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聖夜は恋の雪に埋もれて  作者: 桜坂ゆかり
第3章 クリスマス・イブ
12/15

グラン・オルロジェにて

 そして、翌24日―――。

 冬期講習の授業を終え、いったん自宅へ帰った私は、支度を済ませて4時半には家を出た。

 自宅から、レストランまでは10分ほどなんだけど、念のために少し早めに。


 4時45分には、お店に入って従業員さんと話をし、17番テーブルへと案内された。

 やはり、鉄平君はまだみたい。

 4時半頃まで用事があるって言っていたから、まだ終わってないのかも。

 私は、静かに待ち続けた。




 やがて、5時まであと10分くらいになった。

 鉄平君、まだかなぁ。


 そのとき、お店のドアが開き、誰かが入ってきたみたいだ。

 この席からは、衝立ついたてが邪魔で、誰なのか見えないけど。


「あれ? 麗?!」

 私のいるテーブルに近づいてきたのは……。

 鉄平君じゃなく、奏だった!

 驚いたのは私だけじゃなく、奏も同じようだ。

「ええ?! 奏もここでお食事を?!」

 ま、まさか……瑠璃と一緒に?

 今、瑠璃の姿はないけど……後から来るのかも。

「うん、渋宮と一緒に」

 うう……やっぱり、思った通りだ……。

 偶然、同じお店で予約していたのね。


 たしか、そういえば、瑠璃も鉄平君と一緒に、このお店でお食事したことがあったはず。

 バイト帰りの私が、たまたま通りかかって目撃したあの日。

 そうか、それでここのお店を気に入って、奏と一緒に……。

 雰囲気もおしゃれだもんね、ここ。


「麗も渋宮に誘われたんだろ? しかし、渋宮には困ったもんだな。三人で、っていうのなら、事前に伝えといてくれよ。びっくりするだろ……」

「え? 私は……鉄平君と……」

「えっ? 鉄平も?! じゃあ、四人ってことじゃないか!」

 呆れたように言いながら、私の向かいの席に座る奏。

 あれ?!

「え? 奏、このテーブル?」

「うん、17番。渋宮が言ってたから、間違いない」

「じゃ、じゃあ……やっぱり、四人でってことなんだね。鉄平君も17番テーブルって言ってたし」

「午後5時に?」

「う、うん……」

 そっか、やっぱりそうなんだ……。

 でも、なんで、鉄平君は言ってくれなかったんだろ。

 たしか、「二人で」ってはっきり言っていたはず。

 しかも、瑠璃も同じように、奏には「四人で」ってことを内緒にしていたらしいし……鉄平君と瑠璃の考えが、全く読めない。




「しかし、それにしても遅いな、渋宮と鉄平。あと5分ぐらいしかないぞ」

 腕時計を確認すると、奏の言う通り、まもなく5時だ。

「鉄平君は、4時半まで何か用事があるらしいし、少し遅くなる可能性はあるかも」

「え? 渋宮も同じこと言ってたぞ」

 ええ?

 二人揃って、4時半まで用事なんて……偶然?

「でも、5時までには来るって言ってたのにな……」

 腕時計を見つつ、不満そうに言う奏。

「まぁ、まだもう少し時間があるから……」

「あ、そういや……。麗、これで本当にいいのか? 鉄平のこと、好きなんだろ?」

「え?」

 突然、なんでこんな話に?

「二人っきりで過ごしたいだろうに、四人でって形になってもいいのか?」

「え? べ、別に、鉄平君とは、そんな関係じゃ……」

「でも、遊園地デートしてたでしょ」

「ええっ、あれはその……誘われて、断りきれなかっただけで!」

 動揺のあまり、立ち上がってしまう私。

 すぐ気づいて恥ずかしくなり、慌てて座りなおした。

 そして、鉄平君ごめんなさい、こんな言い方をして……。

「でも、それは奏も一緒じゃん。あのとき、奏だって、遊園地デートしてたでしょ。瑠璃のこと、好きなんじゃないの?」

「いや、好きは好きでも、『友達として』な。俺が好きなのは、むしろ……。んん、何でもな………。あ……」

 何かを言いかけたみたいだったけど、突然、黙った奏。

 その理由は、私にもはっきり分かった。

 誰かが、私たちのテーブルまで歩いてきたからだ。

 奏と私は、一斉にそちらを向いた。


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