エルナとの再会
リリスの猛攻をカイが必死に受け止めている間に、リクは静かに手をかざしていた。
(エルナを助ける……この場を抜けるには、“囮”がいる──)
リクの指先に、淡い光が灯る。
■ 創造スキル:《シャドウ・ミラージュ》
──「自身の分身」を作り出す。
本体の意識を切り離して行動できる、完全なデコイ。
蒼い光が凝縮し、リクと同じ姿をした分身が立ち上がった。
「行け──俺の影!」
リクの声と共に、分身がリリスに向かって駆けだす。
その気配は本物と見紛うほどリアルだ。 リリスもわずかに目を細めた。
「また、トリック……!」
分身リクがリリスの前で剣を抜き、猛然と斬りかかる!
リリスは即座に手錠を操り、分身を縛ろうとする。
(──今だ!!)
本物のリクはその間に、影に紛れてすばやく側面へと回り込んだ。
カイが吠える。
「リク、任せた!!こっちは俺が止める!!」
リクはカイに一瞬だけ視線を送ると、すぐに戦場を抜け出す。
(待ってろ、エルナ──今、助けに行くからな!!)
◆
飛行艇の奥深く、エルナは拘束されたまま、魔力封印結界に囚われていた。
心細げに、膝を抱えて震えている。
そのとき——
「エルナ!」
聞き慣れた声が、闇を裂いた。
目を見開くエルナ。
そこに飛び込んできたのは、必死に走るリクの姿だった。
「リク……っ!」
涙ぐみそうになりながら、エルナは声を震わせる。
リクは迷わず駆け寄り、封印の結界を解析する。
(急がなきゃ……リリスが気づく前に!)
リクは右手を結界に当て、再びスキルを紡ぐ。
■ 創造スキル:《コード・ディスアーム》
──異なる規格の魔法式を解析・無効化する、対魔封印破壊スキル。
青白い光が閃き、結界が音もなく霧散した。
エルナの手錠も外れ、自由になる。
「エルナ、立てるか!?」
リクが差し伸べた手を、エルナは小さな手で強く握った。
「……うん!!」
ふたりの心が、再び強く繋がる。
◆
だが──飛行艇全体に警報が鳴り響く。
リリスたちに、リクの動きが察知された!
飛行艇内部に、新たな敵影が殺到してくる!!
リクはエルナの手を握ったまま、決意を込めて叫んだ。
「絶対に、守る……!!
ここから一緒に、脱出するんだ!!」
「……今のままじゃ、また迷惑をかけるだけかも……」
その声を聞いたリクは、静かに一歩踏み出した。
「なら、変わればいい。君自身の意志で、今ここで」
そう言うと、彼の手から光が溢れた。
■ 創造スキル:《コード・ギフト:アーク・レゾナンス》
生まれたのは、白銀と蒼光が織り交ざる、美しい弓だった。
「これは“共鳴する弓”。使い手の感情に応じて、放つ矢が効果を変える。
いまの君には、“弱体化”の力が最も合っていると思った。命中すれば、相手の魔力を乱し、動きを鈍らせる」
エルナは、手を伸ばすのを一瞬ためらった。だが、リクのまっすぐな視線に押され、そっと弓を取った。
「それと――この弓には、もう一つ“切り札”がある。
でも、それは……今の君にはまだ、重すぎる」
「……?」
「“ルミナ・エクリプス”。君の強い想いを矢に変え、敵を貫く必殺技。
だが一度使えば、魔力はすべて消耗し、数日は戦えなくなる。
今は……まだ撃つ時じゃない。準備が整った時だけ、選べばいい」
その言葉に、エルナは目を見開き、ゆっくりうなずいた。
「……うん。ありがとう、リク」
直後、警報が鳴り響く。
敵兵の小隊が接近してきていた。
「来たな……!」
リクが武器を構え、カイが背後を固める。
エルナも、震える指で弓を引く。
「……行ける。今のわたしでも、きっと……!」
魔力の矢が放たれる。
■ 効果:《スキル封印》《反応鈍化》
命中した敵兵が苦しげに叫ぶ。
「な、なんだ……体が……思うように動かねぇ……!」
リクとカイがその隙を突き、前線を一気に押し上げる。
エルナの表情が、わずかに強さを帯びていた。
だが――まだ“ルミナ・エクリプス”を使うことはない。
その力は、彼女の覚悟が定まるまで、封印されたまま。




