56 黒い森のダンジョン攻略 5
「でっかいな、、、」
オレの双眸には、おさまりきらないほどの巨木が映し出されている。
マダガスカル島に生えるバオバブの木のようだ。ひときわ大きなはずのこの部屋がなぜか今までの部屋より小さく見える。
枝を動かしているようだが、巨大すぎてその動きは緩慢に見える。枝の先っぽは存外速い。当たると痛そうだ。まあこの身体だとそんなに痛くはないだろうけど、気持ちの問題って何事もあるよね。
根元まで来ると視界一面に木の幹が広がる。根っこもうねうね蠢いている。
拾った棍棒でちょいと殴ってみる。べこん。ちょっと表面が剥がれたぞ。倒せるんか。
(いや、、、これは・・・)
それまでとは明らかに違う尋常ではない速度で木の表面が修復されていく。ちぎられた繊維がまるで独立した虫の一種であるかのように波打ち、片方と結びつきあい、樹皮を再度形成していく・・・。木の外樹皮の部分ってこんなふうになるっけ?まるで魔法のような。。。
いくつかの枝がしなり、オレを叩きのめそうと落ちてくる。当たってあげてもいいけど、しゅるんと避ける。避けるのは簡単だ。しかし、何回か叩いてみたが、ちょっと剥がれ落ちるだけですぐさま治っていく。なんという生命力。
しかし、なかなか詰んでいる。日本刀で一刀両断できたら楽なんだが、それはフィクションの中の話だけだ。ここは現実であり、そうはうまくいかない。しかもいま手に持っているのはひろった棍棒だ。相性は最悪である。まあそんじょそこらのナイフではたちどころに折れてしまいそうだ。チェンソーだって繊維の方向を過つとうまく切れずに暴れるらしい。
とはいえ、この棍棒で殴ってても永遠に終わりが来なさそうだ。道中、なぜか落ちていたパンとトレントを倒して得られたフルーツがまだいくつかあるが、永遠に尽きない壺の粉や、無くならない瓶の油なんかがあるわけない。涸れない(ように見える)泉くらいはあるかもしれないが。
≪アタマガ・・・イタイ・・≫
唐突にナイフをリュックの奥底にしまい込んでいたことを思い出した。いや、ナイフなんて役立たないとついさっき結論付けたじゃないか。試しに切ってみたいのか?
理性ではそう考えつつも、オレはこの小さなナイフの鞘を抜き、握ることを止められなかった。
綺麗な鈍色だ・・・。光沢も美しい。
すると、うっすらと刀身が青に色めきだした!




