窮地
リントブルムの召喚に失敗した。
一体どういうことだ?
いや、考えるのは後だ。
リントブルムが駄目なら他のモンスターを……
「ハヤテ、逃げろ!!!」
アイラの叫び声がした。
ハッとし、上を見るとさっきまで軍勢に向いていたアンペンダープの視線が俺に向いている。
しまった!
俺は逃げた。
何とかアイラの所にまで……
「ニン……ゲン……フゼイ……ガ……」
しかし、それは叶わなかった。
俺はアンペンダープの右手に摑まってしまった。
どうにか逃げようとするが、とんでもない力でどうすることも出来ない。
「ナニヲ……タクランデ……イタ……?」
アンペンダープが右手に力を入れる。
体を軋むのを感じた。
アンペンダープの様子がおかしい。
自我を失いかけているようだ
「おい、ハヤテを離さんか!!」
アイラが叫んだ。
「リュウジン……コノオトコ……タイセツカ……?」
アイラとフィールレイはどうにか結界を破壊しようとしているが、五重の結界に阻まれる。
「おい、ハヤテに何かしてみろ。儂がおぬしを殺す!」
「ナニカ……トハ……コウイウコトカ……?」
アンペンダープはさらに俺を強く握りしめた。
「ぐっ……」
どこの骨か分からないが、折れる音がした。
それに体中が痺れて感覚がない。
「貴様……止めろと言っているのが分からぬか!」
アイラは怒り狂っていた。
ありったけの力を結界へぶつける。
「ニンゲン……ゴトキニ……ナニヲ……アツクナル……?」
これはいよいよヤバいな。
「アイラ、後のことを……リザを頼む……!」
叫ぶと胸がとても痛かった。
どうも肋骨が折れているらしい。
「馬鹿なこと言うな!」
アイラの叫びも空しくアンペンダープは俺を自分の口へ近づけた。
まさか俺を食うつもりなのかよ!
自分がどう死ぬかなんて考えていなかったが、まさか食われるとは想像していなかった。
あと少しで飲み込まれると思った。
「グ…………!?」
アンペンダープの頭に何かが直撃する。
あれはリザの矢か!?
でも、どうやって?
それは恐らく、リザだからこそ出来る芸当だろう。
結界のまったく同じ場所へ瞬時に複数本の矢を打ち込んだんだ。
遠くにいるはずのリザの顔が良く見えた。
俺はあんなリザの顔を見たことがない。
リザの言うことを聞かなかった俺に対する怒り。
止めることの出来なかった後悔。
俺を死なせたくない執念。
俺を失うことに対する恐怖。
様々な感情がリザの顔に現れていた。
「コザカシイ……エルフダ……!」
アンペンダープは魔力の塊をリザに向けて投げつけた。
リザの周囲で爆発が広がる。
おい、あそこにはナターシャやパトラティアもいたんだぞ!
「お前よくも……」
アンペンダープを睨みつける。
「ナンダ……ナカマガ……ヤラレテ……オコッテ……イルノカ……? アンシンシロ……オマエモ……スグニシヌ……」
アンペンダープは再び俺を口元へ運んだ。
アイラとフィールレイは必死に結界を破ろうとしているが、どうも無理そうだ。
ごめんリザ、君の言うことをもっと聞くべきだった。
アンペンダープが手を離す。
その瞬間、俺の体は落下する。
召喚盤でモンスターを召喚しようとしたが、右腕が痺れて動かない。
「駄目か……」
周りが真っ暗になる。
俺はアンペンダープに飲み込まれてしまった。




