63 【たばかる夜】
ある日の王莽時。
???「ご苦労だった」
???「へい!旦那。いささかずいぶん苦労いたしやしたぜ」
「して、これは本物なのか?」
「疑ってもらっちゃあ困りやす。モノホン正真正銘の魔法の指輪でござい」
「まあよい。指にはめれば魔力の流れでわかる」
丈夫の武骨な指にソレがはめられる。
「・・・確かに本物のようだ」
「そうでござんしょ。この破魔の指輪は、今は昔、かの狂王の時代にダンジョンから得られたもののひとつでごぜえやす。今時分、ダンジョンに行くような気狂いはおりますまい」
「そうだな。充分な対価でそなたの働きに報いよう」
「メルシー、旦那!1000フランほど頂ければ・・・」
「2000フラン出そう」
「やったー!ありがてぇ、ありがてぇ」
商人は目から涙をちょちょぎらせ狂喜乱舞している。今夜、月は出ていない。
「これで・・・王の守りも破れるな」
丈夫は歓喜からか小声で真情を吐露してしまう。
愚鈍な商人と言えど、商人とは耳聡いものだ。
「旦那・・・まさか、王城の結界を・・・?確かにその指輪を使えば・・・」
ここで彼は常ならぬ明敏を発揮してしまう。
ドカンッ!!!
鳥が音に驚き飛び立った後、商人の胸はぽっかりと向こうの景色を映しだしていた。
「だ・・だんな・・・なんじゃこりゃぁ・・ぐぇー」
「気づかないふりをしていれば、せめて生かしていたものを。愚か者め」
「にゃーん(お前が呟いたからだにゃ)」
「ん?」
振り向くと、窓縁に女王然とした猫がいる。
「この猫は・・・ヒラーとかいうやつの・・・」
丈夫は血まみれの指を差し出す。
「チチチチチ・・・可愛い猫め」
がぶ。猫は指に噛みついた。「イテッ。こ、こいつめ」
叩こうとしても猫はさっと逃げ出し、茂みの中に消えていく。
外にはか黒い夜があるばかりである。
猫の行方は、誰も知らない。




