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第15話 暇なので

チナツとユウナがまさかの、この異世界でアイドルになっているという新事実を胸に収め、その次の日。

再びの日常である。

だが、いつもとは違い、この日は、いつものメンバーの中にイブキはいなかった。


「そっか……今日って、イブキの日だっけ?」


そう呟くのは、リキ。

最初にも話したとおり、この国では訓練場の確保が乏しく、訓練日数やその他もろもろが少ないという事が問題になっている。

というわけで、騎士の訓練に並行して勇者一行の訓練を行うにはどうすればいいのか、と考えたガイルは、5人ずつにグループ分けし、ひとつの訓練場で、交替で訓練を行うことに。

そしてその日は、イブキだった、というわけだ。


「なんだかつまんないなぁ」


「暇だね」


ツッコミのない漫才……とでも言うのだろうか。

いつもはイブキが何やら言葉を返してくれるが、今日はその人がいない。

つまらないのにも納得できるだろう。

と、そんな時。


《ピロロロロロロ……》


とある一室から、呼び出しのコール音が鳴り出す。

闇底のような真っ黒な部屋からの音だ。

案の定、その部屋に行くと部屋の1辺の壁一面に再生ボタンのようなマークが青いプレートに浮いていた。

それに一番に気づいたアモンが真っ先にその部屋へ向かい、マークをタップした。


『もしもー……って、なんでアモン?』


「別にいいだろ?」


『いや、俺リキにかけたつもりだったんだけど』


「俺が出たっていいだろ。ところでなんの用なの?タカユキ」


出席番号1号。濱木 鷹由(ハマギ タカユキ)

高身長の坊主頭。

リキに並ぶほどのなかなかのムードメーカー。

けっこうノリがいい。


『いや、俺の能力を試してみたくてさ、リキとタイマンしてみたいなって思ったんだけど』


その言葉を聞いた瞬間、その部屋が驚きの静寂に包まれる。

勇者たちの中では、リキは最強とも呼べる存在だったからだ。

最初の伝説を聞けばわかるだろう。

初代勇者ですら吹き飛ばせなかった訓練用のカカシを、傷を付けるどころか、大きく凹ませ、根元から折り、何枚もの壁を割って吹き飛ばしてしまったのだから。

そんな偉業を成し遂げたリキに挑むとは、まさか誰が予測できただろう。


「お、なんだよタカユキ?俺に勝てるとでも?」


自信満々に答えるリキ。

だが、それでもタカユキは一切引くこともなく、話を続けた。


『いや、俺、ワンチャンお前よりも強いから』


そう言うタカユキの挑発に乗せられたリキは、「あぁ、いいぜ」とその勝負に合意した。

そして、バチバチと視線を交わしながら昼飯を食べ終えた午後。

銀髪と黒髪の、双子メイドに連れられ、リキとタカユキは決戦の場へと向かった。


「ミナで〜すっ!」


「私、ニナ」


「「私ら、決闘の審判やる」」


単調な自己紹介を行い、ミナとニナは所定の位置に着いた。

城の広い一室、何も無い壁に向かって2人は片手を広げる。


「「ゲート、オープン、座標、オプション第103番地」」


そう唱えた途端、目の前の壁に、深淵のように暗い渦が出来上がる。


「なにコレ、すご……」


「たぶん、ここがいいと思う」


「じゃあ、みなさーん!私たちに着いてきてくださーいっ!」


そうミナが言うと、2人は渦に飛び込むのようにして進んでいってしまった。

そして、それに続くようにして続々と入っていく。

渦をくぐり抜けると、視界がぱっと明るくなる。

ここは、王国からだいぶ離れた魔物の土地。

草木は枯れ、その場は荒野と成り果てていた。

だが、決闘をするにはちょうど良い場所でもある。

高層マンションのような岩柱が幾本も生え、それが障害物となって面白みがある。

それに、なんと言ってもこの広範囲のフィールドには誰しもが驚くだろう。

見渡す限り、岩、岩、岩。

少し遠くの方に目星を灯せば、うっすらとウルファイド王国の姿を視認できる。


「こんなとこあったんだ……」


「ここも、あの王国の領地なの?」


「ここ、どこの領地も、違う」


「ここは魔素濃度が高くて、モンスターが無限に湧き出すんですよ〜」


「ここ、家建てられない。建てると、住民、タヒぬ。100パーセント」


「なるほど」


「で、ここはけっこう都合のいい訓練場となってるってワケか」


「間違ってはないねぇ」


最後にミナがそう言うと、タカユキはリキの方へと振り返った。

リキは目を輝かせ、タカユキは自信に満ちた笑みを浮かべて言った。


「ここでなら、周りのことなんて気にしなくていいな!」


その言葉を合図に、辺り一帯がピンと張りつめたような空気になる。

そんな緊張感の走る中、ミナとニナが声を上げる。


「「これは神聖なる決闘!特別ルールとして、この戦いではHP(ヒットポイント)の代わりに自身のSP(体力ゲージ)を消費します!勝敗は、先に戦闘不能になってしまった人が負けの簡単なルール!では……」」


と、ここでミナとニナが片手を大きく掲げた 。


「「レディー?……ファイト!」」


元気なミナの声と、不貞腐(ふてくさ)れたようなニナの声が響くのと同時に掲げた腕を振り下ろしたところで始まり、2人は、互いの中心に向かって勢いよく突っ込む。

リキは拳を振りかぶり、タカユキの顔面めがけて思い切り振り下ろす。

ここですかさずタカユキはその攻撃を避ける。

自信はあるものの、あれほどの威力を持った攻撃をされればひとたまりもない。

が、ただヤられるワケにもいかない。

体を翻し、拳を避け、そのまま裏拳で追撃。

カウンターだ。

が、それを柔道部のリキが許すはずもない。

慣れた足取りでタカユキの(ふところ)へと潜り込み、拳と胸ぐらを掴んで投げにかかる。

この異世界にはない武術、柔道、背負い投げを繰り出した。

しかも、リキは勇者。

増強された筋力をも持ち合わせたその技に対応できるわけもない。

為す術なくタカユキは投げられ、肺に溜まった空気が一気に吐き出される。


「カハッ……!」


が、まだ終わらない。

これは柔道でもなく、1VS1(タイマン)の神聖なる決闘だ。

ここで止めもなければ、一本もない。

さらなる追撃が来る前に、すかさずタカユキは動く。

地面にひれ伏した状態で、横に一回転し、リキの足を薙いだ。


「なっ、!?」


上手くリキを薙ぎ、宙に浮いた体に向かって追撃。

腹部を狙って肘で押し込み、地面に打ち付けられてバウンドしたところで蹴り上げる。


「ぐっ……!」


吹き飛ばされ、体制を整えようと、空中で一回転し、着地する。

一定の距離をとり、タカユキが口を開いた。


「はぁ……リキお前、手抜いてるだろ?手ぇ抜くなよ!」


「ちょ、タカユキ意外に強くてビビってるんやけど……」


「ひよってんじゃねぇよぉ!」


と、冗談交じりに会話を連ね、互いを見合う。


「んじゃあ、ここからは手加減無しでいこうぜ!」


「もちろんオッケー!」


そして、同時に叫ぶ。


「「勇者(ウェポンズ)衣装(コスチューム)!!」」


そう叫んだ途端、2人の姿が、下から上へとみるみるうちに変わっていく。

リキは燃えるような赤い光に包まれ、タカユキは、朝日のように黄色に輝く光に包まれ、それを見ている周りの人間は直視できずに目を瞑る。

最後、頭の先まで光が行き渡ると、粒子となり、光は霧散していった。

粒子が完全に散り、直視できるようになった頃、そこにいたのは、今までに見た事のない姿をした2人が。

燃え盛るような色をしたハチマキを頭につけたリキ。

熱血系をイメージさせ、その両手には、紅い皮に金属が埋め込められた、殺傷能力抜群なグローブがはめられていた。

今までにないほどの闘士に燃え、目ギラギラと輝かせる。

そして、タカユキに視線が移る。

上半身は裸で、下半身にはダボッとした白のズボンが履かれている。

どこか異様な雰囲気を持ち、素肌から血管が浮き出ていた。

足元を見ると、下駄(げた)が履かれているのがわかる。

カツカツと音を鳴らし、再びリキに向けて構えた。

2人の視線がぶつかる。


「おっしゃあリキ!行くぞぉ!」


「あぁ、かかってこい!」


拳を打ちつけ合う2人。

その一角で、観客がもう一人増えたことを、彼らは知らない。


「わぁ、すごい!2人ともあんな感じなんだ!頑張ってね♪」


高い声の女性。

どこからともなく現れ、しれっと観戦に加わった。

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