61 境界の魔術師
「そいやあ、なんでエミールはこの都市で暮らしてるんだ?祖国にいつか帰るのか?」
「いや、僕は祖国に帰るつもりはないよ。前にも言った父を陥れた貴族も存命なことだし、最近は軍備増強が著しいと聞いているしね」
「ああ、時計職人のお父さんなんだっけか」
脳味噌の片隅に微かな記憶がある。
「そう。簡単に言えばその貴族が僕の叔母、つまり父の妹に横恋慕してね。当時、叔母には恋人がいた。まずはその恋人がおそらく冤罪で投獄幽閉された」
「おそらく?」
「証拠を残すヘマをやるようなやつじゃなかった。証拠が残っていても貴族は追求するのが難しいというのに。その次は父だったようだ」
ぽかん( ◠ ‿ ◠ )?
「ヒラーはまぬけづらの演技がうまいね、流石だよ。お察しの通り、早々に危険だと判断した父が僕を国から追い出したのさ。僕だって叔母を守りたかったのに・・・」
「そっ、、、そうか、、、。それでこのアルデンヌ王国に来たわけか」
「いったん、素晴らしい夫人のところに腰を落ち着けたけどね。植物学と医学の造詣が深いひとだったよ。彼女から手取り教わったのさ。しかし、新しい若い男がやってきてね。僕はcocuになったわけさ」
コキュ?う・・・頭が・・・、ああ、そうか。恋人を寝取られた男という意味か。ん?なんでオレはこの単語の意味がわかるんだ?
「この思い出は美しさと悲しさが一緒くたになっているんだ。今はごめんだけど話す気分になれない。また今度ヒラーにはお聞かせするよ、親友だからね!ところで、今日はどこかに行くと言ってなかったかい?」
「あー、そうだ。ギルドにニヴォーとかを確認しに行くつもりだった」
飲み屋にいたギシェのおやっさんに話した僅かな記憶がある。酒と共に消えていってたわ。
「とか?」
「オレも魔法が遂に使えるようになったからな」
「魔法は"発する"ものだけど、、、」
すぐ水を刺してくるな、コイツ。
ぷかぷか、、、、にゃーん
__________
「鑑定玉を貸してくれ、ギシェのおやっさん」
「ヒラーか、昨日はお互い呑みすぎたな、、、。ところでちゃんと働いてるか?エミールの従者としてもっとギルド活動を手伝うんだ。領主に追い出されちまうぞ」
そうか、オレは召使いだったは。
「わ、、わかってるよ、おやっさん。ちょっと修行しててな。だからこそ鑑定玉を借りにきたんだよ」
「そうか。偉いぞ。修行は良いことだ。ヒラーはニヴォーが伸び悩んでるからな。エミールはこの前ニヴォー32になっていたぞ」
えっ!?そんなに!?この前20とかだったじゃん!
「そっ、そうか、、、。じゃあオレは25くらいかなあ」
魔法も使えたしな。武器の強化だから付与魔法というやつかな。錬金術の一種かな。
「じゃあ、手を置いてくれ」
オレは手を置いた。浮かぶ光の玉の数にオレは驚愕した、少なすぎる!!ひい、ふう、みい、、、ここのつしかないぞ!この鑑定玉壊れてるぞ!
「鑑定玉壊れてるぞ」
すっとエミールが手を置く。32個だ。壊れてない。
「ヒラー、これは個人の素質もあるが、もう少し頑張ってモンスターを倒しても良いんだぞ」
「で、、、でも、、、オレ、まほうも使えるようになったし、、、」
もはや涙目だ。
「いみじういたはし。わぬしはつよき人」
超常的幼女からも気を使われる始末だ。
「ニヴォー9でか?まあいい、どうせまだ使えないだろうが、素質はわかるだろうから魔法用の鑑定玉で調べてみるか?」
え、そんなのあるん?はじめから言っといてよ。傷付いて損した。
おやっさんはカウンターの奥から別の水晶玉を持ってくる。若干黄色に色づいた鑑定玉だ。
手を上におく。
すると、水晶玉の表面だけが鈍く輝き出した!
「これは、、、境界の魔術師の素質!」
ギシェのおやっさんの顔が驚きと悲哀に満ちる。




