第三十八章 走り出す☆地下水路の冒険
井戸の中は真っ暗、かろうじて地上の光が届くくらい。
でもそこから先は完全な闇が支配する空間。
あたしはとりあえず、リュックから出した、火打石で神殿で作った松明に火をつける。
ぱっと明るくなる井戸の中。
水が光を反射して、赤く照らし出される。
あたしたちのびしょびしょ具合、そして井戸の中がよくわかるけど。
「この井戸、広いかも。」
でもそこは井戸にしてはとても広かった。
松明の明かりが壁を照らし出さないのがその証拠。
二人がたっても全然余裕だし。
なんなら手を広げても大丈夫。
「確かに広そうね?とても、井戸とは思えないわ。むしろ井戸というより水路といった方がしっくりくるわね。」
確かにマリアの言う通り、井戸というより、水路?なのかもしれない。
「でも水路ならどこかへ続いてるはずっ。」
「アリア見て。これ壁よ。天井に向かって湾曲してる。これ、トンネルよ。」
「ほんとだ。」
アリアの言う通り、壁は湾曲し、天上でぶつかっている。
大昔の人たちが作ったのにあとから井戸でもつけたのだろうか?
ところどころ崩れてる場所はあるけど使えそう。
「でも、これなら村の方まで水を引けるんじゃないかしら。水が蒸発しちゃう心配もないし。水路の方向が村の方へ向かっていればだけれど。」
方位磁石で村の方向を確かめるマリア。
「村はあっちね。このまま、村の方まで伸びてるといいのだけど…。」
☆☆☆
果てしなく、長い水路を歩くあたしたち。
松明の明かりを持ったあたしを先頭に時には腰のあたりまで水につかりながら、歩いていく。
松明の炎が消えないか、心配になるくらい、すごく、長い道のり。
時折、道中に道をふさぐような大きな四角くて長細いものを見かける。
「これ?なんだろ?」
さっきから何回か見かけたけど。
「岩ではなさそうだけど。」
コンコン叩いてあたしは感触を確かめる。
カンカンと甲高い音。
「中に空洞がありそうな音ね。」
「水路にそんなの置く?なんかすんごい邪魔だけど…。」
「さあ、何か意味があって、置いてるんだとは思うけど。」
と今度は水路をふさぐように、二つの長細いもの。
上はジャンプしてみたけど通れそうにない。
「もしかして行き止まり?」
「アリア、待って。」
「さび付いてはいるけど、ここに扉があるみたい。」
マリアが松明を近づけ両開きの扉があることを確認する。
「せーの。」
二人で左右に引っ張ると重たい音を立てて開く扉。
ポロポロとこぼれ落ちるサビのようなものと金属の部品。
中を照らしてみるとやたらと横に長いどこまでも続く椅子と「これはなんだろ?」天井からつり下がる丸い輪っか。
「この輪っか何に使うのかな?」
「さあ。」
筋トレ用かな?
学校の筋肉たちに教えたら喜びそうだけど。
壁には広告だろうか、何枚か紙が貼られている。
「天の川セントラルステーション行き路線、絶賛運行開始中☆」
埃をかぶったいくつかの広告。
これは空飛ぶ列車?
その後ろにはどこかの宇宙。
そしてこっちには…。
「眠らない街へようこそ。最上級ホテルで素敵なひと時を。」
たくさんの明かりを放つ背の高い建物と街の夜景。
ワイングラスが光を反射してとてもきれい。
「絶景、バビロンの空中庭園見学ツアー開催中。」
お次は空飛ぶ庭園と大きな滝のイラスト。
庭園には色とりどりの花と観光客。
そして、色とりどりの蝶。
「スイーツ☆ふぁくとりー今だけ半額セール実施中。」
テーブルいっぱいに並べられたたくさんのスイーツ。
なんだかたのしげ。
そしてこれはなんだろ?
ぐねぐねと曲がった通路に口元にクリームのついた甲冑。
?????
「星々のその先へ。月面旅行、月の最高級リゾートで素敵な新生活☆ミ」
そしてその次はお月様に真っ赤な感じの木造の建物。
スパなのか、傘の下で寝そべる観光客。
ていうか、月にも人間いるの⁉
てっきり、ウサギさんの住んでるとこだと思ってたんだけど…。
「閉店セール実施中。真夜中のデパート3Fにて。」
今度はデパートのバーゲンセールのお知らせ。
真っ赤なリボンにSALEの文字。
これは普通の広告って感じかな。
他にもいくつかたのしげな宣伝。
「やっぱり今もどこかにあるのかな?」
この広い地上のどこかに…。
空飛ぶ列車に、眠らない街、空中庭園。
「いつかいってみたいねっ。」




