リザ、全てを投げ出す
今回の話のみアイラの視点になっております。
ご了承ください。
これは悪夢か……?
ハヤテが……!
「貴様、楽に死ねると思うなよ……!」
儂は連続で『波動』を放った。
しかし、結界はすぐに再生されてしまう。
「ソノ……テイドカ……リュウジン……!」
「この……!」
さらに攻撃をしようとした時じゃった。
「止めろ、アイラ!」
フィールレイが儂を制止する。
「止めるでない!」
「無駄のことは止せ! 引き際が分からないアイラではないはずだ。作戦は失敗した! ハヤテは死んだんだ!」
ハヤテが死んだ。
その事実を言葉にされた時、儂は全身から力が抜けてしもうた。
「立つんだ、アイラ」
「おぬしはハヤテのことが大切でないから冷静なんじゃ! 儂は……儂は……!」
「ああ、確かに私はアイラよりハヤテのことを大切には思っていない。でも、アイラの思い人が死んだことで何も感じないわけじゃない。アイラはここで魔力を使い切るつもりか。もしもの時、リザたちを頼むと言われただろ!?」
フィールレイに言われ、壊れかけている心をどうにか保つ。
もう一度、体に力を入れ直す。
「退く……」と声を振り絞った。
儂の言葉にフィールレイは頷く。
リザたちが心配じゃ。
儂とフィールレイはリザたちの所まで退却する。
辺りは先ほどの攻撃で酷い有様じゃったが、リザとパトラティアの土魔法じゃろう。
多重土壁を使ったようでリザ、ナターシャ、パトラティアは無事じゃった。
しかし、リザはその場に座り込んで、俯き、動かぬ。
「リザ、退くぞ。軍勢もすでに引き始めておる」
儂はハヤテのことを口にすることが出来んかった。
「行け。私は良い…………」
リザの声は聞いたことがないほど低い。
「おぬし、一人であれと戦うつもりか!? 勝てんぞ」
儂がリザの肩に触ろうとすると、その手を振り払われる。
「別に勝つ気、ない……戦う気、ない……ハヤテと一緒に死にたいだけだ……」
「……そんなことをハヤテが望むはずなかろう。儂たちだけでも……」
「ハヤテが望むかなんて知るか!! 私が望むからそうするだ!! 勝手にさせろ!!!」
リザは泣いておった。
「私はこの作戦に反対だった! それなのにみんな、誰もハヤテを止めなかった!! ハヤテだって、そうだ! みんな、誰も私の意見なんて聞かなかった!!」
リザ、頼むからやめてくれ……
「アイラ、お前は切り替えが早いな! やっぱり長く生きていると大人だな!! なんでハヤテの作戦に反対してくれなかった!? お前が反対すれば、ハヤテは作戦を変えていたかもしれない!」
リザ、今回はお前が正しい。
じゃから、やめてくれ……
「ナターシャも、フィールレイも、パトラティアもそうだ! なんで誰も止めなかった!!」
もうやめてくれ……
儂にこの場で死にたいという感情を呼び起こさんでくれ。
おぬしのことをハヤテから頼まれたんじゃ。
「リザ、頼む。一緒に逃げてくれ。もし、おぬしが儂を憎むなら、この場から逃げた後におぬしが儂を殺しても構わん。儂に自害しろと言うなら、する。恨みはせん。じゃが、おぬしを死なせてはハヤテに申し訳が立たん!」
「そんなの知るか……! なんでだ。なんでハヤテがこんな死に方をしないといけない? ハヤテはカードゲームで世界制覇した直後に一回死んだんだぞ。今度は世界を救った直後になんで死なないといけない? 私は別に平和とか、戦争なんてどうだっていい。竜人がどうなろうと、蛇人がどうなろうと、獣人がどうなろうと、人間がどうなろうとどうだって良い! ハヤテが隣にいてくれれば、満足だった。ハヤテには遥か先の未来、ハヤテが世界を救ったことなんてみんなが忘れた頃、穏やかに死んでほしかった。私が朝、起きてこないハヤテを呼びに行ったら、まるで眠っているように死んでいる。そんな最期を看取りたかった。私が覚悟していたのはこんな別れじゃない!!」
儂はリザを説得できんと悟った。
その瞬間、繋ぎ止めていた心は完全に折れてしまった。
なら、儂もこの場で……
「ねぇ……あの……」
初め、儂はその声が誰なのか分からんかった。
ナターシャの声はそれほどか細かった。
「ハヤテ……まだ生きてる……」
ナターシャは上手く呼吸が出来んようで苦しそうじゃった。
じゃが、確かに聞いた。
ハヤテが生きてるじゃと?
「どういうことじゃ!?」
「丸飲みにされたみたいで、その…………」
嬉しい、と思ったのは一瞬じゃった。
そんな状態で生きていられるのはどれくらいじゃ?
じゃが、儂がもう一度立ち上がるのには十分な理由じゃ。
リザは……動かんか。
「すまんの」と言い、儂はリザの後頭部を叩いた。
リザは気を失う。
「ナターシャ、リザを頼む。おぬしたちは逃げよ」
「でも…アイラさんは……どうするつもり……?」
「策があるんじゃ。儂が必ずハヤテを救い出す」
そんな策は何もない。
儂一人では結界も突破できん。
じゃが、そうでも言わんとこやつらまで残ると言い出しかねん。
それにハヤテが生きているなら、戦う理由にはなる。
……死ぬ理由にはなる。
「リザ、ケジメは付けるからの」
ナターシャを行かせ、儂はアンペンダープと対峙する。
「で、なんでおぬしまでいるんじゃ?」
フィールレイが儂の横に立つ。
「この命、アイラとハヤテに貰ったようなものだ。私の好きなように使わせてくれ。それにハヤテを救い出すんだろ? もし、救い出せたら、私の願いを聞いてもらうぞ」
「……馬鹿者が。良いじゃろう、ハヤテを救い出せれば、儂は何でも言うことを聞いてやるぞ」
「約束だ」とフィールレイは笑う。
結局、儂はガンウォールに単身で挑んだ時から成長しておらんの。
また勝ち目のない戦いをするのじゃから。




