第14話 文明開化
丸々数時間歌い続け、汗だくになってしまったふたりは、最後に別れの挨拶をすると、ステージのサイドの方に入っていった。
すると、人混みのおよそ半数は残り、もう半数は帰って行った。
ちなみに主人のおっさんも帰ってしまった。
どうやら、コンサートの終わりには決まって握手会なるものがあるらしい。
帰っていく人達は、その存在を知らないか、もしくは出店の準備があるのかのどちらからしい。
と、いうわけで、4人はそろってステージのサイド……2人がいる場所へと入っていった。
「おじゃましまーす」
「へぇ〜、こんな風になってるんだ」
「Hey!Youたちィ!」
その声に反応し、4人は振り返る。
「ココはカンケー者以外立ち入り禁止Yo!サッサと帰るYo!」
カタコトの日本語(?)で注意してくる。
ちなみにこの人は知らない。
肌は黒く、髪はパーマで巻かれている。
ぽっちゃりとしていて、身長は高く、なんとも言えない風格が伝わってくる。
身に付けられた、『ピンクピンクチューン』と描かれたTシャツが良く似合う人が来た。
「あぁ、えぇっと……」
「アレ、もしかして初見かYo?握手会ハここじゃなくてアッチダYo!」
きっと2人に教えてもらったのだろう。
元々にいた世界の単語や言葉をジャンジャンと使ってくる。
と、その時。
「あ〜!タクちゃんちょっと待ってー!」
「ん?何ダYo?」
「その人ら、あたし達の知り合い!」
そう言って、急いで2人がやってきてくれた。
「チナツ!ユウナ!」
「やっほー!」
「見に来てたんだね。……っていうか、やっぱり知り合いに見られると恥ずかしいな」
「私は全然嬉しいけどね!見に来てくれてありがと!」
出席番号24号、恋原 稚捺。
ユウナと仲が良く、明るく元気で、笑顔が絶えない。
そこまで目立ちたがり屋ではないが、たくさんの人たちと笑い合いながら話したい。
実を言うと、けっこうポンコツ。
出席番号16号、愛川 結奈。
チナツと仲がいい。
ちょっとクールで、恥ずかしがり屋。
でも内心では、ちょこっと、目立ってみたいと思っている。
見た目のクールさに似合って、頭がいい。
そんな2人が、アイドルとしてコンサートを始めた結果、この世界に大いなる反響を及ぼしたのだ。
この影響により、各地で空前のアイドルブームが巻き起こり、『ピンキーピンキーダンス』……いわゆる、『ヲタ芸』をも誕生した。
子供たちの見慣れたチャンバラごっこも、今ではアイドルダンスに置き変わっている。
これほどの影響を与え、世は華やかな文明開化の鐘を大きく鳴らした。
しかし、それほどの影響を与えた当の本人達は、それに気づく訳もなく……
「なっちゃんもやってみる!?」
「めっちゃ楽しいよ!」
この世を楽しみ尽くしていた。
このライブは7日に1度行われ、なんの告知もないまま、ランダムな場所で行われる。
盗撮、強盗、痴漢などの犯罪行為を避けるためだ。
この世は元にいた世界よりも安全な場所……ではない。
犯罪行為はよくあることのようだ。
その事実を教えてくれたのは、2人にタクちゃんと呼ばれていた男である。
「もう、タクちゃんのおかげだよ!!」
「コノくらいはヨユーだYo!」
「てかさ、さっきから気になってたんだけどそこのタクちゃんっていったい誰?」
その質問に、2人はすぐに応えた。
「いやぁ、それがさ……」
その言葉を初めに、話を始めた。
時は、1週間前に遡る。
…………………………
この日、2人は、いつもの通りに仲良く過ごしていた。
笑って話し合い、一緒に歩き、見て回る。
面白おかしく過ごしていた……。
そして、毎日のルーティーンのようにアイドルごっこなる遊びを始める。
全く知らない人に見られるのは恥ずかしいので、この日は人気のない路地でその遊びをすることに。
カンタンな自作ダンスを踊り、最後の決めポーズをとったその時。
視界の目の前にいたのが、そのタクちゃんだった。
タクちゃんは、そんな2人の姿に一目惚れ。
この姿を全世界に広げたいと心から思った。
運のいいことに、タクちゃんは音楽の作曲家として活動していた。
なかなか世界から認められないその曲調は、2人の姿にピッタリだった。
そこでタクちゃんは思い切って2人に話しかける。
「ヘッ……Hey!ソコのgirls!」
いきなり話しかけられて驚くが、恐る恐る振り返る2人。
そこにいたのは、目をキラキラとさせたタクちゃんの姿が。
「ユッ、Youたちの……Nameはナンでしょうカ……!?」
2人は、何を恐れることもなく、自分の名を言った。
「チナツ……ユウナ……meはタクザ!チョット話したい!」
そうして、タクちゃんはこれから自分のしたいことを2人に話した。
全世界に2人の名を轟かせること。
世界の頂点に立つこと。
世界の楽曲者たちに出会うこと。
2人のダンスに見惚れてしまったこと。
自分の音楽をデュエットさせたいということ。
その5つを話した。
その内容は、どれも2人にとって悪い提案ではなかった。
2人はそれを受け、タクちゃんとも仲良くなり、そうして。
…………………………
今に至る。
「……っていうことがあってさぁ」
先程の内容を小さく纏めてナツミやリキたちに話す。
身振り手振りを利かせて説明をする度に、サイドテールやスカートが揺れて、ただそれを見ているだけでも舞い踊っているように見える。
なりきっているどころか、もうアイドルとして出来上がってしまっているらしい。
そこで、ふと気になったのか、リキが2人に話しかけてきた。
「てか、その衣装って……!」
「そう!これ!」
「あたし達の……」
「「勇者衣装なの!!」」
急に出てきた謎の単語……『ヒーローコスチューム』という物に興味を抱くものはごまんといるだろう。
これまた、今から2週間前の話となる。
と、作者である私が説明を始める前に、なつみがまるで短機関銃のように単語や言葉を連ねる。
「なにコレかっこよ!かわいい!ちょっとコレずるいよ!あんたら2人だけこんないいの着てさ!え、すご!え、かっこよ!え、武器は何だったの!?エグいんだけどスゴ!」
その言葉の連撃に1歩足を後方へずらすと、ふとチナツの背後から、兎のようなふわふわと浮くナニカが出てきた。
なんなのかと全員が気になっていると、ソイツがいきなり喋り出す。
『なぁなぁチナツ〜〜〜〜〜、そろそろファンのところに行ってあげないと、怒られちゃうよ〜』
「あっ、確かに!」
そして次に、ゆうなの背後からネコを連想させるようなモノが現れる。
『その通りだ。いったいいつまでベラベラと話しているつもりだ?』
「分かってるって。『うさピー』、『にゃんタ』」
そう呼ばれた2匹は、2人の周りをぐるぐると回り出す。
もう分かっているだろうが、この2匹が、チナツとユウナの『聖武器』である。
名は『ヒーロー・ギア』。
使用すると、それぞれの聖武器が保有する武器が、使用者に見合った大きさ、重さ、色の物を召喚し、与えてくれる。
いわゆる、プ○キュアや、ウルト○マンなどに必要とされるアレである。
『うサピー』と呼ばれたその武器は、名の通り、うさぎを連想するような姿をしており、機械的で、銃口のような穴が2つ空いていた。
そしてもう1匹。
『にゃんタ』と呼ばれたその武器は、猫の頭のような姿をしていて、その頭からは、様々な剣の刀身が翼のように生えている。
この2匹が、この2人の、世界でたった一つの、『聖武器』なのだ。
散々2人は話すと、満足したように握手会の場へと戻る。
4人はというと、再びこの街を探索しに戻っていくのだった。




