姉妹戦
姉妹たちが“本気”を見せ始めた瞬間。
空気が、まるで凍りつくような圧力に変わった。
リクもカイも、反射的に身構える。
リュシアの鉄槌には、周囲の重力を数倍に増幅する《グラヴィ・フィールド》が纏われ、
ミゼットの身体は、もはや残像すら捉えられない速度にまで至っていた。
カイが唇を噛む。
(……速すぎる。受けきれねぇ)
リクも、創った即席の武器が耐えきれないと悟る。
(カイも全力だ。俺も限界近い……!)
そんな中、エルナはぎゅっと胸元を握りしめた。
(このままじゃ、ダメだ……)
──私が、
──みんなを、“繋ぐ”しかない。
エルナは、静かに覚悟を決めた。
「リク。私に、力を貸して」
リクは驚きながらもうなずいた。
「いいよ! どんなスキルを創ればいい!?」
エルナの瞳は、迷いなくリクを見つめていた。
「わたしの心を……みんなに“リンク”させるスキルを」
リクは即座に理解する。
(エルナが感じ取る“感情”を、俺たちにも共有する……!?)
それなら──敵の不安、怒り、恐れ──全てが見える。
リクは右手をかざし、魂を削りながらスキルを紡ぐ。
■ スキル創造:《リンク・ブレイン》
──【感情共振】
一時的にチームメンバーの感覚をリンクし、感情・敵意・思考の波を共有する。
完成と同時、リクはエルナにその力を託した。
「頼んだ、エルナ!」
エルナは、胸元に手を当て、静かに呟いた。
「……みんな、わたしと繋がって」
──発動。
リクとカイの視界が、一瞬にして広がった。
感じる。
リュシアの、膨れ上がる暴力衝動。
ミゼットの、かすかな焦りと苛立ち。
そして、次の動きすら──!
「カイ、左から来る!」
「リク、下!」
互いに叫び、呼吸を合わせる。
二人はまるで一つの生命体のように動き始めた。
リクが地面の金属片を素材に《スキル生成:イグナイト・スピア》を形成し、ミゼットの軌道を遮断する!
カイが剣を閃かせ、リュシアの鉄槌を跳ね上げる!
エルナが後方支援に回り、敵の微細な動揺を読み取って仲間に伝える!
──戦況が、逆転した。
ミゼットが舌打ちする。
「なんだよ、こいつら……連携が異常だろ!」
リュシアも顔をしかめた。
「クソガキどもが……!」
リクは叫んだ。
「エルナのおかげだ!
お前たちの“心”が、全部見えてるんだ!」
エルナは、静かに前へ進み出た。
「あなたたち、怯えてる……。
私たちの未来に、怖れてる……!」
リュシアが怒鳴り返す。
「黙れええッ!!」
重力を纏った鉄槌がエルナに迫る。
しかし──
「させねぇ!」
カイが瞬時に割り込み、剣で鉄槌を受け止めた。
ズンッ!!!
大地が揺れる。
カイの腕が震える。しかし、踏みとどまった。
「今だ、リク!」
リクは叫びながらスキルを発動。
《スキル生成:ソウル・チェーン》
──魂に触れる鎖。
敵の精神の隙を捕らえ、動きを束縛する特殊スキル。
鎖が閃き、リュシアとミゼットを一瞬、捕らえた。
動きが止まる。
その間隙を、カイが跳び、リクがナイフを構えた。
エルナもまた、祈るように手を組む。
(……わたしが繋いだ。
だから、きっと勝てる──!)
三人の一撃が、姉妹を圧倒した。
◆
──数分後。
断罪の姉妹は、地に伏していた。
「ちくしょう……ガキどもが……」
リュシアが呻く。
ミゼットも、倒れたまま動けない。
カイは剣を肩に担ぎ、息を吐いた。
「……やっと倒れたか」
リクもぐったりと腰を下ろす。
「……エルナが、いなかったら無理だった」
エルナは静かに笑った。
「ううん……わたしも、みんながいたからできたよ」
──彼らは気づいていなかった。
彼らを見る闇深き人影に。




