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囚われのパトラティア

この話から二話、パトラティアの視点となります。

ご了承ください。

 こんなことになるなんて…………


 ボルデックの一団が私たちの馬車を急襲した時、ライリーさんが先頭に立って戦ってくれた。

 闘狼人族も初めはライリーさんと共闘する動きをしていたのに、いきなり裏切ってライリーさんの背中を襲った。


 ライリーさんといえ、いきなりの攻撃に反応が遅れて、しかも多勢に無勢、戦闘はあっという間に終わってしまったわ。


 今、私は両腕を後ろに回され、手錠で拘束されている。

 しかもこれは魔力を封じる手錠だわ。


「もう少し早く歩いて、いえ、這いずってもらえませんか?」


 ボルデックは意地の悪い笑みを浮かべた。


「ごめんなさいね。魔力がないと這いずるのも一苦労なのよ」


 私たちが地面を這いずっても平気なのは尾と地面の接触面に魔力で層を作っているから。

 魔力がなければ、少し進むだけで尾の腹が傷つくの当然よ。


「まったく気持ち悪い種族ですね!」


「くっ……!」


 ボルデックは私の尾を思いっきり踏んだ。

 泣きそうなくらいの激痛に襲われる。


「おや、痛いですか」


 痛がったら、この男を喜ばせるだけだわ……


「……踏まれていたら、前に進めないわ」


 私が淡々と言うとボルデックは少しだけ不愉快そうだった。


 小狡い男だとは思っていたけれど、まさかこんな大胆なことをするなんて考えていなかったわ。


 それにしてもこれ以上はまずいわ。

 私の命に代えても進ませるわけにはいかない。


 でも、大丈夫、もう少し進めば…………


 私たちは広い部屋にやってくる。

 

「どうしたのですか? 止まらないでください」


「少し休ませて頂戴。もう尾の腹が擦れて血塗れなの……」


 これは事実。

 痛くて、本当に酷い状態だわ。


「まったく……足を持たないとは不便ですねぇ」


 そう言ってボルデックは私から視線を切った。


 今よ!


 私は仕掛けの隠しボタンを頭突きで起動させようとした。


「だから悪知恵ばかり働くのですね」


 しかし、ボルテックは私の髪を引っ張って、それを阻止する。


「くっ……!」


「あなたがこの部屋を崩壊させる仕掛けを起動させようとすることは分かっていました」


「ボルデック、どうした?」


 ラウルがボルデックに近づく。


「元女王陛下が殊勲にも我々と道連れを選ぼうとしたんですよ。ほら、そこの地面、色が少しだけ変わっているじゃないですか。そこを押すとこの部屋が崩壊するんですよ」


「どうして? この仕掛けは私しか知らないはず……」


 するとボルデックは意地の悪い笑みを浮かべ、自分の頭を指で差す。


「先ほどあなたの記憶を貰いましたから」


 私の記憶?


「不思議そうですね。我が種族に伝わる魔法ですよ。対象者の記憶を複写できるのです」


 もしかして、手錠されて、すぐに頭を掴まれた時……?


「そんな魔法を賢狼人族が使えるなんて聞いたことない!」


「あなた方が秘匿することがあるように私共も秘密があるんですよ。しかし、この魔法は少し厄介でね。記憶だけではなく、余計な感情まで複写してしまうんですよ」


 それを言われた瞬間、私の心は酷くざわついた。


「それにしてもなるほど……人間などと親しくしているのは何かしらの思惑があるのかと思っていましたが、あの人間の男を本当に好きなんですね」


 やめて……


「名君と呼ばれたあなたも恋愛では純粋なんですね。たかが歴史書一冊、それに武力に頼らない統一などという夢物語を真に受けて、あんな男に惚れるなんてね」


「やめなさい!」


 自分が単純だってことは分かっているわ。

 でも、あの人は……ハヤテは魔王を倒して、竜人族を味方に付けたのにそれでも武力を行使しようとしない。

 あんな人がいるなんて初めて知ったのよ。


「驚きました。あなたがそんな顔をするとは思いませんでしたよ]


 そう言われて、私は反射的に顔を逸らす。

 

 けど、髪を引っ張られ、無理やり正面を向けさせられる。


 これ以上、こいつの望む反応をしてやるもんか。

 そう、決意して無表情になる。


「だったら、何故、私をここに連れてきたの? 私なんて移動の手間でしょ?」


「まだ惚けるつもりですか? 魔導兵器の正体を私は知っています。その発動の条件もね。それにはあなたの存在が必要なんですよ」


「そんなことはさせないわ!」


 私は近くの岩に尾を巻き付ける。


 私がそんな惨めでみっともない抵抗をするとは思わんかったのね。

 ボルデックは焦って、私は引き放そうとする。


「無駄なことを…………!」


 ボルデックは私を殴打する。

 それでも私は岩を離さなかった。

 少しでも粘れば、ハヤテたちがきっと……


「残念ですが、あの人間はここへは来ませんよ」


「!?」


「馬車の操縦者に魔法をかけて、こことは別の場所へ行ってもらいましたからね」


 そんな…………


 それを聞いた瞬間、体の力が抜け、私は尾を岩から離してしまった。


「まったく……もう、自分で動く気力もありませんか」


 ボルデックは私の髪を引っ張って、引きづる。


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