22 ロシアではきのこ狩りが紳士淑女のたしなみ
( 嘉玲は今頃キノコを高温乾燥でもしているんだろうか、、、 )
キノコさんの献身的な貢献により、活況を呈している中華料理龍門は、ビジネスの規模を拡大し、法人化して、蒲田駅と西馬込駅とに新規の中華料理屋を二店舗開店させている。
高級料理店を中心に、調味料の販売も行なっている。ぶっちゃけキノコさんを炭火乾燥させて粉砕したマジックパウダーを混ぜるだけで全ての調味料・スパイスが美味しくなる。とんでもない付加価値がオンされている。
キノコさんの存在は虎の子で事業の根幹と言っても過言ではないので、その存在がわからないように儲けよりも隠蔽の優先度を上げている。秘伝のソースというやつだ。表示には「調味料 ( グアニル酸等 ) 」としか書いていない。
一般消費者に売らなければ表示義務もそこまで厳格ではない。また、消費者にプラスチックに包まず料理として直接提供する場合に表示は義務ではないのだ。店員に直接聞けるからという言い訳だ。コンビニ店員とレストランのアルバイトに有意な差があるのだろうか?
小麦粉を八九割混ぜた立ち食い蕎麦が普通の蕎麦屋を駆逐している訳だ。
龍門を法人化する際 ( ちなみに社名は株式会社ドラゴンズゲイト。どうかと思う )、嘉玲はオレにこう言った。
「三岳君も出資してくれない?三割くらい。経営とかはこっちでやるから」
全てのキノコさんはオレしか採ってこれない訳だが、新規事業やらでリスクをとって実際に現場で頑張っているのは嘉玲やおっちゃんだし、むしろ出資させてくれて利益を配分してくれる( 特別決議を阻止できる議決権もある )のは優しさ以上のものを感じた。
しかも出資金400万は一時的に立て替えてくれて、キノコの買取価格から自動的に無利子で引いといてくれるらしい。至れり尽くせりだ。なんも考えなくていいってのは古代ギリシャ風の財産だね。
そんな嘉玲のお陰でオレは呑気にキノコの森を散策できている。
進むスピードは山歩きを楽しめる程度に落として( それでも十分速い )、とりあえずまっすぐ進んでみることにした。
( まるで不思議の国のアリスだな、、、キノコを齧れば大きくなったり小さくなったりするんだろうか、、)
身体能力がこれだけ強化されているんだからもはや似たようなものか。。。
時たま歩いているキノコさんに会うが、エリンギ、ジロール、モリーユ、ポルチーニといった洋風なやつが多い。この辺りはそういう地帯か。
あまり襲いかかってはこない。なぜだろう。そういえば洞窟のキノコさんも最近優しい。友だちになれたのかなあ。
日本でもこれら洋風きのこのどれもが昔から自生しているらしいが、洋風だからか人気はなく、採られることが少ない。もっと食べれば良いのに、もったいない。
チャイコフスキーもきのこ好きで、ポルチーニの群生を見つけた時、「全て俺のモノだ!」とか叫んだとかなんとか。無類のきのこ好きなんだな、きっと。
いくつかの楽曲もきのこからインスパイアされたのかもなあとぼんやり思考を遊ばせながら、分け入っていく。
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2時間ほど歩いた頃だっただろうか?
ふと顔を上げると眼下の遠くに道が見えた。
人工的な道が。




