第17話 先生にも色々あるんです。
テストがあってしばらくお休みしていました!
ごめんなさいm(_ _)m
今後、今回のようにたまに休むこともあるかもしれませんが、これからもご愛読よろしくお願いします!
『コンコンっ』
廊下に鳴り響くノック音。
木製の扉の前には、エミ先生が心配そうな表情で立っていた。
「ユカちゃーん?大丈夫?アタシ入るよー?」
そう言って、ドアを開けて中に入る。
中は昼間だと言うのに薄暗く、どこから陰湿な印象を受ける。
「もぉ……こんなに暗いところにいたら、目が悪くなるよっ!」
そう言って、外に通じる窓のカーテンをバッと開いた。
眩しい太陽の光が差し込んで、部屋全体が見渡せるようになる。
窓側から背後に振り向くと、そこにはソファーの上でぐっすりと眠るユカ先生がいた。
「Zzz……」
「寝てる……?」
そう言って近づくと、ユカ先生の様子がさらによく見えるようになる。
目元にはハッキリとした泣きダコが浮き出てており、茶髪の髪はボサボサになって、どこか疲れきった様子で寝ているようだった。
「ユカちゃん……」
実を言うと、武器探しのあの日、ユカは自分が武器を持つことができないことにかなりのショックを受けていた。
「この意味のわからない状況下で、生徒たちだけに任せるわけにはいかない」そう強く思っていても、今の無力な自分が醜く思えてしょうがなかった。
いくら自分だけではなく、エミ先生も見えていなかったとはいえ、自分が無力なのは変わりない。
そんな風に思い、落ち込んでいるユカ先生を、エミ先生が見逃すはずも無かった。
「こういう時って、どうするべきなんだろうねぇ……」
そんなことを呟いていると、ふとユカがソファーから起き上がった。
「ん……?」
「あ、目覚ました?」
「おはようございます……」
「いや、もうこんにちはの時間よ」
「あ……通りで明るい……」
「……大……丈夫?」
「……え?」
気の乗らないユカの声色に何を思ったのか、思わずエミ先生は聞く。
間の抜けたような返事をしてしまったものの、何を答えれば分からないというような状況がしばらく続く。
「……あの、……」
そう、言葉を続けようとしたその途端。
パッと目の前が眩しく輝く。
『えぇっと……今、大丈夫でしたかねぇ……?』
その声には、聞き覚えがあった。
青年のような、少女のような、大人のような子供のような不思議な声。
眩しすぎて姿は見えないが、確かにそれと同等な何かを感じた。
「この声……パルラ……っ!?」
「パル……ラ……?」
『おぉっ!覚えててくれたのは嬉しいっすねぇ』
そう、気さくに答える。
思わずエミ先生は身構えるが、ユカ先生はというと、どこか虚空を覗いているような目をしていた。
『いや、そう身構えないでくださいよォ〜!』
そうは言ってみるものの、2人は答えようとしない。
『……まぁ、いいっすよ。今日は助言をしに来ただけですから』
「助言……?」
『そうっ!助けの言葉って書いて助言っ!今日は、金の柱を見つけることができなかったカワイソ〜な2人にいいことを教えてあげようと思う!』
エミ先生は、勢いよく立ち上がろうと足を込めるが足が動かない。
まるで鎖か何かで縛りつけられているような、真上から押さえつけられているような感覚で、体を一切動かすことができない。
『んまぁ……じゃあ、話をつづけるね?では……なあなた達に助言を。これはなんと!朗報です。それは、あなた達はただ塔が見えていないだけで、実際には武器は存在していますっ!ちょっぴり他の人らよりも時間がかかるってだけね?だから、そんなに落ち込まないで欲しいな〜♪』
「なっ……舐めるんじゃないわよ!」
『そ〜んなに叫ばないでくださいよぉ〜、まぁ、言いたいことはただ一つ。力に何たいのならば、外へ出て、世界を見るべし。以上!』
「ちょっと……待ちなさい!!」
最後にそう言うと、人差し指をピンと立てて霧のように消えてしまった。
光もやがて収まり、視界がはっきりとしてくるのと同時に、やっとのことで体が動くようになった。
「くっそぉ……何よ?あのパルラとかいうやつ……絶対に大人を舐めてるわ……」
そう呟くと、ユカ先生の方を見て「ねぇ?」と答える。
が、そんな言葉も耳に入らないほどに、ユカ先生は何やら考えているようだった。
顎に手を添え、決心したようにエミ先生の方を見る。
「行きましょう。外に」
「えっ!?ちょっと、あんなやつの言うことを聞くっていうの!?」
「はい」
「何を考えてるか分からないけど、言いなりになってもいいの!?あんな子供の!!」
そうエミ先生が叫ぶと、ユカ先生がスタスタと歩き出しながら答えた。
「確かに子供のように見えますが、アレはもはや神様じゃないですか?こんな世界に連れてこられて、これから起こる事を伝えてきて、しかも私たちの夢の世界にまで干渉してくるなんて。人間じゃないんですよ。きっと」
そう言うと、顔を洗い始める。
ぐちゃぐちゃになった髪をといて、この世界の熱魔法のドライヤーで乾かすと、この世界で売られているメイクを顔につける。
「この化粧、けっこうオススメだよ?」
「……へぇ〜、ここにも化粧品売ってあったんだ」
「専門店もあったから、今度案内してあげるね。元の世界に比べて暇が多くなったから」
「本当にねぇ〜……前までは、課題やらテストの問題の作成、丸つけ地獄、真夜中にかかってくる電話。次の授業の復習……寝る時間なんてほとんどなかったからねぇ」
「大変だったよね……」
メイクをしながら、淡々と話を続ける。
この切り替えの速さには、もはや尊敬すら覚える。
さすがは教師、と言ったところだろうか。
社会人としてよく出来上がっているのが分かる。
子供に教えを行う立場として当たり前とも言うのだろうが、尊敬に値するには十分だろう。
と、ここで、エミ先生が話を続ける。
「忘れ物の時とか本当に大変だったよね.」
「うん。あ、忘れ物と言えば…………あれ?」
ユカ先生の手が止まる。
鏡を見つめたまま動かない。
「どうしたの?」
「いや……あれ……?」
首を傾げて考え込む。
何かを忘れているような気がした……が、何を忘れているのかが分からない。
ポッカリと空いた記憶の穴には、何も埋まっていない。
その空白だけが、今のユカを悩ませていた。
「あの……忘れ物で……」
「あれ……そういえばそんな……えっ……あれ、どう…だったっけ……?」
「…………まぁ、今考えていても時間がもったいないから」
そう言って再び手を動かす。
メイクが終わると、化粧品と鏡を元の位置になおし、立ち上がる。
「行こうっ、エミちゃん!」
「そうね!」
「いや〜!久々の外だなぁ!」
そう言って扉を開けると、先程までは全く聞こえなかったが、ワイワイと騒ぐ数人の男子生徒たちの声がわっと入ってくる。
「すっげぇ何それ!」
「いやいやお前だけかっこよすぎだろ!」
「それ最強すぎんか!?チートかよ!!」
ワイワイと騒ぐ男子3人。
互いに表示した青いプレートを指差し、なにやら言い合っているようだった。
その騒ぎようにエミ先生が注意しようと声を発する。
「こら、カイシ、ケイタ、コウセイ!そんなに騒がない!」
出席番号25号。本田 介志。
ケイタ、コウセイと仲がいい。
部活はサッカー部で場所はキーパー。
しかも部長で、けっこうモテモテ。
サッカー部としての腕もなかなかで、活躍することも多々ある。
席番号26号。嘉山 佳太。
カイシ、コウセイと仲がいい。
部活はカイシと同じくサッカー部。
足はそのクラスの中で1番速く、追いつくのもやっとになる。
実を言うと、モテモテだったり。
カイシとのサッカーコンビはもはや最強。
出席番号8号。桐谷 煌星
カイシ、ケイタと中がいい。
部活は2人とは違い、野球をやっている。
守備はショート、ピッチャーセカンド、サードと様々。
しかし、打撃、走塁、守備といった野球技術には誰にも引けは取らない。
普段は普通の青年といった感じだが、しっかりキマるとイケメン。
「あっ!先生!お久しぶりぃ!」
「最近見なかったすけどお久っすね!」
「あ!先生たちのスキルとかってどうなったんすか!?」
「教えるわけないでしょ!あと、ついさっき騒がないって言ったばかりじゃない」
「そういえば……」
と言って、下向いて手をかざすユカ先生。
教えないと言われてガッカリする3人をよそに、ユカ先生は唱えた。
「『ステータスプレート』」
「ちょっ!?」
「おぉっ!?マジ!?」
そうカイシが言って、全員がそのプレートに注目する。
…………………………………………
名:南美 佑華 Lv.5
女性 歳《秘密》
H P:120/120 M P:53/53
STR:8 CON:15
POW:7 DEX:16
AGI:7 INT:90/
LUK:82
スキル:
超学 Lv.1
職称:
数学家
…………………………………………
パッと開き、手をかざす。
上から順に数字を眺めていき、スキルのところで指が止まる。
「『超学』……?」
「何かしら?これ」
それを見兼ねたコウセイがユカ先生に話す。
「スライドすると説明が見れますよソレ」
「ホント?……あっ、マジじゃん」
…………………………
『超学』<???(現在確認できる項目はございません。)
…………………………
「……確認できないんだけど」
「あれ?俺らは見れたんだけど……なぁ?」
「うん、俺のやつも見れたし」
「ちなみになんだったの?」
「俺らは……」
そうして、次々にステータスを開示していく。
コウセイは、職称は『シーフ』、スキルは『三冠王 Lv.1』で、
カイシは、職称は『守護者』、スキルは『守護神の奇跡 Lv.1』、
ケイタは、職称は『駆動騎士』、スキルは『自我速度 Lv.1』で、3人とも自身のレベルは5だった。
それを見て、さらにユカ先生は肩を落とす。
「ねぇちょっと……みんな強そうすぎない……??てかさ、あたしのスキル、絶対に武器専用スキルじゃぁん……じゃないと意味分かんないんだもん……何ぃ?超学って……」
「まっ、まぁま、アタシも『国語家』で『文字顕現』なんていうものなんだよ?ほんっと意味わかんないよね〜!」
「もぉ〜、頼れるのはエミちゃんしかいない……」
と、その時。
ほんの一瞬、辺りの全ての音が遮断される。
口を開いていたが、音が上手く伝わらない。
そして、次の瞬間。
『ドゴォォォォォォンン!!!』
まるで稲妻のようなとてつもない爆音が鳴り響く。
嫌な予感が全身を駆け巡る。
その場にいた二人の先生は何を考える間もなく、走り出した。
それ続いて、カイシとケイタ、コウセイもついて行くのだった。




