『アンペンダープ』とリンク失敗
「アレが魔導兵器の正体か……」
「なんだ、あれは!? 巨人族の倍以上のデカさだ!」
フィールレイが叫んだ。
「デカいだけじゃない……凄い魔力だ」
リザの声は震えていた。
「アレの名前は『アンペンダープ』……私たちの先代が作ってしまった最悪の兵器。術者の魔力を際限なく暴走させるのよ……術者が死ぬまでアンペンダープは止まらないわ……」
パトラティアを言う。
俺はソウルポイントを確認した。
ワイバーン、透化スライム、治癒スライム、守護竜の骸、連続召喚で俺のソウルポイントは2100まで減少していた。
上級モンスターは召喚できない。
そもそも、アレとやり合うにはリントブルム級のモンスターが必要だろう。
「ハヤテ、私を使って」
そう言ったのはパトラティアだった。
「召喚盤の仕組みは分かっているわ。私をカード化して」
「でも、君の記憶には王家の秘密もあるだろ? いいのかい?」
「ハヤテは私の記憶を悪用しない、って信じる。それに王家の秘密を守るためにアレを野放しにしたら、私たちの国が、いえ南大陸の全てが滅んでしまうわ。人の命に比べたら、王家の秘密なんて大した価値のあるものじゃないわよ!」
王家の秘密なんて、か。
その言葉にパトラティアの覚悟を感じた。
「……分かった。一緒に戦おう」
パトラティアは召喚盤に血を一滴、垂らす。
召喚盤が光り、新たなカードが生成された。
元女王 パトラティア五世
レベル②属性(土) パーソン ソウルポイント+2000
これで4100、それでもリントブルムの召喚には届かない。
「フィールレイ、お前も召喚盤に血を吸わせろ」
アイラが言う。
「いや、そんな強制は……」
「悠長なことを言っておる場合か」
それは確かだが、フィールレイは俺とずっと一緒にいるわけじゃない。
カード化して良いのか、と躊躇ってしまう。
「構わない。私も手を貸す」
フィールレイはそう言って、自分の血を召喚盤に垂らした。
しかし、様子がおかしい。
いつものようにカードが生成される感覚がない。
試しにフィールレイのことを思い浮かべながら、カードを引く。
――引いたカードは真っ白だった。
「どういうことだ?」
リザが言う。
俺にだって分からない。
「フィールレイ、もう一度じゃ」
アイラに言われて、フィールレイはもう一度、召喚盤に血を吸わせた。
しかし、やはり何も起きる様子がない。
どういうことなんだ?
考えても答えは出なかった。
こんなことは初めてだ。
召喚盤が原因を教えてくれるわけもない。
確定していることは、フィールレイをカード化できないと、これ以上のソウルポイントの上昇はないということだ。
これではリントブルムが召喚できない。
「分からぬことをこれ以上、考えている時間はないぞ」とアイラが言う。
「そうだな。今の状態でやれることをやろう」
パトラティアの分を合わせてもソウルポイントは4100。
上級モンスターは召喚できるが、もし負ければ、いよいよ後が無くなる。
それは避けたかった。
やっぱりリントブルム召喚までの時間をどうにか稼がないと……
「大丈夫だ。私たちが戦う」
リザは俺の考えを理解し、そう言ってくれた。
「大丈夫か?」
「心配いらない」
「ありがとう。さてと……スタンレンさん、万が一に備えてタオグナへ戻って、今の状況を民衆に伝えてください」
「だが、君たちは……」
「俺たちはここに残ります。お互いに出来ることをやりましょう。時間がありません。お願いします」
すまない、といいスタンレンさんは負傷した者たちを馬車に乗せる。
「嫌です! 私も残ります!」
その声はライリーさんだった。
「駄目だ。お前は重傷なんだ。今は逃げろ」
「それは族長としての命令ですか?」
「いや、親としての願いだ」
「…………」
ライアンさんがライリーさんを抱き締める。
「これは父の身勝手だ。親というものは子供が死ぬところを見るのが耐えられない。頼む。聞き分けてくれ」
「父上……」
「そして、俺にもしものことがあれば、お前が次の族長となり、王描人族を率いるのだ」
ライリーさんは「はい……」と声を絞り出した。
「ライリーさん、あなたも怪我をしているじゃないですか」
俺の言葉にライリーさんは、
「これは闘狼人族を信用してしまった俺の責任だ。責任は取らねばなるまい。それとも、俺では戦力にならないか?」
「そんなことはないの。おぬしは中々に強そうじゃわい。少なくとも子供の姿の儂では敵わんじゃろう」
横からアイラが言った。
確かに時間を稼ぐ為に戦力は多い方が良い。
「お願いします」と俺が言うと、ライアンさんは頷いた。
負傷者が立ち去り、この場には戦える者だけが残る。
しかし、一人の例外がいた。
「ごめん、君も怪我をしているのに付き合わせちゃって」
俺の言葉にパトラティアは微笑む。
「私たちの為に戦ってくれるのに逃げるわけにはいかないわ」
「来るぞ!」とリザが声を張った。
アンペンダープが移動を開始する。
こっちへ向かってきた。




