戦いの火蓋は切って落とされた
飛行艇の上空。
夜の静寂を裂くように、二つの影が空へと跳躍した。
リクとカイだ。
重力スキルによって大気の抵抗を最小限に抑え、彼らは矢のような軌跡で飛行艇を目指す。
だが——
「……来たわね」
飛行艇の艦橋で、リリスが微笑んだ。
彼女の足元に展開された、特殊な感知結界が、淡く赤い光を灯している。
■ スキル発動:《コード・サーチャー》
──空間に発生する異常な「魔力の歪み」や「法則の揺らぎ」を検知する探知結界。
特に、未登録コードや危険度S級スキルに敏感に反応する。
リリスは指を鳴らした。
「空間重力に異常波動。感知精度……99%。対象、リク=フォルナおよび随伴者一名」
「重力場……やっぱり、真似したか」
横に控えるヴィクトールが、冷たく言う。
「ええ。でも無駄よ。
“重力の歪み”は、空間に長く残るわ。……隠密行動には向かないの」
リリスは扇子を口元にあてて、妖しく微笑む。
「それに……もう、逃げ道はないわ」
彼女の周囲では、すでに無数の魔法陣が準備されていた。
対空砲火型魔法結界。
そして、捕獲用結界。
「来るなら来なさい、リク=フォルナ」
リリスの瞳が、妖しく輝く。
「あなたたちを捕らえるために……この天空は、すでに檻になったのだから」
◆
その頃、リクとカイは、飛行艇の影まで到達していた。
だが、リクの額に、汗が滲む。
(……まずい。……気づかれてる)
空気の密度、魔力の流れ、微細な振動。
それらが、異様な重さを帯びていた。
「リク」
隣でカイも、険しい顔で呟く。
「……上、もう仕掛けられてる。罠だ」
「……だろうな」
リクは、重力スキルを解いた。
二人の体重が戻り、再び大地へと引き寄せられる。
だが、その直前——リクは鋭くカイに言った。
「今から、二手に分かれる。
俺が囮になる。カイ、お前は別ルートから回り込んでくれ!」
「何……!」
カイが反射的に反対しかけたが、リクの目がそれを制した。
「……エルナを救うためだ。頼む」
「……っ」
カイは歯を食いしばり、うなずいた。
そして二人は、飛行艇に向けて別々の軌道で突入した。
だが、リリスたちはすでに——
彼らを迎え撃つ準備を終えていた。
空が、黒く蠢く。
次の瞬間、無数の雷光と重力弾が、リクたちを包囲しようとしていた。




