32 美はうつろいやすく
「イタタタタタ、、、、」
さっきまでの緊迫した空気は雲散霧消してしまっている。いい天気だ。
ロダンのアルテミスの大理石像のように美しかったとしても、馬車から出てくるときに頭をぶつけるような醜態に対してはなすすべもない。
やはり、美とは動かない状態で固められた樹脂の中の虫のような存在なんだという認識を新たにした。
ヴィーナス像も動き出したらその美をたちまち失うことだろう。
・・・。
「わたくし、このアルデンヌ王国出身のジャンヌともうします。この度はこのような危機から私たちをお救い下さり、感謝の念に堪えません」
コイツ、スルーしやがった。
まあ触れないのも優しさだろう。
「いや、たまたま遭遇しただけだ。大したことはしていない」
実際、適当にはたいただけだし。
「いや、あなた様がいらっしゃらなかったら、私たちは賊かモンスターに殺されていたところでしょう。ただ殺すだけのモンスターのほうが人より優しいのかもしれません」
謎の微笑を浮かべている。
「・・・」
「どうでしょうか、是非お礼をさせていただきたいのですが、、、このまま都市トロイまでご同行してくれますでしょうか。着きましたなら、ご要望のものは出来うる限り手配いたしますので、、、」
オレは にげだした!
なんかこのお嬢さん、綺麗だけどめんどくさそうだしスルーすることにした。
天才だけど馬鹿そうだ。
都市にはひとりでこっそり入ることにしよう。




