第Ⅵ幕 地下神殿
駅周辺は奇跡的に焼け残っていたようだ。
夕暮れ時。太陽が西の地平に沈もうとしている。
だが辺りは静かで、人は誰もいない。
「この駅の裏手に入口があるのだよ」
そう言って車を降りたアブラハム一三九の後に、
僕とリリスは続いた。
そして一三九が鉄の扉を開けると、
地下へと向かう階段がある。
「さあ、行こう」
と、一三九は階段を降りて、
僕とリリスも地下へと下った。そこには、
「な、何なんだ、ここは?」
天井と壁は空のような青色、床は雲のような白。
幾本ものパルテノン神殿ような柱で支えられた、
大空間があり、僕は目を丸して驚いた。
「こんな場所が駅の地下にあったのか?」
この地下空間には大勢の人がいて、
中央の祭壇には、
オリンポスの神々が祀られている。さらには、
「あっ、明乃」
神々の足元に、明乃と、その両親が、
犬のように首輪をされ、鎖でつながれていた。
三人とも目隠しをされている。それを見た僕は、
「これは、どういうことだ!」
と、大声をだしてしまった。
「あの家族は裏切り者なんだ。処刑する」
そう言ったのは、
近所に住む区役所職員の初老の男性だ。
なぜ彼が、ここにいるのだろう。
僕は幼い頃から、彼のことを、よく知っていた。
「あなたはディアポリズム協会員なんですか」
「そうさ。あの裏切り者の家族も協会員だよ」
彼は、そう言ったが、
「私たち家族は、裏切り者ではない!」
叫ぶように、明乃の父親は否定する。
しかし、改めて周囲を見回すと、
ここにいる人物は近所に住む人ばかりだった。
「ここにいるのは皆、ディアポリズム協会員だよ」
と、一三九が言う。
僕は、その一三九に頭を下げて頼んだ。
「あの家族を助けて下さいよ」
「それは彼らが決める問題だ」
だが、一三九の態度は冷たい。
仕方がないので、再度、
僕は区役所職員への交渉を試みた。
「何も、処刑なんてしなくても」
「それは支部長が決めることだ」
彼は、そう答え、言葉を続ける。
「もうすぐ支部長が、ここに現れるさ」
その時、一人の男が、
この地下神殿に姿を現した。
カツン、カツン、カツン。
靴の音を響かせ、
鉄仮面を被り、トゲのついた服を着た、
(まるで北斗の拳の登場人物ジャキのような)
男は銃を片手に祭壇へと歩みを進める。
「お前たちが裏切り者か?」
「いえ、違います。支部長」
と、目隠しをされたまま明乃の父親は弁明した。
しかし、鉄仮面の支部長は銃を突きつける。
「お前たち一家は死刑だ」
そう宣言する声は、
僕には聞き覚えのある声だった。




