけないわ。背後でフォローすると理解して」


「その意図は?」


 デイブが聞くと、


「これから回る都市にもギルドがあってAランクはいる。ノワール・ルージュ単独よりも私たちと一緒の方がギルドとのやりとりとかが楽になるでしょ。それと領土を奪還したあとの冒険者の配置についてなどはこちらでやるわ。お二人には戦闘に専念した方が良いと思って」


 マリアンヌの言うことも尤もだ。ダンもデイブも政治的なやりとりは得意じゃない。デイブはまぁダンよりはそういうのが得意だがそれでもここは自分達がいた大陸じゃない。倒したあとのことはこっちの人間に任せた方がうまくいくだろうなとダンが思っているとデイブも同じ考えだったのか。


「なるほど。そうして貰えるとこっちも助かるな。戦闘に専念できるのはありがたい。そうだよな?ダン」


「その通りだ。ボルケーノはこの国でもAランクの冒険者で名前が売れてるだろうしな。俺達は敵を倒すので後はよろしく」


 やりとりを聞いていたギルマスのコーエン。


「マリアンヌはああ言っているがお前たちは問題ないのか?」


 とボルケーノの他のメンバーとホワイトタイガーのメンバーの顔を見ながら聞いた。ボルケーノのナイトをしているジャンが口を開いた。


「俺たちは問題ない。今マリアンヌが提案した件は事前にパーティ内で話をしている。皆了解済みだよ」


 なるほど、なら問題ないだろうと頷き顔をホワイトタイガーに向けるギルマス。


「こっちもそれで問題ない。ボルケーノなら顔も広いし戦闘力もある。うってつけじゃないか?モレスビーは俺達が責任を持って守るよ」


 遠出になるので準備が必要だ。4日後にモレスビーを出発してまずはラエの要塞をベースに周辺の敵を倒していくことになった。


 ダンとデイブは水や食料を大量に買い込んではアイテムボックスに収納していく。そしてホワイトタイガーらはラエの要塞を守るローテーションを組んでいった。ノワール・ルージュが敵を倒すので要塞はBクラスでも十分に対応できるという前提でローテーションを組む。そしてホワイトタイガーは遊軍としてここモレスビーとラエの要塞を行き来することになった。


「このローテーションで不具合があればその都度訂正していこう。最初からベストな形が組めるとは思わない」


 ギルドの会議室にBクラスの冒険者の代表を集めた打ち合わせの中でプリンスが言った。Bクラスの連中にとってもクエスト扱いになるので皆OKしている。しかもノワール・ルージュが要塞の周辺の敵を蹴散らすということになっているので高ランクの魔獣がくる可能性も低いというプリンスの説明がBクラスの連中を安心させていた。



 4日後の朝、モレスビーのギルド近くにある城門の前には冒険者達が集まっていた。Aクラスの2つのパーティとは別に約30名ほどのBクラス、Cクラスの冒険者達がいいる。そこにはギルドマスターのコーエンの姿も見える。コーエンは冒険者達の集団の近くに立っていたノワール・ルージュを見つけると近づいていき、


「頼むぞ」


 短く言った。デイブは集まっている冒険者達に顔を向けたままで、


「あんたや彼らにとっては失った国土を取り返す重要なミッションだと思っていると思うんだが俺とダンにとってはこれは鍛錬だ。強い敵を探して倒して自分達が強くなるためのね」


 ダンはギルマスに顔を向けて言った。


「デイブが言った通りだ。国土を取り返す事は簡単だろう。俺達はその先、大陸中央を流れているという川の向こう側を見据えている。強い敵がいないと鍛錬にならない。この大陸に来た意味がないからな」


 二人の話を聞いてもギルマスはもう驚かなかった。領土を取り返すのは簡単だと言い切る二人。実際にそうだろうと二人の実力を知っているコーエンは納得する。



 準備ができて一行はモレスビーの街を出てラエの要塞に向かう。先頭をノワール・ルージュとボルケーノ、最後尾にホワイトタイガー、間にB,Cクラスの冒険者という固まりで草原を歩いていき、翌日夕刻にラエの要塞に入った。


 B、Cクラスの冒険者達はすぐに荷物を解いて要塞に常駐する準備を始める。彼らがそうしている間にダン達はAクラスの冒険者と打ち合わせをしていた。


「明日から北上する。どうだろう1週間から10日くらいか?」


 ジャンが書いた手書きの地図を見ながらの打ち合わせだ。プリンスが言うと、


「それくらいかしらね。期限を決めているわけじゃないけど。いずれにしてもそれくらいを目処に要塞に戻ってくる感じよ」


 ダンとデイブは土地勘がないので日数についてはこの国の冒険者達に任せている。いずれにしても自分達は目の前にいる敵を倒しまくることが仕事だと認識していた。



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