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花の巫女姫  作者: 七海 夕梨
巫女姫はゲームだと信じたい
16/24

十五片:庭園の前で

 視界の揺らぎが収まった途端、花梨の尻にドンと衝撃が走った。


 痛い──そして冷たい。


 花梨は尻についた雪を払い立ち上がると、空気の変化に震えが走った。どうやら(ぐう)から外に出たらしい。



「──っ(つぅ)。桔梗様ってば、もうちょっと優しく転送してくれないかなぁ」


 そういえば帝もこけていた。御簾先であったので見えたのは影だけだが。あれが通常運転なら、今度からは転送先を考えてお願いしたほうがいいだろう。頭から落ちたらたまったものではない、などと花梨は考えていたのだが……


「まったくお前ときたら!!」


 背後でよく知る声が聞こえ、振り向くと鋭い目つきの男が一人。花梨とは違い尻餅をつくことなく仁王立ちで立っている。ついでに顔も仁王のようだ。


「おじさん?」


 どうやら腕をとったのは夏行だったらしい。


「おじさんではない。あと神器で自殺をするなっ!」


 殴るような声が、花梨の耳に響く。


「怒んないでよ。どうせ神器で人は切れないんでしょう? だったら」

「馬鹿者!!! 人は切れぬが、使い手は別だ。神力の源は魂だぞ。しかもお前の武器は自身の魂刀。それを己に向ければどうなると思う?」

「どうって?」

「下手をすれば魂が砕け──死ぬ」

「げええええっ!!」


 花梨の顔から一気に血の気が引く。どうりで桔梗が真っ青なわけだ。よく考えれば、桔梗のほうが神器に詳しいはず。神器で人が切れぬ事ぐらい当たり前に知っているだろう。その上で止める理由を花梨は考えもせず刃を向けていたのだ。


「全く無茶をする。魂を切る(すべ)はそれほど難易度が高いのだ。文献でも成功例はほどんとない」

「やっばー。それならそうと言ってよ!」

「馬鹿者‼ 自殺すると誰が思うか! しかも夜に行くとは無謀な」


 夏行が不安気に空を見上げて言う。


(あ、もう庭園にいるんだっけ)


 つられるように花梨も空を見た。てっきり不気味な闇夜かと思ったが、星や月明りで暗くはなく、邪悪な獣が潜む場所にはとても見えない。


「そんなに怖い所には見えないけど?」


(初期ダンジョンだからかなぁ)


「ここはまだ庭園ではないぞ」

「え?」


 慌てて周囲を見渡すと、先程までいた建物が見えた。大声を上げれば聞こえそうな近さだ。どうやら花梨が落ちた場所はその建物に面する庭だったらしい。


「外にでただけ? なら自分で行けばよかった」


 おかげで尻が痛いと花梨は嘆く。


「そう見えるが違う。婆様が空間をねじ曲げておるのだ。神気を読め──某と違い、お前ならわかるはずだ」

「そうなの?」


 花梨は、ふぬぬ~と意識してみたが何も感じない。


「感じぬか? 黒獣の気配は察していたようだが?」

「黒獣はね。あたしをロックオンした時に体がビビってなるの」


 レベル上げで暗闇の中、花梨は数百の黒獣を倒したのだ。いやでも体が覚える。


「ろっく……お?」

「狙いを定めるってこと」

「また珍妙な言葉を。それより本当に行くのか? 婆様は、お前の気が変わるやもと近くに飛ばしただけのようだが……あそこにしめ縄がみえるだろう? あの先が庭園だ」


 夏行が建物とは逆の方向──暗闇を指をさしていう。


(あれが庭園……)

 

 先を阻むかのように、木々にしめ縄が結ばれている。縄の向こう側は真っ暗だ。こんなに月明りがあるのにどうしてと目を凝らした途端、花梨は恐怖で息が詰まった。誰かに心臓を掴まれた気がしたのだ。だがどうしてか、その感覚に懐かしさを感じ、花梨はさらに混乱した。


(今のはいったい……?)

「大丈夫か?」


 夏行の声で花梨は現実へと引き戻された。心臓の痛みやおかしな感覚も嘘のように消えている。


「やめるか?」

「え? 大丈夫よ」

「しめ縄の先に行けば戻れる保証はない。婆様と手練れの花守が何度も向かったが浄化できず、多数の死傷者が出た場所だ。二年前、大怪我を負った【あの方】を連れ戻しに行ったが……思い出すだけでもおぞましい所だった」

「連れ戻した? おじさんって実は凄いの?」

「いや……足止めがいいところだ。神無(かみなし)は神気を持たぬゆえ、黒獣を浄化できん。だが神気がないからこそ、黒獣に気取られず動く事は出来る。連れ戻せたのもそれが理由だ。【あの方】の神力が尽き、死にかけたていたゆえ、できたことだ」

「なら危ないわね。今回は(ぐう)に戻ってて。それじゃ──おわっ」


 直進しようとしたら夏行に手を掴まれ、花梨は前につんのめった。


「だから一人で行くなと」

「え? だって黒獣を浄化できないんでしょう?」

「──うっ」


 気まずそうに夏行が眉を歪める。


「心配しなくても大丈夫。2-3時間──あぁ、一辰刻(いっしんこく)で帰れると思うし」


 都に行く途中、夏行に教えて貰った時間の単位で花梨が説明する──といっても2-3時間で攻略できる根拠はない。庭園の広さすらわからないのだ。ただ初期ダンジョンならそれぐらいで攻略できると、花梨独自のゲーム経験から言ったにすぎない。


「侮るな。黒獣は心の弱さもついてくる。剣技があればよいわけではない」

「でも守れなかったら嫌だもん」


 夏行の気持ちは嬉しい。だが万が一、死なせでもしたら花梨が自殺宣言までして来た意味がなくなる。


「守る必要はない。庭園の地ならお前よりも知っているし、これでも花守だ。神無(かみなし)とはいえ黒獣を切るぐらい出来る。お前とて複数の黒獣を『同時に』は容易でなかろう?」

「たしかに」


 花梨がレベル上げで戦った黒獣は複数相手だと一戦につき、せいぜい五から十。それ以上の数で襲われればさすがにきつい──ふと、あの夢の光景を思いだし、花梨は身が震えた。俊敏なあの子供も、連戦で力尽き黒獣に喰われそうになったではないか。レベルが高くとも長期戦となれば、状況が変わってくるかもしれない。


(あの夢は一人は危険という警鐘なの? 地の利を考えれば、おじさんを連れたほうがクリアーできる確率はあがるけど……やり直しがきくのは、あたしだけだし)


「──それでも一人で行くわ」

「なっ」

「別におじさんが頼りにならないってわけじゃないの。一度見て戦略を練りたいだけ。その後、必要ならついてきてもらうわ。それとも冬織さんに言われたから気にしてるの? あんなの真に受けちゃだめ。命懸けの任務なんてやる必要はないわ」


 これで納得するだろうと花梨は思ったが、夏行は黙ったまま、じぃと花梨を見るだけだ。まっすぐな視線は心中を見透かすようで、花梨はなんだか居たたまれない。


「お前はまるで死ぬのが怖くないようだな?」

「え……こ、怖い、すごーく怖いよ。おじさんだってそうでしょ?」


 花梨の声が裏返る。夏行の目を見て答えることが出来ない。


「某に死を(いと)う権利はない。だが死は常に傍にいた。だからわかるのだが……お前は死への恐怖が妙に軽い。庭園に怖れを抱きながら矛盾していないか? 何だ? 何がお前をそう言わせる? 某の力量を懸念するだけではあるまい」


(す、鋭い……)


「言えないのか?」


 低く唸るような声で夏行が問うてくる。声だけで心が切られそうだ。


「言えないわ」

「なぜだ?」

「言いたくないからよ」

「……」


 あからさまに夏行が傷ついた顔をした。罪悪感で、花梨の心がざわめく。


「だって──」

(ゲームだもんって)


 ──言えるわけないでしょ。


 夏行にとって現実でも花梨は違うのだから、感じる恐怖が異なるのは当然だ。だから仕方ない──花梨は心の中で何度も自分に言い聞かせた。けれどすっきりしない。正しいとも思えない。心の声が囁いてくるのだ。


「お前だけ(ずる)い」と。


 夏行にとっては死地である庭園も、花梨にとってはダンジョンでしかない。その上、痛みや本当の死さえ無縁だ。


(あたしは……覚悟を決めて来たおじさんに、本当の事を知られたくないんだ)


 この世界で、花梨の味方は限りなく少ない。むしろ死を望む者のほうが多いだろう。残酷だが誰だって自分の世界や、大切な人を優先する。滅亡を呼ぶ女を擁護する方がおかしい。


 それでも夏行は花梨についてきた。それは命がけで挑む花梨に感化されたのかもしれない。だが事実を知ったらどうか? 朝堂で受けたあの冷たい視線を、夏行まで花梨にむけてくるかもしれない。


(怖い……でもちゃんと話さなきゃ、おじさんに失礼だ)


「おじさ

「すまぬ!!!」

「へ?」


とつぜん夏行に謝られ花梨は驚いた。


「お前が某を信頼できぬのは当然だ。あの夜、確証がないからと元始の巫女について説明をしなかったからな。その上、庭園まで行く羽目に……そんな者に背中を預けるなど無理というもの」

「そんなことは」


(普通、滅亡を呼ぶ女──なんて国家機密、会って間もない人に言わないし)


 言われたところで、どこの中二病かと花梨だって思う。


「これでもお前の立場を盤石にするため、冬織殿と対策は練っていたのだ。しかし選定の儀があまりにも早すぎた。婆様は好戦的なお前を見て焦ったのだろう。即座に巫女姫として取り込み、全ての危害から守ろうとなさった──けれども庭園での心労で衰えた結界では、花冠の巫女を止める事すら出来ず、あのような事に」


 夏行が悔しそうに唇を噛む。


(それで冬織さんが色々と擁護してくれたのね)


 結果、冬織のせいで庭園に行く事になったが、彼が止めなければ処刑コースだったかもしれない。貴族の大半が花梨を巫女姫とは認めず、不吉な者として見ていたのだから。


「気にしないで。本当の味方を知る、いい機会だったと思えばいいのよ」

「いい機会ってお前、その結果が庭園だぞ。楽観して言える事ではあるまいっ。だから某はっ」


(ついてきてくれたのね)


「ありがとう。ここまで来てくれて」


 夏行がギョッとした顔をする。花梨に礼を言われる理由がわからないと言った顔だ。


「なぜ礼を言う? 某は庭園行を止めれなかったのだぞ」

「それは違うわ。庭園に行くって勝手に来たのはあたし。あ、でも出産について黙ってたのは許さないから」

「……すまん。黙ってたわけではないのだが」


 夏行が言葉を濁す。


「まぁいいわ。そのかわりおじさんはあたしの味方でいてよね。別に庭園まできて命を懸けろってことではなくて……ただ、味方でいて欲しいの」

「元より味方のつもりだが?」

「わかってる。でもこの先も約束が欲しい。困ったら助言してくれて、悪い事したら叱ってくれる──そうね、あたしの花仕になってくれない?」


「……断る」


(即答された。やっぱ菖蒲さんには勝てないか)


「某は神無だぞ。それに先の約束と言われても……困る。だいたい怖くはないのか? 朝堂でも聞いただろう……?」

「ぜんぜん」


 花梨は迷いなく答えたが、夏行の反応は暗く理解に苦しむといった顔だ。


「むぅ、嫌ならいいわよ。だからって神無を理由にしなくてもいいじゃない」


 ぷぅと花梨は頬を膨らます。


「そうではない。神無は黄泉に近い存在だ。某などを花仕にしてみろ? お前に『不吉』や『死』の印象を周囲に与え、孤立をさらに招くだけだ。あの菖蒲様ですら畏怖(いふ)され、お一人で過ごすようになってしまわれたのに。椿殿の言うとおり、菖蒲様が黒獣に殺されたのも……某の『不吉』がまねいたのやもしれぬ」

「あーーーー!! 不吉、不吉って。おじさんって本当に失礼ね」

「なんだと?」

「それを言うなら、あたしは『国家滅亡級』の不吉なんですけど。『不吉』を自称するならその規模になってからしてくれない? 地味にディスられてる気がするし、配慮がなさすぎ!」

「でぃす……?」


 夏行の目が点になる。


「あと、根拠もないのに自分のせいとか言わないの!」

「しかし某などを花仕にすれば……」

「その発言も失礼。『おじさんだから』花仕にしたいの! 菖蒲さんもきっと同じ理由だわ」


 花梨の言葉に夏行が目をむく。


「……なら聞くが、お前は何故(なにゆえ)、某にこだわる? 助言なら某でなくてもよいはずだ。婆様のほうがよほど色々と知っておられる。仲間なら神力のある冬織殿に頼めばよい。人脈も優れておられる。お前にとって最大の味方となろう」

「たしかに二人は魅力的ね。でもこの世界で『守る』って断言してくれたのは、おじさんだけよ。しかも危険な庭園にまで着いて来ちゃうお人好し。こんな人はなかなかいでしょ? だから花仕にして独占したいの」

「……」


 夏行の声が上ずる。あせる夏行に反し、爆弾発言をした花梨は真顔のままだ。


「だって花守の任務でどっかに行かれたら困るもの。その点、花仕ならあたし専属の仲間だからね。どうどうと傍にいてもらえるわ。ぐふふっ、あたしってば天才」

「そういう事か……まったく」

 

 独占云々は花梨が無自覚に言っただけと夏行は理解したらしい。


「だが意外だ。そこまで信用されるとは」

「おじさんだって、山にぽ~んと現れたあたしを、信じてくれたじゃない」


 ケラケラと花梨が笑う。


「そんなことで信用するとは……まったく、お前と話すと、色々なことが馬鹿らしくなってきた」

 

 仁王の顔面すら弱弱しく見える程、夏行が頭を抱えて言う。


「おじさんが難しく考えすぎなのよ。ま、返答は庭園をクリアーした後でいいわ。おじさんだって考える時間は必要でしょ。(ぐう)でゆっくり考えといて」

「まて、さりげなく戻そうとするな。傍にいろ発言はどうした?」


 夏行に言われ、花梨の顔がすっと真顔になる。


「今回は別。一人で十分よ。全部は言えないけど……()()()()()()()()()なの。やられても痛くないし、死ぬことだってない……そういう卑怯で狡いスキルを持ってるの」

 

 バクバクと(しん)の音が花梨の鼓膜を叩いた。幻滅されたらどうしよう……そんな不安や恐怖で花梨の心が潰れそうだ。それでも花梨は嘘をつきたくなかった。自己満足にすぎないとわかっていても。


「そんな事が……」


 夏行が数歩後退する。畏怖の混じったその瞳に、花梨の心はずんと重くなった。


「あるのよ、本当に。北山の黒獣と対峙したあたしに、恐怖なんてなかったでしょう?」

「……」

「てことで庭園はあたし一人でなんとかす──っ」


 突然、花梨の足元が空を舞った。正確には夏行が花梨を抱え上げたのだ。その素早さに花梨は逃げる隙もなかった。


「ちょっとおじさん??」

「……」

 

 夏行は花梨を抱えたまま、暗闇へと足を向ける。


「放して!! 何をする気?」

「某も供に行く……」

「だめって言ったでしょ!」


 花梨は足をばたつかせ抵抗したが、無駄だった。夏行の腕は思ったより逞しく動けない。だからと決して苦しかったり痛いわけではないのだが。レベルをカンストした花梨のプライドは砂のように崩れ去った。どうやら夏行の力は花梨より相当、上のようだ。


(こうなったら……)

「きゃぁぁ~、乙女に何するの~!! へんたーい、ちかーん!」


 真面目な夏行のことだ、てっきり慌てるだろうと思ったが無駄だった。夏行が慌てたのは一瞬で、花梨と眼があった途端、あきれた顔をされ、ため息までつかれた。


「下手な演技をしおって。そもそも子猿が乙女なものか」

「ひどっ、そんな子猿の足をみて、赤くなった人は誰よ?」

「ふん、お前は想春と同じようなものだ」

「ちょ、想春君は男じゃない!!! どこが同じなのよ」


 花梨の申し立てに夏行が軽快に笑う。その顔は仁王とは程遠い──少年のようだ。


「そうだな……本当は怖いくせに強がるところが似ている」

「別に怖くなんか」

「嘘をつけ!! 一人は怖いくせに。あの夜だって泣いてただろう? 『だいすけ』やらとはぐれ、見知らぬ山にいたのだからな。たとえ死と無関係であっても孤独感や恐怖はある、違うか?」


(う……)


 核心を突かれれ花梨は黙り込んだ。


「やはりな──恥じることはない。某も冬織殿や婆様に見放され、孤独になるのが怖かった。危険な任務に体をはるのも【あの方】を助けたのも同様の理由だ。命を懸ける事でしか己の場所を守れなかった。それでも庭園だけは怖くてたまらない。菖蒲様を失った恐怖が忘れられんのだ。【あの方】を助ける時ですら、大泣きして行ったからな」


(おじさんが大泣き……想像できない)


「そこにお前は一人で行くと言う。某を死なせたくないと言ってな。だが本来一人で向かうべきは某だ。菖蒲様への贖罪(しょくざい)ならなおさら……けれど神無は浄化が出来ない。情けないがお前に(すが)るしかないのだ。お前は自分を卑怯で(ずる)いと言うが、それは某も同じ。お前の力を当てにして解決したいと思っているからな」


(もしかしてあたしが卑怯で狡いって言ったから……)


「お前の懸念はわかる。某は浄化ができん、尻ぬぐいは頼む形になるだろう。だが足手まといにはけっしてならん。菖蒲様の花仕として最後のけじめをつけさせてくれ。某を選んでくれた彼女の為にも──頼む!!」

「おじさん……」


(どうする……?)


 花梨の心音が五月蠅いほど響いた。花梨の一言で夏行の命運が決まるからだ。ゲームでも気楽に言えることじゃない。たとえ生き返るとしても、死ぬ姿を見たら花梨の心は持たないだろう。


「や、やっぱり──


《駄目だよ花梨》


──え?


《夏行を連れていくんだ。残せば彼の命は持たない。死ねば二度と戻らない。夏行は花梨、花梨は夏行、その絆を絶ってはならない。守りたいなら君と夏行は繋がっていなければならない》

 

 知った声が聞こえ、花梨は慌てて周囲を見渡した──といっても夏行に抱えられているため、後ろまでは見れない。


「どうした?」


 花梨の反応に夏行が怪訝そうな顔をする。


「大輔の声が聞こえたの。どこ? あたしは庭園の前にいるわ!! お願い返事をして‼」


 花梨は大声で叫んだ──だが何度叫んでも、返事は返ってこない。


(まただんまり? もうっ、接続障害でも許さないんだから。一人で行くつもりだったのにダメって言うし。しかもおじさんがあたしって謎なワードを残されても)


 花梨は逃げ出したくなった。物語を作った大輔に言われれば、夏行を連れていくしかない。それも失敗が許されぬという重圧つきだ。


 なぜなら大輔は明言した。()()()()()()()()()()と。


(復活不可なんて鬼畜すぎでしょ。庭園をクリアーしたら、ぶん殴ってやるんだから)


「おじさん、手を放して」


 気迫のこもった声に夏行の手が思わず緩んだ。その隙をつくように花梨は抜け出すと、しめ縄の前に立ち、先の見えぬ闇を花梨は見つめる。


「一緒に行きましょう──ただし死にそうになったら、あたしにかまわず真っ先に逃げて。それが条件よ」





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