パトラティア、攫われる
「スタンレンさん!」
ワイバーンを急降下させ、着地する。
「ハヤテ殿、そのドラゴンは一体……」
「説明は後です。何があったのですか!?」
「ボルデックのことは覚えていますか?」
俺は意地汚い提案していた賢狼人族の男のことを思い出す。
「……ええ」
「奴が手勢を率いて我らを急襲したのだ。ライアン殿が奮戦してくださったが、闘狼人族までも賢狼人族に味方し、我らは…………」
見渡すとライアンさんが横になっていた。
死んではいないようだが、重傷だ。
「パトラティアが攫われてしまった。頼む、ハヤテ殿、あの子を助けてください」
スタンレンさんは俺の腕を掴んだ。
「助けます。しかし、隠していることがあるなら、今のうちに教えて頂けませんか? もし、人質にするなら現国王のスタンレンさんの方を選ぶはずだ。なぜ、奴らはパトラティアを攫ったのですか!?」
「……奴らは恐らく、どこかで魔導兵器のことを知ったのだ」
「魔導兵器?」
「私も詳しいことは知らない。魔導兵器のことは王家の分家であったパトラティアの家に代々口伝されていたらしい。なぜそんな方法でしか残さなかったか、それはこの大陸を滅ぼしかねない危険な存在だからだ」
何かあるとは思っていたが、そんなものがあったなんて…………
「とにかく、奴らがそんなものを手に入れる前に止めます」
俺たちが遺跡に向かって走り出そうとした時だった。
「すまない、私の娘が賢狼人族と闘狼人族の後を追ってしまった」
ライアンさんが傷付いた体を起こして、話す。
「あいつは王描人族の中でも手練れだ。それでも多勢に無勢。このままでは殺されてしまう。どうか、娘を助けてくれ…………!」
ライアンさんが頭を下げる。
「ライアンさん……分かりましたから、今は傷の手当てを受けてください。リザ、アイラ、フィールレイ、力を貸してくれるか?」
「当たり前のことを聞くな」とリザが即答した。
「ナターシャ、君は……」
「一緒に行くよ。だって、私があまり離れるとハヤテは私のカードの効果が半減するでしょ?」
確かにそれはそうだ。
でも、戦闘力を持たないナターシャを戦場へ連れて行くのには躊躇いがある。
「心配せずとも守る対象が一つから二つになるくらい平気じゃ」
アイラが言う。
「戦闘力で言えば、ハヤテもナターシャとあまり変わらんぞ」
いや、俺はこれでも女神に多少の身体強化をしてもらったんだよ!?
まぁ、竜人族からすれば些細なことかもしれないけど…………
「急ぐぞ、ハヤテは儂が背負う。フィールレイ、お前はナターシャを頼めるかの?」
フィールレイは頷き、ナターシャを背負った。
「ほれ、ハヤテも早くするんじゃ」
女の子(正確には女の子って年齢じゃないけど)に背負われる成人男性、ってどうなんだろうか。
そんなことを思ったが、緊急事態だ。
俺はアイラに背負われて移動を開始する。
「しかし、パトラティアの奴め。隠し事なんぞしなければ、ここまで面倒にならなかったものを……」
アイラはそんなことを愚痴るが、一国の元女王として全てを言うわけにはいかなかっただろう。
「今は後悔するよりも最悪の事態を避けることに尽力しようか」
漫画や小説なら復活した魔導兵器と戦う、っていうのが定番だろうが、俺はごめんだ。
なるべく楽をして、事態を収拾したい。
俺たちは遺跡群へ到着した。
「魔力の残留がある…………こっちだ!」
リザが先頭を走る。
俺たちもその後を追った。
そして、リザは崩れた遺跡の前で立ち止まる。
「この中だ」とリザが言う。
俺は入ろうとしたリザを引き留めた。
「リザ、頼みがあるんだ」
この先には敵の他にパトラティアとライリーさんがいるはずだ。
人質にされたら、俺たちは為す術が無くなる。
だから、多少の小細工が必要だ。
「分かった」
俺の作戦を聞いたリザは了承してくれた。
「アイラ、フィールレイ、先頭は任せる」
二人を先頭に俺たちは遺跡の中へと入っていった。




