最悪の事態
エルナの弓が生んだ“魔力干渉”は、敵に混乱と遅滞をもたらし、
それを見逃さなかったリクとの迅速な連携が、戦況を掌握していた。
「……数は多かったけど、質はあのときより落ちる。偵察か、陽動か……」
リクが敵兵の装備を確かめながら、眉をひそめた。
リクは剣を肩に担ぎ、エルナに目を向ける。
「お前、さっき……マジで良かったぞ。矢の軌道、ブレてなかった」
エルナは照れたように頬を赤らめたが、すぐに真顔になる。
「……でも、今はまだ、リクやカイみたいには動けない。
矢一本であれだけ魔力を使ったのに、全然足りてない気がして……」
リクがうなずく。
「その実感があるだけで、成長してる。今の弓は“共鳴”する。
君が想えば、もっと遠く、もっと深く、力は応えるようになる」
「……うん」
エルナはそっと、蒼光を宿した弓を見つめた。
その中心には、微かに鼓動のような光が脈打っていた。
「ドオオオオオオン」「ガキイイイン」
大きな爆発音や金属音が聞こえた
「…急いでカイと合流しよう。」
その頃、カイはリクの創造したスキルを持つ剣で戦っていた。
「天敵にはそんなもんか?」
「この…!」■ 必殺魔法発動:《虚無穿ち(エクリプス・ブレイカー)》
カイに向かって放たれる。焦りで狙いが満足に定まっていない。
「これで終いだっ!」
カイの剣が振り下ろされた瞬間、黒衣の見覚えのある男がカイにピンポイントで闇魔法を放った。
「ぐああああっ」
カイは爆発に巻き込まれる。剣が破損したのか?金属の鈍い音も聞こえた。
「お前は…ヴィクトール…」
「リリスの任務を引き継ぐ。下がってろ。」
カイは立ち上がる。自分がやられて、リクとエルナが一騎打ちになることだけは避けたい。
一瞬の沈黙のあと、両者が同時に飛び出す。
──カイの剣、《ファング・バスター》が閃光を放つ。
重力を纏った剣速は、視認を許さぬ凶刃と化し、ヴィクトールへと斬りかかる。
■ カイの剣スキル発動:《グラビティ・クロス》
カイの剣技。重力場を発生させる斬撃で、相手の動きを鈍らせつつ、対象の防御を圧し折る。
「……消去」
ヴィクトールはその剣を、ただ横一文字に振るう。
■ スキル発動:《コード・ブレイカー:断層解》
コードの本質を破壊する、“否定”の剣撃。 物理と魔法、あらゆる干渉に“意味”を与えない最終干渉。
──斬撃と斬撃が交差した。
空気が裂け、金属音が爆ぜる。
重力の刃と存在を断つ黒刃のぶつかり合い——
その均衡が、崩れた。
「……っ!!」
カイの剣、《ファング・バスター》の刀身が根本から砕けた。
砕け飛ぶ破片、反動で吹き飛ばされ、背中を壁に打ちつけるカイ。
「ぐっ……!」
血を吐き、膝をつき、それでもカイは立ち上がろうとする。
「これで終わりだと……思うなよ……」
しかし、ヴィクトールの姿はすでに目前に迫っていた。
「反撃能力:ゼロ。処理継続」
無慈悲に突きつけられる刃。
──もはや、立ち上がる力もない。
カイの視界が、暗転していく。
「……ちくしょう……リク……間に合えよ……」




