18 春だから電車に乗らずにテクるべき
それから3ヶ月間、オレはキノコを蹴るマシーンと化した。どうせ帰ってこれるのは深夜だし、蹴れば蹴るほどなぜか元気になるから不思議だ。
嘉玲は今はオレの職場の近くの台湾文化センターで働いているらしい。こんな近くにいたのに、気づかないもんなんだな。東京は人を集めて孤独をたくさん作っている。
台湾と日本を繋ぐ仕事に就きたかったらしい。台湾語は話せるが、中国語は苦手とのこと。台湾では中国語を話せて当たり前、台湾語は聞き取れるだけといった内モンゴル自治区のようになりつつあるので、嫌だけど今は中国語を勉強してるって。
朝に一緒に職場近くまで行ったり、土曜日の朝方まで仕事があった時には、職場の仮眠室で寝た後、午前に台湾文化センターのシフトを終えた嘉玲と待ち合わせて、六本木までてくてく、スペイン大使館を潜り抜けて、丹波谷坂の古民家でおばんざいを食べたりした。
「平岡くんの働き方って常軌を逸してるわね、、、およそ合理的なものとは考えられないわ」
「オレもこれが合理的なものだとは到底考えられないよ。でもな、ヒトは続けるとそれが合理的なもののように感じられてくるんだ、今までいろんな人が同じことをやってきたんだから自分ひとりの判断よりこれまでの全員の判断を尊重するのが合理的だなんてな」
「ふ〜ん、、、この豚バラ肉とナスの煮物、とても美味しいわね。豚の旨味とナスの相性が格別だわ」
嘉玲は台湾人だからか、豚肉を好みとしている。台湾のアグー豚はまた別格とか、オレのキノコと合わせて食べたいとかこの前言ってた。
黙々と煮物をつついているオレも、流石に嘉玲の言いたいことは分かる。
仕事を辞めるべき時期なんだとオレも思っていたところだ。




