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竜人無双

 ボロボロのパトラティアとライリーさん。

 

 間に合った、というべきではないだろう。

 でも取り返しのつかないことになっていなくて良かった。


「アイラさん、なんですか?」


 ライリーさんが半信半疑なのは、アイラが本気(大人)の姿だからだろう。


「儂じゃよ。少し辛抱せい。すぐに終わらせる」


「凄い……アイラさんは私と戦った時、全然、本気じゃなかったんですね」


「そう落ち込むでない。おぬしはまだ成長段階じゃ。……さて」


 魔力を感じることのできない俺でも空気がピリッとしたのが分かる。


 それの正体はアイラの殺気だ。

 敵が受けたプレッシャーは相当だろう。


 見ると足が震えている闘狼人族がいる。


「一度だけ言おう。投降すれば、殺しはせん。じゃが、儂に挑むなら死は避けられんぞ?」


 アイラの言葉に賢狼人族も闘狼人族も引き下がる。


「怯えるな! 敵はたった()()だ! しかも二人は貧弱な人間。竜人といえ、多勢に無勢だ!」


 ラウルの言葉に鼓舞され、賢狼人族と闘狼人族は戦意を取り戻す。


「まったく兵数差ではなく、戦力差をきちんと把握せんか。無能なリーダーは無駄に部下を殺すことになるの」


「なんだと!?」


 ラウルが吠えた。


「おぬしがどれほど身の程知らずか、教えてやろうかの。かかってくるがよい。…………ハヤテ、今回は儂とて、容赦せんぞ。良いな?」


 アイラは念の為、俺に確認する。

 俺は頷いた。


 多分、レイドア攻防戦の前なら俺は即答を躊躇っていただろう。


 良いか、悪いかはともかく、俺にも()()()()()()を出来るようになっていた。


「フィールレイ、ハヤテとナターシャをよろしく頼むぞ」


 フィールレイは「任せろ」と言う。


「たった一人で俺たちやり合おうって言うのか!? 舐めるなよ!」


 闘狼人族が一斉にアイラへ襲い掛かる。


「舐める? 舐めているのは貴様らじゃ」


 ラウルを含めた十数名が全員、吹き飛んだ。


「あれが『竜圏』ってやつか?」


 記憶やリンクの中では見たことがあったが、直接、近くでも見たのは初めてだ。


「儂と対峙したことを後悔せい、犬共」


 それは戦闘などと呼べるものではなかった。

 攻撃力も、速度も、魔力も全てにおいて、アイラが圧倒的だ。

 瞬く間に敵を片付けていく。


「人間を狙いなさい!」


 ボルデックが叫んだ。

 俺たちに向けて、矢が飛んでくる。


「何もかもが遅い。『竜矢』」


 フィールレイは器用に飛んできた矢へ『竜弾』より速い攻撃を放った。

 その攻撃は敵の矢を粉砕し、そのまま矢を放った奴らを襲う。


 闘狼人族と賢狼人族が壊滅するまでは本当にわずかな時間だった。


「そんな馬鹿な俺は……闘狼人族の長、ラウルだぞ……」


 辛うじて立ち上がったラウルが言う。


「おぬしよりもライリーの方が強かったの」


 そう言われてラウルは顔を真っ赤にしたが、それ以上は何もできない。


 アイラは不敵に笑った。

 久々にアイラの圧倒的なところを見る。


「動くな!」


 ボルデックが声を張った。

 見るとパトラティアの首筋にナイフを突きつけている。


「動けば、この女を殺す!」


「ハヤテ、私に構わないで! 魔導兵器の復活には私の存在が必要なの! こいつは私を殺すことは出来ない!」


「黙ってろ!」


 ボルデックがパトラティアの顔を殴る。


「考えたら、別に死体でも魔導兵器は復活させられる」


「私が死んだ瞬間、アイラさんたちがあなたを殺すわ! どっちにしろ、あなたの負けよ!」


「黙れと言っている!」


 ボルデックがまたパトラティアの顔を殴った。


「あんたは無防備な女性を殴って何とも思わないのか?」


「こんな半身半蛇の醜い化け物を殴ったところで何とも思いませんよ。こいつらがなぜ造形魔法に優れているか知っていますか? それは遥か昔、最下層に位置していたこの気持ち悪い種族が他の種族に紛れる為に得た魔法なんですよ。下の下だった蛇人族が今ではこの大陸の覇者、本当に馬鹿げている!」


「馬鹿げているのは見た目だけで蛇人族を蔑んでいるあんただよ」


 啖呵も切ったことだし、俺が万能チート持ちの最強の主人公なら、俺自身の力でパトラティアを助けるだろう。

 しかし、俺にはそんな力はない。

 人質の有無に関係なく、俺じゃボルデックに勝てない。


 だから、俺はパトラティアの救出をリザに託した。


「ハヤテ、儂らをもう戦わんで良いな?」


 アイラの言葉に俺は頷いた。


「止めて、ハヤテ、戦って!」


 パトラティアはまた叫んだ。

 人質交渉が成功したと思い込んだボルテックは意地悪そうに笑う。

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