第三十五章 いどのそこのヒミツ
とはいったもののあてもあるわけでもなくまずは井戸があるかの調査。
聞くと村に井戸は一つだけ。
それ以外はとっくの昔にもう枯れてしまったらしい。
「ここかな。」
「ソレっぽいね。」
それは石の積み上げられた石積みの井戸。
ご丁寧にはしごがかけられていたので試しに降りてみる。
あたしが先、マリアが後。
砂を掃きだそうとしたのだろうか、カンカンに干からびた井戸の底には砂をバケツで掃きだそうとした痕跡が残る。
当然ながら水はなく、そこにあるのは、サラサラした砂だけ。
ここ数日の日照りで村で最後の井戸も枯れてしまったらしい。
手ですくうと指の間を通り抜けていく、砂の粒。
もちろん掘っても、湿った地面は出てこない。
乾いた砂がまた穴を埋めようと崩れるだけ。
「で、どうするのアリア?何か考えはある?」
梯子で井戸の底に降りた後、そう尋ねるマリア。
あたしに考えがあるかというと…ない。
頭脳担当はマリアだからね。
つい勢いで言っちゃったわけなんだけど…。
「何かいい案ないかな?」
「やっぱり…。まぁ、ここは枯れてるようだし…。一番いいのは近くの水源から水を運んでくることだと思うけど…。」
「あっ☆女神さまだ。」
ちょうど、頭上から聞こえる可愛い声。
「よいしょっ。」
梯子をたどたどしく下りてくる女の子、イブちゃん。
森で出会った初めての人間の女の子。
「こんなところでどうしたの?女神様?」
そう聞くイブちゃんにあたしたちは事情を説明する。
「そーなんだ。」
うんうんと首を縦に振るイブちゃん。
そして何か思いついたように手をたたく。
「あっ、そだ、雨降らせれば…いいんじゃない?ほらっ、女神様なら魔法で、えいってさ☆ね?簡単でしょ?私たちの病気も直してくれたし。」
「いやいや、私たち。天気の神様じゃないからね?」
そう答えるマリア
そう、あたしたちは天使。神様ではない。
それに天気を決めるのは天気の神様のお仕事。
雨にしても、晴れにしても、嵐にしても、雪にしても…。
「そういうのは専門外かなっ。」
ニコッと笑顔でそう答えるあたし。
「でもでも、昔話でもよくあるよ。ほら、えっと、かぼちゃを馬車にしたりさ。かぼちゃを馬車にするときに言うやつなんだったけ?ビビ…。」
「…。」
イブちゃん、それ、神様ですらない…。
それは魔法使いさんのお仕事だよ?
この地上には、いるかどうかわからないけど。
少なくともあたしたちには使えない。
魔法ってそこまで便利なものじゃないみたいだし、あたしたちはまだ、習ってない。
それに魔法使いって職種は天使にはない。
まぁ、ヒトもいたし、まだどこかにはいて細々と暮らしてるのかもしれないけど…。
でも…。
「それは魔法使いさんの仕事かな?」
そう話をまとめるあたしなのだった。
☆☆☆
「ね、村の井戸は全部こんな感じなの?」
マリアが井戸の底のサラサラした砂を触りながらそう問いかける。
「うん。だから、最近は森に食料を取りに行ってるんだ。」
砂に混じっていたのか、指の間をすっと、通り抜けていく黒いトカゲ。
穴を掘り、地面へと潜っていく。
「雨は降ってないの?」
「もうずっとこんな感じだよ。食べ物もないから…。森の中まで取りに行ってるの。」
「あっでも、隣の村の井戸はまだ枯れてないかも。森に近いし。」
「ただ、暑すぎて、持ってくるまでにほとんどなくなっちゃうんだよ。」
「川でもあればいいんだけど…な。」
☆☆☆
「となり、むら…。となりむら…。」
村長さんからもらった地図を手に村から飛び立ち隣の村を目指すあたしたち。
お空に光る真っ赤な太陽が荒野を照らす。
太陽の光がまぶしい。
そー言えば羽があるんだから馬車に乗らずに神殿から村まで飛んで来ればよかったと思わなくもない。
それはそれとして村長さんにもらった簡単な地図を見つめるたあたしたち。
地図には目的地の丸印と今いる村の位置を示す家のマークが書いてあるだけ。
手書きの地図で。
線もどこかブレブレ。
上にしても下にしてもあら不思議、さっぱりわかりません。
「いまここだから…。」
地図を上下にひっくり返しながらなんとか現在地を探す。
「うーん?たぶんこのへん?」
「あっ、あれじゃない?」
地図を見る、あたしの頭上から双眼鏡で確認するマリア。
「案外、近そう。」
遠くに見えるたくさんの壊れたビル。
「村というより街なのかな?」




