第Ⅴ幕 悪夢の焼け野原
焼け残った、この古いビルの周辺は、
「サイキック・シールドで守られているんだ」
と、アブラハム一三九は言った。
反乱軍の司令官である彼の言葉に、
僕は反発するように声を荒げる。
「それなら街全体を守ればいいだろう!」
「そんな広範囲には防御できないのだよ」
だからといって、
「アンタは反乱軍の拠点が助かれば良いのか」
僕は生まれ育った街を『殺戮の天使』に焼かれ、
「この状況では僕の家族や友達も無事ではない」
「我々は、人類の解放のために戦っているのだ」
「ルシファーも反乱軍も、僕には無関係だよ!」
感情的になった僕に対して、
リリスは宥めるように言葉をかけた。
「落ち着いて、もう戦いは始まっているのよ」
この時、一三九は、
司令官らしい落ち着き払った態度で、こう言う。
「我々、反乱軍はディアポリズム協会と共闘する」
ディアポリズム協会とは、
都市伝説で語られる危険な思想集団であるが、
その存在は不明で、
「ディアポリズム協会なんて、本当に有るのか?」
と、僕は疑問に思った。
「有るさ。これこら彼らの支部へ行く」
そう一三九は答えたが、
噂話で聞くディアポリズム協会は排他的であり、
また攻撃的で、利己的な集団であるらしい。
「でも、何で、ディアポリズム協会と共闘を?」
「彼らにはルシファーと戦う意思があるからだ」
と、答えた一三九は、
僕とリリスを車に乗せ、駅の方へと向かった。
「ディアポリズム協会は実は身近な存在なのだよ」
車を運転する一三九は、そう語ったが、
道路には焼け焦げた車が転がっていて、
その廃車を避けるように車は走る。
「君たちは、まだ、現実の実態を知らないのさ」
車の窓から見る、焼かれた街は、
「昨日までは、僕の日常、そのものだった」
それが今は、見渡す限りの焼け野原だ。
だが、なぜか人間の死体は見当たらなかった。
「たぶん、高温で焼かれ、消滅したのだろう」
と、一三九は言う。
それ程に『殺戮の天使』の業火は強烈だった。
「今日一日で僕の世界の全てが変わってしまった」
焼け野原は地獄絵図のようで、
この街に生きるものはなく。
ただ荒涼と静寂のなか、
全てが『時が止まった』ように静止していた。




