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第18話 問題

「何事ですかっ!?」


そう言って、国王がいる扉を勢いよく開ける。

しかし、混乱しているエミ先生やユカ先生達とは違い、その場にいた王国関係者らは焦ることなく至って冷静だった。


「落ち着いてください、エミさん、ユカさん」


慌てた様子の2人に国王が落ち着かせようと話しかける。


「わっ、わかってるから!!んで、なな何が起こったの!?さっきの何!?」


「ばっ、ばばば爆発音とかしたんだけど!?」


「だから落ち着いて……まぁ、簡単に説明すると……、リキくんとタカユキくんの決闘中に誤って上級の災害獣を召喚させてしまったんです。それで、先程の現象が……」


「さっ!?災害獣!!?」


「それ大丈夫なの!!?」


そのように言われると、国王は頭を抱えて呆れたようにため息をつく。

すると、カイシ達がその部屋に入ってくるのと同時に、側近のメイドがひとつの大きな水晶を抱えて持ってきた。


「これは、当時の様子を写したものになります」


そう言ってその水晶に手をかざすと、薄く輝きだし、その時の映像が流れだす。

リキとタカユキが拳を合わせたその途端、大きく吹き飛ばされ、その場には巨大な災害獣が現れる。

巨大で人間ではありえないような成り立ち。

そうかと思えばアモンの魔法で簡単に拘束され、ナツミの刀捌きで一瞬で、その巨大な化け物は文字通り粉々になり、宙に飛んで消えてしまった。

そこで、砂嵐が画面を埋めつくし、映像が途切れてしまった。


「す……すごい……」


「いや、カッコよすぎやろ」


「ほんと、勇者様方には呆れたものですよ。ただ拳を合わせただけで?上級魔獣を召喚?フフフ……はァ……」


「こんなこと……あるんですか?」


「まさか。そんなことが日常的に起こっていたら世界はもうとっくに崩壊してますよ」


「あぁ、そういえばこんなことがあったのぅ」


そう、ヴァンが髭を撫でながら言う。

この話に随分と興味を持ったのだろう。

白い髭を生やして杖をついているというのに、ニコニコとしていて若々しく見える。


「大昔の話なんじゃが、大魔王ゲルハイムと(つるぎ)の勇者、ノブナガ・オダ様が戦った時、第3級魔獣が召喚された、という話を聞いたことがあったような気がするのぅ」


「なっ……!?の……ノブナガ……オダ!?」


「そ、それって……あの超有名な……!!?」


「なんじゃぁ?知っておったのですか?エミ殿、ユカ殿?」


「いやいや、知っておったのかって言うか……ねぇ?」


「いや、まぁ、俺たちの世界でも知らない人はいないっていうか」


「有名すぎて……ってか、この世界に来てたってこと?マジ?」


そんなことを話していると、国王が気が抜けたように椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見つめる。


「ふぅ……複数の国が束になってかかるような相手を……なぁ……はぁ……」


「国王様はお疲れのようですね。これからはどうされますか?」


「いや、気にしなくていい。少し……な」


「……何かございましたか?」


「いや……やはり勇者は、私たちとは格が違うのだなと改めて実感させられてしまってな。一国が束になろうと敵いもしないような、上級の魔獣をこんな一瞬で片付けてしまうんだからな」


「……そうですね」


そうして、しばらくの沈黙が流れる。

すると、エミ先生やコウセイ、ケイタ達の背後のドアがノックされ、全員が扉に注目する。


「入っていいぞ」


「「はい」」


聞き覚えのある2人の女性の声。

ドアが開かれるとそこには、砂で汚れたミナとニナがいた。


「遅れてしまって、ごめんなさいです」


「リキ、さん、タカユキ、さん、運んでた。遅くなった、です、ごめんなさ……い、です」


「事情は分かっている。容態はどうだ?」


「大丈夫、です。疲れてる、だから、寝てる。それだけ、です」


「なるほど。ナツミ殿やアモン殿、アオイ殿はどうした?」


「……ここからは私が話します。ナツミさんとアオイさんは、リキさんとタカユキさんを見送ったあと、城下町へ行くと言って出て行っちゃいましたです」


「アモン殿は?」


「アモンさんは……見送る間もなく、帰ってきたらすぐに部屋に戻って行っちゃいましたです。なんか……やることがあるから、と言ってましたです……」


「……わかった。戻っていいぞ。エミ殿とユカ殿も、リキ殿らの元へ行ってはどうだろうか?カイシ殿にコウセイ殿、ケイタ殿もどうだ?」


「ま……まぁ、そうさせてもらいます」


「私も行きたいですが……やらなければならない事がある故」


「はい……では、失礼しました」


そう言って、全員が国王の部屋から出ていく。

部屋に残った国王とメイドたちは、深いため息をついてその場にしゃがみ込んだ。

その中で唯一ミナとニナは無表情に立ち尽くしていた。


リキ達の元へ向かう道中、カイシ達は別の所へ向かい、エミ先生とユカ先生の2人で向かうことになった。


『コンコンっ』


「はい。今開けますね」


思い出すに思い出せない女性の声が聞こえてきたと思えば、ガチャっと扉が開く。

誰かと思っていれば、彼女は最初に、ミナやニナと一緒に部屋へと案内してくれた、あの女性だった。


「あ、あなたは……」


「これは……お久しぶりです」


「お久しぶりです、……えっと……」


「あ、そういえばまだ名乗ってませんでしたね。私はヒリカです。ここではメイド兼医者として働いています。よろしくお願いしますね」


「お願いします。私は……」


「お名前はもう知っていますよ。ユカさんに、エミさん。ですよね?」


「……まぁ、はい。そうです」


「まぁ、今日知り合った事ですし、紅茶でもいかがですか?美味しいお菓子があるんですよ」


「では、少しだけ」


「じゃ、じゃあ私も!」


しばらく談笑し、ヒリカと親交を深めたところで「そろそろ時間ですから」と言って2人は席を離れた。

3人のコミュニケーション能力が機能したのか、かなり長い間話していたらしく、気がつけば辺りは赤く染まり、空には星が浮いていた。


「アモンくんのところに見に行こうか。一応ね」


「でも、もう時間も遅いし……」


「じゃあ明日にしようか。って、もう9時……こんなに話し込んでたんだ……」


そうして、2人はそれぞれの部屋に戻り、その次の日。

食堂でお昼ご飯を食べ終わった後、しばらくしてから、アモンの部屋に行くことにした。


「そろそろ行こっか」


エミ先生がそのように言うと、何も迷うことも無く、2人はアモンの部屋の前へとやってきた。

ノックをすると、すぐに返事が帰ってくる。


「はっ……はぁい!!何ですか!!?」


ちなみにだが、インターホンを押さずとも、鍵が開いていれば、中の音がドア越しなら外にいても聞くことが出来る。

つまりは、隣の部屋などには聞こえないが廊下側には筒抜けなのである。

気が利くと言われればそうだなと答えてしまうような防音機能だ。

ありがた迷惑とでも言うのだろうか。


「ちょっと、心配で見に来たんだけど、大丈夫ー?」


「あ、まぁ、はーい!!今出まー……あっ、ちょっと……まっ!いでっ!イダだっ!ちょっとまってそれは……痛てぇーー!」


『ガラガラゴロゴロドンドンガッシャーン』


中からとんでもない音が鳴り響き、先生は勢いよく扉を開く。


「大丈夫!!?」


そこに広がっていたのは、他の部屋と比べても同じ部屋だったとは思えない……世界が広がっていた。


「なにこれ部屋きったな!」


「あ……あははは……」


床に散乱した様々な物。

本やカバン、帽子、見たことの無い様々な道具まで……

何もかもが床に散乱し、少し奥の方に目をやると、苦笑いしてこちらを見て、床にうつ伏せになったアモンの姿があった。


「え……えぇっと……まぁ、こんな感じで大丈夫なんで……」


「ぜんぜん大丈夫じゃないわ、どうしたらそうなるわけ?」


「ま、まぁまぁ、ここはアモンの部屋なので、彼の自由にさせてあげましょうよ、ね?」


「まぁ……そうなんだけどさぁ……」


「とっ、ところで、やりたいことがあったらしいけどやりたいことって結局なんだったの?」


「あ……えぇっ……と……」


しばらくの沈黙。

目を泳がせていて、なんだか動揺しているようにも思える。

と、そんなふうにしていると。


「『ブック』」


「「え?」」


そう唱えると、残骸の中から本が飛び出し、アモンの手元に聖武器、『賢者の本』が飛んでくる。

そして何をするのかと思えば……


「先生っ!ごめんなさい!『セットマジック第3番』!!」


『セットマジック第3番』。

そのように唱えると、本からとてつもない暴風が吹き荒れる。


「うわっ!」


「なにこれっ……!!?」


気づけば2人の先生は廊下に放り出され、『セットマジック第1番』と聞こえてきたのを最後に、ドアが勢いよく閉められて辺りがシンと静まる。

廊下に出されてしまった2人は、ぽかんとして顔を見合わせた。

一方、アモンはと言うと、無事に閉め出せたことに安堵しているようだった。


「あ……あっぶねぇー……」


なぜアモンはこうまでもして2人を外に出したのか。

それは数時間前に遡る……

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