第Ⅸ幕 先輩氏
作業服を着た先輩氏が、
「普通じゃないって、どういうことだ。リリス」
と、問い詰めるような口調で質問すると、
リリスは困ったような表情を見せながらも、
キッパリと答えた。
「私たちは『黙示録の羅刹』なのです」
「それは、反乱軍の戦闘要員なのか?」
「そうです。私たちは超能力戦士なの」
そのリリスの言葉を聞いた先輩氏は、
「お前たち反乱軍のせいで街が焼かれたんだぞ!」
そう声を荒げる。
確かに彼の言う通りだ。
僕は先輩氏から視線を外して、下を向いた。
「何人の人が死んだと思っているんだよ!」
さらに怒りの収まらない先輩氏は、
「この人殺しがッ!」
と、怒鳴り声を上げながら、
バシンッ。
僕の顔を殴りつける。
「うがぁ」
一発のパンチで地面に倒れた僕だったが、
それでも、ゆっくりと立ち上がりながら、
「殺すよ」
そう冷たい声を発して、先輩氏を脅した。
しかし、リリスが、慌てて僕を制止する。
「やめて、先輩は一般市民よ」
確かに、この先輩氏を殺したところで、
後味が悪いだけだ。それでも先輩氏は、
「何だよ、殺してみろよ」
必死に強がってみせた。
だが、彼の目は怯えていて、
僕に対して恐怖を感じているようにに見える。
だから僕は、
「消えろよ、一般市民」
そう言いながら先輩氏に背を向けた。
しかし、彼は虚勢を張って、
怒鳴るように大声を上げる。
「オイ、殺すなら、殺せよ!」
「先輩も、もう止めて下さい」
と、二人の間に入って止めるリリス。
僕は背を向けたまま、先輩氏に告げた。
「早く消えないと、本当に殺すから」
結局、その後、先輩氏は、
「このクソ野郎が‥‥」
などと、ブツブツ言いながら立ち去ったのだが、
彼に責められた僕の気持ちは複雑で、
「何なんだよ、アイツは」
やり場ない怒りを覚え、
この絵田園都市のことは、
不愉快な出来事であった。しかし、
「あの先輩氏の態度で」
一般市民が反乱軍に対して、
否定的であることは、よく判った。
そして、僕とリリスはスクーターを走らせて、
地下の居住区に戻る。
「ごめんなさいね。嫌な思いをさせて」
リリスは、やや沈んだ声で僕に謝り、
「いや、いいんだ」
僕は短い言葉で答え、
地下居住区の淀んだ空気を吸い込んだ。
「だけれど」
いったい僕は、何のために戦い、
「誰のために戦っているのだろうか」
「私たちは『黙示録の羅刹』なのよ」
そう言ったリリスの顔は美しく、そして、
どこか哀しげであった。




