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戦いの火蓋は切って落とされた

飛行艇ヴァルキュリアの上空。

夜の静寂を裂くように、二つの影が空へと跳躍した。


リクとカイだ。


重力スキルによって大気の抵抗を最小限に抑え、彼らは矢のような軌跡で飛行艇を目指す。


だが——


「……来たわね」


飛行艇の艦橋で、リリスが微笑んだ。


彼女の足元に展開された、特殊な感知結界コード・サーチャーが、淡く赤い光を灯している。


■ スキル発動:《コード・サーチャー》


──空間に発生する異常な「魔力の歪み」や「法則の揺らぎ」を検知する探知結界。

特に、未登録コードや危険度S級スキルに敏感に反応する。


リリスは指を鳴らした。


「空間重力に異常波動。感知精度……99%。対象、リク=フォルナおよび随伴者一名」


「重力場……やっぱり、真似したか」

横に控えるヴィクトールが、冷たく言う。


「ええ。でも無駄よ。

“重力の歪み”は、空間に長く残るわ。……隠密行動には向かないの」


リリスは扇子を口元にあてて、妖しく微笑む。


「それに……もう、逃げ道はないわ」


彼女の周囲では、すでに無数の魔法陣が準備されていた。


対空砲火型魔法結界アビス・レーザー

そして、捕獲用結界グラビティ・ケージ


「来るなら来なさい、リク=フォルナ」


リリスの瞳が、妖しく輝く。


「あなたたちを捕らえるために……この天空そらは、すでに檻になったのだから」



その頃、リクとカイは、飛行艇の影まで到達していた。


だが、リクの額に、汗が滲む。


(……まずい。……気づかれてる)


空気の密度、魔力の流れ、微細な振動。


それらが、異様な重さを帯びていた。


「リク」


隣でカイも、険しい顔で呟く。


「……あそこ、もう仕掛けられてる。罠だ」


「……だろうな」


リクは、重力スキルを解いた。


二人の体重が戻り、再び大地へと引き寄せられる。


だが、その直前——リクは鋭くカイに言った。


「今から、二手に分かれる。

俺が囮になる。カイ、お前は別ルートから回り込んでくれ!」


「何……!」


カイが反射的に反対しかけたが、リクの目がそれを制した。


「……エルナを救うためだ。頼む」


「……っ」


カイは歯を食いしばり、うなずいた。


そして二人は、飛行艇に向けて別々の軌道で突入した。


だが、リリスたちはすでに——

彼らを迎え撃つ準備を終えていた。


空が、黒く蠢く。


次の瞬間、無数の雷光と重力弾が、リクたちを包囲しようとしていた。

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