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コラプサーの除去

Dr.オーダのホログラムを前にリクからコラプサーを取り除く方法を模索していた。

カイの瞳が鋭く光を放つ。

覚醒した「魂為眼こんいがん」――

それは、存在の奥深くに宿る“魂のかたち”を見る力。


見えたのは、二重に重なった魂。

中心に、いつものリクのもの。そしてそれを外側から螺旋のように締めつける黒い影――コラプサー。


「……おまえが……リクを……!」


カイは拳を握る。だが、そこに迷いが生まれる。


(リクを傷つけずに、この“外殻”だけを破る術は……俺には、ない)


「くそ……!」


攻撃すれば、リクを巻き込む。

しかし手をこまねいていれば、コラプサーは完全にリクの精神を侵食する。


エルナやノクスが遠巻きに見守る中、カイはひとりリクに近づいた。

コラプサーの黒い膜のような魔力が、周囲に冷気を発している。


「……俺にできるのは、“見抜くこと”だけかよ……!」


怒りと悔しさが混ざった声。

それでも、彼は歩みを止めない。


(リク。……お前は俺に、力をくれた。仲間として、背中を預けてくれた。

なら今度は……俺が、お前を信じる番だ)


カイは、静かに手を伸ばした。

拳ではなく、魂為眼でリクの魂を呼びかけるという唯一の術で――


「リク……聞こえるか。

お前の中に、まだ“お前”が残ってる。

コラプサーなんかに、お前の魂をやらせるかよ!」


その時、リクの黒い外殻が、ほんのわずかに揺れた。


魂為眼に映る“リクの魂”が、かすかに光った――


(……まだ、届く……!)


しかしその一瞬後、空間に再び異変が走る。


「――無駄な行為だ」


どこからともなく聞こえるDr.オーダの声。


「魂為眼――面白い力だが、構造を破壊できぬのならば、やがて君も飲まれる」


そして黒い殻が、さらに強くリクを包み込むように再収縮する。


カイは歯を食いしばる。


「くそっ……誰か……誰か、“壊せる手”を――!」


だがその瞬間、カイの背後で何かが光った。


──ノクスの手に、一冊の魔導書が浮かび上がる。


「壊す手はない。だが、つなぎとめる“知恵”なら、あるかもしれない」


選択


「壊す手はない。だが、つなぎとめる“知恵”ならあるかもしれない」


ノクスは、冷静な口調でそう言いながら、懐から一冊の黒革の魔導書を取り出した。

表紙には、古代文字で《記録の書庫:セフィラⅢ》と記されている。


「これは……かつて“神格存在の封印”に使われた儀式の記録。

完全な除去はできなくとも、“魂と寄生体の繋がり”を一時断ち切ることが可能なはず」


エルナが不安げに問う。


「でもそれって……本当に成功するの?」


ノクスは、一度だけ苦笑を浮かべた。


「成功率は三割以下……だが、今ここでリクを見捨てる理由が、僕にはない」


その言葉に、カイは迷いのない目を向けた。


「やってくれ、ノクス。俺がリクを抑える」


ノクスは無言でうなずくと、魔導書のページを広げ、詠唱を始めた。


■ 詠唱魔術:記憶律動陣エルグ・リーメン

空間に薄く幾何学の陣が描かれる。

それはリクの魂の“記録された共鳴波形”に干渉する、知識と魔力の融合術。


「リクの魂を、かつての形に“再定義”する――!」


蒼白い魔力がリクを包み、黒いコラプサーの殻に触れる。

“記録”と“現在”の乖離が生じ、歪んだ共鳴が発生。


「……ノイズを逆位相で中和……あと数秒……!」


しかし、コラプサーも黙ってはいない。

寄生体がリクの身体から禍々しい触手状の影を伸ばし、ノクスへと襲いかかる――!


「ノクス、下がれっ!」


カイが前に出るが、その瞬間――


「大丈夫、見えてる」


ノクスは瞬時に、知識に基づいた【魔力干渉式・転移ルート】を利用し、回避。

続けざまに、コラプサーの波動を逆照射する魔術を詠唱。


「《逆映術式・魂脈反響》! ――“おまえの場所”を、魂から追い出す!」


陣がリクの胸部へと収束し、爆ぜた。


断末魔のような異音を発しながら、コラプサーの黒影がわずかに霧散していく。


リクの体が揺れ、口元から黒い靄が抜け出して消えた。


静寂。

そして、地面に倒れ込むリク。


「……間に合った、か?」


ノクスが肩で息をしながら、確認する。


カイがそっとリクを抱き起こし、その瞳を見る。


「……カイ?」


「戻ったな、リク」


ノクスが、安堵の息をついた。


「……これで“第一段階の侵食”は止めた。だが、完全に取り除いたわけじゃない」


ノクスは振り返り、沈んだ声で告げる。


「あれは……もっと根深い。魂の底にまで、爪を立てている」






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