39 孤独な散歩者との邂逅
「さてと、、都市に向かってみるか」
あれから数日間、キノコを大量納品したり適当に寝たりぶらぶらして過ごしたオレは、ダンジョンの奥の都市に向かっている。ここはおそらく地球じゃないはずなのに、不思議と人間たちがいて文明を築いているようだ。
( まあそもそもキノコさんとか緑色のモンスターとか地球的じゃないからな)
昔の地球ならそれが真実だと受け入れられる素養があったが、現代においては全て科学的というスクリーニングを経ないと受け入れられない。どちらにおいても真の構造は理解していないにもかかわらず。
迷信とは啓蒙的事実ではなく単なるレッテル貼りに過ぎないということだ。
「にゃおん!」
ニャムルもついてきている。
本当は素早く走れるくせになぜか基本オレの肩か頭に器用にまとわりついている。めんどくさがりめ。
キノコを食べる時だけ降りて駆けていく。くいしんぼうめ。
オレたちのスピードなら一瞬だ。
ニャムルは乗ってるだけの時が多いが。
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爺さんの小さな石造りの家の前に置いた米袋が消えていることを確認しつつ、この前ジャンヌと騎士たちが盗賊やらモンスターに襲われていた場所に到着した。
今回は誰も襲われていない。
視界の範囲内には誰もいないようだ。
ここからは普通のテンポで歩いていくことにする。アンダンテで。
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街道にちらほら人が増えてきた。武装している人物もいる。ここらにもモンスターが出現するんだろうか。
あくまで一般人を装いつつ、しかし首に大きな毛皮が張り付いていることに矛盾を感じつつ、テクテクと進む。
すると、街道脇の草むらでゴソゴソやっている若い男がいた。
オレがふと立ち止まると
「ああ、こんなところにツルニチニチソウが咲いているなんて!なんて可憐なんだ!まるで初恋のあの人のようだ!すまない、少し採集させてもらうよ・・・。いやあ、今日はついてるなあ。良いことがもっとありそうだ。外にひとりで散歩するのはやはり良い。話すべき人もいないし、植物が僕を癒してくれる。植物だけが人間に害されていない孤高な存在なんだ。犬や猫とは・・・おや、君は誰だい?僕に何か用かい?」
「いや、オレはたまたまここを通って、、」
「そうかいそうかい、僕に用がないとは君はなんて素晴らしい人物なんだろう!ここ最近は僕をみると怒鳴ってくるかおべっかか強請ってくるやつしかいなかったからね!ちょっと僕がまともなことを書いただけで急に"神に反している"なんて言って僕を迫害し始める。じゃあその神とはなんだ?という話さ。そもそも宗教というものはだね、、、」
「いや、その話は今は大丈夫だ。オレは先を急ごうと思う(コイツ絶対ヤバいやつだ)」
「ふぅん、あそこの都市トロイに行くのかい?トロイは王都よりはマシなところだね。農家を苦しめている点は同じだが。君も知っているだろ?誰もが苦しんでいる、一部の特権階級を除いてね。僕はこうして少々植物学の知識があるからまだなんとか食べていけてはいるが、、」
「そうか(そうですね )。じゃあそろそろ、、」
「君は入市許可状は持っているのかい?見たところ外国人だろう、言葉は流暢だが…。許可状がなければ、都市の中に知り合いが居ればその人と同行することによって入ることはできるけど」
コイツ、、、なかなか鋭い観察眼を持っているな。オレより頭が良さそうだ、変人だが。
「いや、、許可状はないな、、。知り合いも特には、、、」
わざわざ言わなくていいこともついつい狼狽して言ってしまう。人外の身体能力を手に入れて慢心しているのだろうか。まるでライカンスロープだ。
「元来僕はとても良い性格でね、誰も理解してくれないが、無邪気で優しくて穏やかな気質なんだ。そこでどうだろうか、親切心から君を助けてあげることもできるよ。こうして話しているんだ、友人といっても過言ではないだろう?君は都市に侵入して悪さを働くようなスパイのようには聡明じゃなさそうだし、基本的に善良そうだ。きっと僕と気が合うよ?」
どうにもコイツとは気が合わないし親友にもなれなさそうだが、他に手段はなさそうだ。しょうがないか。まあ、物見遊山だし、適当で。
「じゃあすまんが、そうしてもらおうか、、」
「謝ることなんかないさ!僕ら友人だろ!?そういえば名前をまだ知らなかったな、友人になるのに名前は不要ということだな。僕はエミール。君は?」
「(いつのまに友人になったよ…)オレは平岡三岳。ヒラオカと呼んでくれ」
「親愛の情を込めてヒラーと呼ばせてもらうよ!僕のことはエミールでいいよ!僕は僕の名前に誇りを持っているからね!いやあ、いくつになっても友人が増えるというのは良いことだね!最近は減るどころが絶滅していたからね」
コイツやっぱりヤバいやつだ。
ヒラーって、フェルディナント・ヒラーかよ、マイナーなピアニスト兼作曲家かよ。ヒットラーじゃないだけマシか。
「それじゃあ、都市に共に向かおうか、我が友人よ!いざトロイへ!手でもつなごうか?」
オレはのろわれた入市許可状をてにいれた!
呪われていて、はずれなさそうだ。




