リク達の策謀!
森の奥。
隠れ家にした廃屋の中、リクとカイは粗末な地図を囲んでいた。
そこには、空を移動する巨大飛行艇の航路が赤線で記されている。
「……間違いない。エルナはあの飛行艇にいる」
リクは、静かに言った。
エルナとの心の繋がり。
かすかな感応波から、彼女の位置を割り出すことに成功していた。
だが、問題は——
「飛行艇は、高度数千メートル……。しかも、対空障壁を張ってる。
この状態じゃ、普通に近づくこともできねえ」
カイが苦い顔で呟く。
リクも歯を食いしばった。
(今の俺たちの火力じゃ、飛行艇を撃ち落とすなんて無理だ。
それに、エルナが乗ってるんだ。下手な攻撃はできない……)
一瞬でも判断を誤れば、エルナを巻き込むことになる。
沈黙が支配する。
その中で——カイが、ふっと笑った。
「なあ、リク。
……重力だ。使えねえか?」
リクは、目を見開いた。
「重力……?」
「ああ。お前、こないだ喰らったあの《重力魔法》……
試してたろ? まだ完全には再現できねぇかもしれねぇけど、
“自分たちの重力を減らす”くらいならできるんじゃねぇのか?」
「……!」
リクの脳裏に、閃光のようにビジョンが走る。
確かに、重力の再現実験では失敗が多かった。
だが、“自分たち自身の重量を操作する”だけなら、精密な制御は必要ない。
成功率は……五分五分。
だが、もしできれば——
「……飛行艇まで、跳躍できる……!」
リクが呟いた。
普通なら到底届かない距離。
だが、重力を大幅に軽減し、地上から超高跳躍すれば……理論上、不可能じゃない。
「カイ、お前……」
リクは笑った。
無謀だ。
無茶だ。
だけど、今の自分たちにできる唯一の可能性。
「いいだろう。……賭けるしかないな!」
二人の拳が、軽くぶつかり合う。
バチン、と乾いた音が森に響いた。
リクはすぐさま集中を始めた。
右手を掲げ、精神を研ぎ澄ます。
「創るッ……!」
■ スキル創造:《グラビティ・フィールズ》
──周囲半径数メートル内の重力を一時的に制御する、限定型重力場。
蒼白い魔法陣が、リクとカイの足元に広がった。
ふわり、と体が軽くなる感覚。
「うおっ……!」
カイが軽くジャンプしただけで、三メートルほど跳び上がった。
リクも膝を曲げるだけで、まるで羽のように体が浮き上がる。
「よし……いける!」
リクは確信した。
だが、それと同時に——
背筋を冷たい予感が撫でる。
(リリスたちが、何も準備してないわけない……)
相手は《オーダ・セラフィム》本部直属の監視官たち。
飛行艇に近づけば、必ず“罠”が待っている。
それでも。
「……行こう、カイ」
リクは、真っ直ぐに前を見据えた。
「エルナを……必ず、取り戻す!」
「当然だ!」
二人は、夜空に向かって駆け出す。
彼らの身体は、重力を超え——天空の戦場へと、跳躍していった!
──戦いの火蓋は、静かに、だが確実に切って落とされた。




