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聖夜は恋の雪に埋もれて  作者: 桜坂ゆかり
第2章 12月23日
11/15

イブにお食事のお誘い

 そして、あっという間に、12月23日がやって来た。

 瑠璃と奏の関係に、あれ以来進展はないようだ。

 何かあれば、二人から教えてもらえると思うから。

 そして……私のほうも、鉄平君にまだ返事をしていない。

 ううう……ほんと、どうすれば……。




 冬期講習の授業が終わった後、いつものように瑠璃と一緒に帰ろうとしていると、教室前にて鉄平君が呼び止めた。

「瑠璃、ちょっと麗を借りてもいいか? ちょっと話があって」

「あ、いいよいいよ。これから帰るだけだし。それじゃ、二人とも、また明日ね」

 そう言うと、手を振って歩き去る瑠璃。

 私たちも手を振り返した。

 そして、鉄平君が言う。

「じゃあ、ちょっと、近所のカフェへ行こう。ついてきてね」

「あ、う、うん」

 鉄平君に言われるがまま、後ろをついていった。

 話って……やっぱり、告白のことよね……。

 断らなくちゃ……早く。




「で、ちょっとお誘いなんだけど、明日の夜、予定あいてる?」

 カフェにてアイスティーを注文し、席につくと、鉄平君が切り出した。

「あ、えっと、大丈夫だけど……」

 まさか、奏と過ごす予定などはないから。

 ほんとは奏と過ごしたいけど……。

「夜、二人で出かけない? あのお店で食事したあと、駅前でイルミネーションでも見ようよ。そういえば、麗と瑠璃と奏は、こないだ見たんでしょ。俺、実はまだ見てなくて」

 あのお店っていうのは、きっとグラン・オルロジェだろう。

 で……明日はイブ……。

 イブの夜に二人で食事……そして、イルミネーションへ……。

 恋人っぽい、すごく。

 言葉に窮している私の様子を見て、困ったような表情で鉄平君が言葉を続けた。

「困らせてごめん。そりゃ、俺だって、まだあの告白の返事をもらってないってことぐらい、分かってるよ。でも、返事がどうとか関係なく、ただ一緒に過ごしたいだけなんだ。俺としては、明日一緒に出かけてくれるだけで嬉しい」

 鉄平君ほど素敵な男子から、こんなことを言われるなんて……。

 もちろん、嬉しくないはずがない。

 でも……でも……。

 私はやっぱり奏が……。

「あの、えっと……お返事、遅くなってごめんね……。えっと……」

「ああ、ストップストップ!」

 なぜか慌てた様子の鉄平君。

 どうしたのかな。

「今、告白の返事、『ごめんなさい』を言おうとしたでしょ。待ってってば。もう一度、明日一日でいいから、チャンスが欲しい。その後で、断ってくれてもいいからさ」

「え? いや……別に今、断ろうとかしてなくて……」

「あ、そうなの?」

 鉄平君は苦笑いを浮かべる。

「まぁ、それはともかく。明日、何も予定がないのであれば、俺と一緒に過ごしてくれないか? もちろん、あの店で食事して、駅前のイルミネーションを一緒に見る……それだけでいいから。俺は、全力で、麗を楽しませるからさ」

 笑顔で言う鉄平君。

 私は悩んでしまう。

 明日、瑠璃は家の用事があって、忙しいという。

 そして、私には、奏を誘う勇気はない。

 バイトもないし。

 つまり、何の予定もない。

 結局、寂しいイブになりそうだし……それなら……。

 だけど、こんな気持ちで、鉄平君と過ごすなんて、失礼なんじゃ……?


「もし、つまらなく感じたら、途中で帰ってくれていいからさ。ダメかな?」

「ええっ?」

 鉄平君、そこまで……。

 そんなにまでして、私なんかのことを……。

 そのときだった―――。


 悩み続けつつ、窓の外に何気なく視線を送っていた私の目に、見知った二人の姿が飛び込んできた。

 奏と瑠璃!

 二人はこちらには気づかない様子で、何やら話しながら歩いている。

 まさか、瑠璃は、奏と一緒に下校中?

 そして―――。

 奏が笑うのが見えた。

 瑠璃は終始、笑顔のままだ。

 そんな……。

 ショックのあまり、何だかくらくらしてくる。

 そして、自然と言葉が口をついて出た。

「うん、いいよ。明日、よろしくね」

「おおっ、ありがとう! 俺、こんなに嬉しい思いをするのは、久々だなぁ」

 朗らかな笑顔を見せる鉄平君。

 奏と瑠璃は、きっと明日のイブも一緒に過ごすんだろう……。

 私にはどうすることもできない。

 あの光景にショックを受けて、ついつい勢いで、鉄平君のお誘いをオッケーしちゃった。

 それに、ここまで熱烈にお誘いしてくれてるのに、断りにくくて。


「じゃあ、明日、5時にこのお店でね。俺、ちょっと4時半頃まで用事があるんだけど、絶対5時にはここに来るから、待っててね。そうそう、17番テーブルに予約を入れておくよ」

「えっ、前日なのに、予約入れられるの?」

「ふっふっふー。麗は、俺がどこでバイトしているか、忘れちゃった? しかも、俺、バイト長だし」

 バイト長……あのお店の中で、かなり偉いみたいに聞こえる。

 高1なのに、すごいなぁ。

「え~、職権乱用じゃないよね? 大丈夫?」

 気になって聞いた。

「大丈夫だってば。そんなことより……麗、しっかり覚えておいてよ。午後5時、17番テーブルだぞ」

「うん、了解」




 それ以降は、雑談をして過ごした。

 ……ほんとにこれでよかったのかな。

 奏……。


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