大合流
「久しぶりだね」と俺が言うと香は泣きそうになった。
「ハヤテ、また会えた…………本当に、本当に良かった、です。……リザちゃん、ちょっとそこ退いてくれませんか? 私がハヤテに抱き着きたいんですけど?」
香はリザを引き剥がそうとする。
「うるざい…………」
「良いじゃないですか、リザちゃんはずっとハヤテと一緒…………って、えっ、どうしたんですか!? リザちゃん、なんで大泣きしているんですか!? それにハヤテも凄い怪我……って、えっ!? フィールレイ!? なんでここに!?」
「こんなに騒がしい奴だったのか。安心しろ、今は味方だ」
フィールレイが戸惑っていた。
「味方? 一体どういうことですか!? もしかして、フィールレイもハヤテを!?」
「安心しろ。私は別にハヤテをお前たちのようには見ていない。私が好きなのはアイラだ。元々はアイラを追いかけてここまで来た」
「んっ? えっ!? それはそれでどういうことですか!?」
香は混乱しているようだった。
「細かいことは後じゃ」とアイラが言う。
「全然、細かくないんですけど!?」
「このシリアスブレイカー、こんな状況なのに元気な奴だ」
リザは笑う。
少しだけいつもの調子に戻った。
「状況は全く分かりません。でもあの化け物を倒せば、一件落着、それでいいんですよね?」
香は戦う気のようだが、俺たちはボロボロだ。
「頼もしいけど、いくら君でもさすがに……」
「私だけじゃないですよ。ハヤテには頼もしい仲間がいるじゃないですか」
香は笑う。
船が地上に降りて来た。
その船から四つの人影が飛び降りる。
「まったく、香は無茶なことをするな」と呆れるローラン。
「まぁ、香さんらしいですね」と苦笑するシャル。
「僕、香と少し一緒にいてわかりました。香って馬鹿なんですね」と辛辣な言葉を使うディアス君。
「私はタオグナの観光に来たつもりなのに、なんでこうなるの……」と愚痴を言うリスネさん。
四人が俺たちの前に着地する。
「なんでみんなここに!?」
さすがに驚く。
「なんで、って私が言いたいわよ。なんでフィールレイ……さんがここにいるのかしら? 言いたいことも、説明したいことも、話してもらいこともたくさんあるわ。でもまずは目の前にことを片付けないといけないじゃない?」
「みんな……」
久しぶりだ。
こんな状況じゃなかったら、どこかの酒場にでも入って色々と話したい。
「おい、ディアス、おぬしの師匠はどこじゃ?」
アイラは自分の両角を両手で押さえていた。
ドラズさんと初対面でいきなり角を折られたことがある。
(※第84部分『再び、ドワーフの村へ』参照)
「安心してください。師匠はいません」
それを聞いたアイラは「本当じゃろうな」と言い、警戒を解く。
「さてと私としては観光がしたいんだけど、あの化け物がいたら、ゆっくりしていられないわね。『解析魔法』術式発動」
リスネさんが魔法を発動させる。
レイドア攻防戦の後に知ったのだが、リスネさんは探索・探知・解析魔法の熟練者らしい。
いくつかの国から誘いがあったほど優秀なんだ、とローランが言っていた。
「なるほどね……厄介な結界ね」
「あの結界は儂やフィールレイが攻撃してもすぐに再生する」
アイラが説明する。
「でも、欠点はあるわ」
リスネさんが手を翳すと現在のアンペンダープそっくりの小型映像が出現する。
「あの化け物には五重の結界が張られている。魔法以外はすり抜けるけど、魔法を使わないとあの化け物には攻撃が通じないでしょうね。アイラさんの言う通り、結界はすぐに修復されるわ。でも、五番目の結界、一番内側の結界は壊せば、一時的にだけど全ての結界が無効化される」
「本当かい?」
言った後にリントブルムが内側から結界を破壊した時、全ての結界が消滅したのを思い出した。
「でも、私が矢で貫通した時、結界は消滅しなかったぞ」
リザが言う。
「多分それは欠損が少なかったからよ。それなりに壊す必要があるわ。五重の結界は独立しているわけじゃない。一番内側の結界が動力になっているの」
「だとしても、全ての結界を壊すのは難しいぞ。あの結界はすぐに再生する」
リザが説明する。
「方法はないこともないわ。でも、難しいと思う。みんなの力が必要よ」
リスネさんは俺を見た。
「……みんな、俺はさっき、ミスをしたんだ。俺一人が頑張って、あの化け物を倒そうとした。でも、それは出来なくて、死にかけて……俺は一人じゃ何もできない。だから、力を貸して欲しい」
その場の全員が顔を見合わせ、そして、笑った。
「当たり前じゃないですか。力を貸しますよ!」と香が言う。
「作戦を聞いてからでもいいんじゃないか? まぁ、その上で私は断らないがな」とローランが続いた。
「国は違えど、民衆を守りたいです。それが私の気持ちです」とシャル。
「僕は……流されてここまで来ましたし、成り行きに任せますよ」とディアス君は苦笑いを浮かべた。
「やられたままでは終われんの」とアイラ。
「アイラがやるなら私もやる」とフィールレイ。
「…………」
リザだけは即答しなかった。
「リザ、俺は…………」
「どうせ、ハヤテは私が止めても無駄だ」
リザは怒っているようだった。
「それは……ごめん……」
それを聞くとリザは溜息をついた。
「それがハヤテだ。だけど、もう一人で戦うな。みんなで戦う。ハヤテにはこれだけの仲間がいるんだ」
「そうだな。みんなで勝とう。リスネさん、作戦を教えてくれないかい?」
「まったく作戦を聞く前に全員がやる気になるなんてね」
リスネさんは苦笑し、立体映像で説明を始めた。




