第10話 勇者の武器の試練 #1
残った勇者が指を挿す。
その方角にあったのは、紛れもなく、先ほど出てきた城だった。
「「「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」」」
というわけで、「何か問題があったのか」という目を民から向けられながら、一度来た大通りを戻っていく。
城に戻っても、掃除をしていたメイドのミナさんとニナさんたちや、騎士たちに何事かと聞かれて、理由を言うとホッとしたように持ち場に戻っていく。
「な、何かあったのか!?帰りが早すぎるぞ!!」
遂には国王にまで訊かれた。
「ここに俺の武器があるみたいなんスよォ」
そして説明もだんだんと面倒くさくなってきたのか、効率的に短く的確に。
「なるほど……ならば私もその聖武器を手に取る瞬間をこの目に収めるとしよう!」
というわけで、国王もついて行くことに。
さすがは国王と言うべきか、相手が勇者だからと緊張していた騎士たちとは違い、たとえ勇者でも、気軽に話しかけてきた。
コミュニケーション能力は抜群だ。
城下町でもその国王の人気は絶大で、その理由もちゃんと理解できる。
「ところで、勇者殿。名はなんというのだ?」
「あぁ、そういえば言ってなかったっすねぇ。俺の名前は黒沢 昊空って言います。あぁ、この国ではソラ・クロサワっすねぇ。よろっすぅー」
出席番号9号。
黒沢 昊空。
かなり緩い口調で、いつもほのぼのとしている。
同じクラスのみんなからは『おじいちゃん』と呼ばれていたり、いなかったり。
学校の体力測定では握力の欄がいつも1位。
「これはご丁寧に。なるほど、ソラ……」
「うぃっすぅー」
「ところでソラ殿。他の勇者の方の名を教えていただけないだろうか?」
「あ、いいっすよォ」
「礼を言おう」
と、国王と他の勇者の名前について話したり、元の世界の技術について話してみたりと、たくさんのことを話していると、金色の柱が見える部屋の前にまでやってきた。
「ここなのか?」
「……っぽいっすねぇ……」
「この中に光が見えるのか?」
「……んまぁ、そうっすけど……」
そう言った瞬間、騎士たちや国王がザワザワとし始める。
「ど、どうしたんスか?」
そう問われ、国王がそれに応える。
「この国の名は、剣聖国家第一級人間都市ウルファイド王国と言う」
「はぁ」
「その名は、聖剣を魔族から守るという掟を交わした国の印として、剣聖国家と名ずけられた」
「えっ、もしかして」
「この部屋には、聖剣が置かれている」
かつて、山の頂きに刺されていた剣は、誰も抜きとることができず、移動させることも出来なかった。
そこで、その聖剣を守るため、剣聖国家ウルファイドが建国されたのだ。
そして、その聖剣は今この、目の前の部屋に保管されているのだ。
「……入るか」
「はいっス」
そして、保管倉庫の重い金属扉を開ける。
何重にもかけられたセキュリティの魔法を解いていき、やっとのことで扉が開く。
《ガガガガガガガ……》
中には、聖剣の他にもたくさんの国宝が並んでいた。
長い通路が続き、壁にはたくさんの武器や宝石などが置かれている。
しばらく進んでいくと、広い空間にやってきた。
「ここだ」
「へぇ……めっちゃ広いッスねぇ」
「そうだろう?勇者の持つ聖剣には豪華な聖座が似合う」
ここまで言うと、国王が聖剣のある座の前へとやって来て、広い部屋に大きく声を響かせる。
「さぁ勇者よ!!今こそこの聖剣を抜く時!!」
そう言って振り返る。
そのままソラは進んで前に出る……と思ったが、どうも納得していない様子。
「……?」
「どう……したのだ?剣聖を抜かない……のか?」
「いや、聖剣……光ってないっす……ねぇ……」
「「……は?」」
真勇者が現れた……と思ったが、ソラの武器は聖剣ではなかったらしい。
たくさんの武器が置いてあるので、他が武器であってもおかしくはない。
が、問題は他だ。
「ならば真の勇者は一体誰だ?」
「俺に聞かれても知らないっすよ……」
まぁ、今考えていてもしょうがない。
ということで、武器探し再開。
武器は聖剣以外にも、山の頂きに座しているものがあったらしく、それがソラの武器だったらしい。
「これは……大盾だな」
「でっかいすね。この盾」
聖剣と大盾。
聖剣は、強靭な精神力を持つ者にしか抜くことはできず、
大盾は、強大なチカラを持つ者にしか持ち上げることはできない。
そう伝えられている。
本当にこのような子供がこの試練に耐えられるのか?
そう思いながら、国王はソラを前に進める。
「では、持ちますね」
「よろしく頼む」
そして、その大盾に触れる。
その瞬間、金色の粒子が辺りを漂い、つむじ風が次々に起こる。
そのつむじ風はソラをたちまち囲いだし、この部屋に収まるぐらいの小さな黄金の竜巻が起こる。
キラキラと輝き、内側では金粉の渦に恐怖と感激を覚える。
そして次の瞬間。
その竜巻と化した金粉の柱が一部欠け、ソラに勢いよく降りかかる。
だが不思議とダメージはなく、だがその重みや重圧が降りかかり、ソラを圧する。
とてつもない重力がかかり、ソラは盾を握ったままその圧に押し潰されまいと耐える。
「うぐぉぉぉぉあぁぁ……!!」
「これが……聖武器の問い……!」
聖武器の問い。
聖武器が、その武器を手に取る勇者に行う試練。
その武器が求めるチカラを持っているのか、その問いにはっきりと答えられなければ手にする事ができない。
それが、聖武器の問いと呼ばれるものである。
「あぅがァァァァァァァ……!!!」
次々に金粉が欠け落ち、ソラに降かかる。
5つ目……6つ目……
いくつ落とすつもりなのだろうか?
滝のように流れる。
9つ目……10つ目……
まだ落とす。
欠け落ちる度にドスンドスンという音が部屋中に響き渡り、その度に地面が揺れる。
15個目。
床にヒビが入り始める。
一階であるこの部屋の下は、山の岩が詰まっており、落ちることは無い。
20個目。
床が凹み始める。
大きく凹み、ヒビが広がり、全体に地鳴りのような響きが広がる。
30個目。
ここに来て、やっとのことで全ての黄金が欠け落ち、竜巻は消えた。
あるのは、流れる金粉に圧せられるソラの姿。
上に乗った金粉が砂浜の砂のようにサラサラと床へと流れ、消えていく。
しかし、上に乗った金粉が無くなることはない。
ただただ流れ続けて、ただただソラはそれに耐える。
「あ"ぁッ……あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!」
最後に残った力を振り絞り、体を起こす。
すると不思議なことに、体を起こしきったその途端、上に乗っていた金粉がドサッと音をたてて全て床に舞った。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
盾を握ったまま、汗を滝のように流しながら、肩を上下に揺らして呼吸をする。
数メートルも床が凹んでいることから、どれだけの重圧がかかってきたのか、その恐ろしさが伝わってくる。
そして、次の瞬間。
『盾の所有者ヲ確認。職称、「勇者」の存在を確認。ステータスの覚醒を行いマス。又、所有者の再設定ヲ行います。・・・・・・・・完了しマシタ。所有者、「黒沢 昊空」に変更。覚醒ハ今現在にて準備中。』
その全てが脳内を巡ると、上の方から国王が話しかけてくる。
「そっ……ソラ殿ォ!!大丈夫かぁ!!!」
「国王……」
「ほっ、大丈夫……そうだな」
そうして、ソラは国王のに近寄り、話しかけようと顔を向ける。
……が、安心して溜まった疲れが放たれたのか、疲労により倒れる。
そのままソラは、目を瞑って寝てしまった。
本当に大丈夫なのだろうか?
国王は心配すら覚えていた。
他の勇者達は大丈夫なのだろうか?
聖武器の問いに、全員が応えられるのだろうか?
その答えは、誰にも分かり得ることはできなかった。




