【e6m60】かへし
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大宮伸一は桜カレンにフラグされた。
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「……?」
気がつくと、俺は休み時間の教室に立っていた。わけがわからない。メモを持っている。“先輩と絶対に蕎麦を食べに行くな。既読イベントはスキップする”。これ……俺の筆跡だな。どういうことだ? 辻さんのエピソードなのに、先輩と蕎麦とは……。その時、カレンが帰ってきた。
「ったくマジでゴミじゃんあれ。ねーシンイチ、部のパソコン壊れたわー」
「えっ⁉︎ あのノートまた壊れた? お前なんかやらk――」
「やってないやってない」
「けど何か原因あるだろ? 終業式前に、生徒用パソコンは全部回収されてメンテ入るから、なんとかしないと……」
「大丈夫だって。もうセンセーに渡してる。簡単な説明もしたし」
「なんて?」
「何もしてないのに壊れた」
本当に簡単だな、まさに類人猿の説明である。その時、教室の扉が勢いよく開き――
「す〜ぱ〜ッ!」
古風な聲が喧しく響むと、カレンは片手でパチンと顔を覆った。この展開、記憶の片隅にある気がする。もしかしてこれが“既読”というやつか? だったらスキップできるはずだ。
▷▷(早送りのようにイベントが進む)▷▷
ある日の昼休み、常田先輩が職員室から出てくるのを見かけた。
「(๑ᵒᗜᵒ) あ、おーみやくん」
「え? なんでこんな所から?」
「(¯―¯٥) 最近車で登校してるから、おこられたの……」
うわぁ。あんなデカくてピンク(再塗装した)のアメ車、先生に見つからないわけがない。eスポーツ同好会って、マジで職員室を逆撫でせずにはいられないのか?
「(;¯꒳¯ ) よりによって、校長先生のちゅう車場にとめていたらしいの」
「うわぁ……」
「(´͈ ᵕ `͈) ところでおーみやくん、お昼まだだよね? のんたんに教えてもらった、おそば屋さんに行かない? 車もあることだし」
うわぁ……この人全然反省していない。てか、さらに逆撫でするつもり……ん? この時、以前手にしていたメモを思い出す。“先輩と絶対に蕎麦を食べに行くな”とは、このことじゃないか? なぜそうしてはいけないのかは、わからない。けど、書いた本人は他ならぬ俺だ。何かトラブルを避けるために違いない。
「あ、あ〜先輩? ちょっと今エンジン吹かすのは、人目付いてどうかと思いますよ?」
「(`ェ´) ヤダ〜! まいちゃん、おーみやくんとおそば食べた〜い!」
「ちょ、こんな所で声を荒げないでくださいって」
「٩(˃̶͈̀ロ˂̶͈́三˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ ヤダヤダァ〜! おそば食べる〜! お〜みやくんと食べ行くのぉ!」
「廊下に寝そべって駄々こねるのはやめてくださいwww」
合わせた手を戻し、目を開く。しんみりした気持ちになった。納骨堂は芳しい匂いが漂い、外とは違い少しひんやりして……ああ、あそこにエアコンあるんか。
「またダメだったか……」
あの後、“蕎麦屋ではなくレストランに行った”、“外食せずに校内で食べた”などのパターンを試した。しかしいずれにせよ、辻さんから先輩とイチャつく写真を差し出され、そのまま別れ話となってしまった。
「どういうことだ? 過去を変えても、あるべき未来に修正されていくのか?」
失意のうちに納骨堂を後にした。門を出ようとしたところ、敷居に足をひっかけて転んでしまった。
「クッソ、もうお手上げじゃねーか……」
立ち上がりもせず項垂れる。せっかく妙案だと思ったのに。辻さんが写真さえ撮らなければ、いつもの騒がしくて楽しい日々が続くはずなのに……。
今まで俺は何度辻さんの涙を落とさせた? 何度嫉妬の炎を煽って、心中の肝を焦がさせた? たった1つのイベントを変えたぐらいで、既に深く染まり切った心様まで、変えられるわけがない。先輩と辻さんの間でフラフラとしていた自身が、改めて憎たらしい。
「……」
参拝者のただならぬ視線を感じた俺は、立ち上がって砂を払い、無気力に家路につくのであった。




