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スキル封じの天敵



虚無の魔法が一旦収まったかのように見えた瞬間――

リリスは、腰の後ろから“銀黒の鎖”を抜き取った。


カチャンッ……と、鈍く冷たい金属音が空気を裂く。


それは――手錠。

だが、ただの拘束具ではなかった。


リリスがその鎖を振るうと、まるで意志を持つようにうねり、空間そのものを裂いた。


「これは……!」


カイが目を見開いた。


■ 武装スキル:《黒鎖魔縛コルヴィス・ギア

──接触した対象の魔力流動を封じ、連鎖的に“スキル発動”を妨害する特級拘束具。

元は拷問官が使用していた魔術器具を、リリスが再構築・昇華した。


リリスは妖艶に微笑みながら、手錠の片輪を空中に投げる。


「逃げられると思って? …これは“服従の鎖”。

意識がある限り、何度でも追いかけて縛るのよ。」


手錠は空間を滑り、光の速さでリクの手首を狙ってきた。


「くっ!」


リクが回避しようとするが、手錠の鎖は「予測行動」に合わせて軌道を変える魔術式が埋め込まれている。


バシィッ!!


かろうじて受け止めたカイの剣に、手錠の鎖が巻き付き――一瞬で魔力が流れなくなった!


「ぐっ……腕が……!」


「それ以上、“剣士”として動かれると困るわね」


リリスがもう一対の手錠を振るう。


バンッ!! 鎖が地を砕き、杭のように地面を封じる。


リリスは、まるで踊るように鎖を操り、敵の動きと魔力回路を封殺する立ち回りに入った。


「これはただの拘束じゃない……!

“戦う資格”そのものを削ぎ取る道具……!」


リクは焦りながらも、リリスの“武器”が象徴するものに気付いた。


(……あの手錠は、“相手の能力を封じる”ために設計されてる。

力を持った者ほど……逆に縛られる!)


もはや、リリスの周囲は一種の“結界”になっていた。


魔術的に進化した拘束具で、あらゆる力を封じる――

それが、黒の魔導士リリスの真の戦い方だった


リリスの《黒鎖魔縛コルヴィス・ギア》に囚われ、剣から魔力の流れを断たれたカイ。

だが次の瞬間、リリスの妖艶な笑みがわずかに揺らいだ。


カイは――まったく動じていなかった。


「……あれ?スキルが封じられた、のよね?」


リリスが疑問を口にする。


それに対してカイは、にやりと笑った。


「スキルが使えなくなったって?

――最初から、そんなもん持ってねぇよ。」


豪快な一撃。

カイは、魔力など一切使わず、純粋な膂力だけで大剣を振り抜いた!


ズドォン!!!


大地が抉れ、リリスの足元を激しくえぐる。


リリスが咄嗟に飛び退く。


(……なにこれ!?スキル無しで、ここまでの破壊力……!?)


リクもカイに続き叫ぶ。


「カイはな、スキルがないからこそ、純粋な“肉体”だけ鍛え上げた男だ!

スキルに頼らないから、封じられても関係ないんだ!!」


リリスの眉が険しくなる。


「ふふ……面白いじゃない。

けど、肉体だけで、どこまで抗えるかしら?」


リリスは再び手錠を操り、カイの四肢を狙ってきた。

だがカイは、肉体の反射神経だけで鎖を弾き、かわし、踏み込み続ける!


「俺は……“スキルがないから負ける”なんて、ガキみてぇな言い訳はしねぇ!!」


吠えるように叫ぶカイ。


リリスの顔に、久しぶりに「警戒」の色が浮かんだ。


彼女が対処してきた敵たちは、みな強大なスキルや魔法に頼っていた。

スキルを封じれば、たやすく折れた。


だが――

“元から頼っていない者”には、封じる意味がない。


(……この男は、私が想定した“恐怖”とは別種……!)


リリスの心に、わずかな動揺が走った。


その隙を見逃さず、リクが叫ぶ!


「今だ、カイ!!押し込め!!」


カイが巨体をぶつけるように突進し、リリスを後退させる!


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