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49 れべるあげは孤独の徴



オレはまた異世界に戻ってきた(・・・・・)


今回は都市トロイには寄らないようにしている。目的が武者修行、こっそりとニヴォーを上げることだからだ。


オレは昔からこうした単純なレベル上げは好きではなかった。やり込み要素としてアイテムなどを集めるのは好きだったが、通常のゲームの流れの中で下手にレベルを上げすぎてしまうとゲームバランスが崩れ、なんとも味気なくなるものだ。スキル集めも好きだったから、そこは判断が難しいところだが・・・。


とはいえ、この空想的な現実世界においてはゲームバランスなど存在しない。バランス調整を申し出るテストプレイヤーも調整能力を有するプログラマーも居ない。


有るのは大いなる自然の調整機能だけだ、ダーウィンの自然淘汰(しぜんとうた)的な。駄目な人材が追いやられる会社や社会のように。神の見えざる手もあるのかもしれないが、少なくとも機動・能動・理知的ではないし、ビールの噴き出す火山でうたた寝をしているフライングスパゲッティモンスターのほうが合理的な存在なのかもしれない。


そのため、始めの村の近くにラスボスのダンジョンがあることもあり得るのだ。人は目の前の危険にしか危機感を覚えられない欠陥品だ。当然、目の前にラストダンジョンがある村の危機意識は世界一になるだろう。そのための対策も打つはずだ。


また、現実世界は二項対立(にこうたいりつ)ということはほぼほぼ無い。あるのは弁証法が大好きな学者の頭の中くらいだ。すなわち、世の中は多様性で満ちており、必ずしも対立ばかりなわけではなく、(ゆる)やかな宥和(ゆうわ)()たされている。


山にドラゴンがいたとしても、付近にはゴブリンばかりかもしれない。満腹な猫はネズミを追わない。人間こそが対立し、満腹でも殺すのだ・・・。


__________


まあとにかく、この世界は黒い森がモンスター的なものを生み出し、少しずつ緩やかに領域を増やそうとしている生存競争下にあるのは間違いなく、そしてまだ人間側にいると(おぼ)しきオレは黒い森のモンスターを倒す一応の利益はある。


と、言い訳を適当に考えつつ、片手間に森の中の耳の(とが)った人型のやつとか、凶暴な少々奇形(きけい)の良く(つの)の尖った動物を倒している。


「こんなんでニヴォーがあがるんかなあ・・・」


(さみ)しくひとりごちるも、上がらないわけじゃなさそうだし努力は続けることにする。返事も反応もないのが普通だ、ステータスチェック機能とかがここに存在していれば別だが。


この前(はか)った時にはニヴォーは5まで伸びていた、エミールのやつはほぼオレの横で突っ立っていただけのくせに20になっていた。それが判明した時にはかなりイラッとさせられたが、吸収される魔素はそこまで厳密なものでは無いらしい。パワーレベリングもできちゃいそうだな、ニヴォーが上がる適性は戦わないと伸びなそうだが。


ジャンヌも貴族っぽいし、ニヴォーを上げてたりするんだろうか。ギルドとかレベルの仕組みに詳しそうではあったが。プラトのやろうは自分で水晶玉に浮かぶ99の光を数えたのだろうか、そうだとしたらかなり間抜けっぽいシーンだな。


そんな詮無(せんな)いことを(後半はかなり意趣返(いしゅがえ)し気味だが)ぼんやり思い描きつつ、ふと気づくとなかなかの量の死体が転がっていた。外の死体は光の粒となって消えはしない。


討伐部位を取っても換金する時目立ちそうだし、オレの身分はあくまでエミールの従者だ・・・事実だが、なんだか腹立つな。まあいい、とりあえず説明がしにくいということだ。売れる部位を取って闇に流してもいいかもだが、バレた時やばいし、解体の仕方はめんどくさくてエミールに(なら)ってはいない。


お金貯めてあの格好いい剣たちを武器屋で買いたいんだけどなあ・・・。


ニヴォーの確認も人知れずできないかなあ。まだ上がったとわからないうちからそんなことを考えるのは、相当取らぬ(たぬき)感があるが、思考実験は重要だ。


ギルドで受付をやっているギシェのおやっさんとは飲み友として仲良くなったが、ジャンヌとも知り合いのようだし、領主とも当然繋がっているだろう、てか既に諸々(もろもろ)バレてたし。


とはいえニヴォーは鑑定玉で確認せずとも上がるはずだし、魔素が身体に入ってきているように皮膚あたりで感じてはいるし、オレも身体能力が向上したり、魔法が使えたりしてもいいはずだ。


身体能力はキノコさんを蹴り始めてから上がってるし、今現在上がっている肌感覚は無い。そういえばなんでキノコさんと(たわむ)れると身体の調子が良くなるんだろうか。


「きっと俺は魔法使いタイプなんだろう。丹田(たんでん)に魔素が溜まっているはずだが、きっと高名な魔術師とか魔法学院に通わないとその秘したる才能は芽生(めば)えないに決まっている」



また独りごつ。





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