第二十二章 訪問者は突然に
ぐぅううーっ。
そこは深い深い、森の奥。
時折聞こえる動物の声。
鳥の飛び立つ音。
ここは高くまで、緑が生い茂る大森林。
ぐぅううーっ。
そこに混じるどこか場違いな音。
えっ?何の音かって?
これはね。ぐーっと私のおなかが減る音。
だってお腹空いてるんだもん。しょうがないじゃん。
「ああ、おなかすいたー。」
村はもう、ずっとむこう。
村の周りの木の実は取りつくしちゃったので、今日は少しだけ遠出。
手持ちのかごに木の実やきのこを拾ってはいれる。
「この辺りはもう取りつくしたのかな?」
地面にはきのこを掘ったような穴。
私以外にも村から来たのだろうか。
それとも、動物?
それとも、ヒト?
ぐぅううーっ。
再びなるおなかの音。
「ああー。おなかすいたー。」
おもわずそう、口に出してしまう。
だって、おなかすいてるんだもん。
いっそのこと、キノコ生で食べちゃう?
いや、やめとこ。あとでお腹痛くなったら困るし。
というか、そもそも食べられるやつなのだろか?
くんくん。くんくんくんくん。
「ん?」
そんなおなかをすかせ、キノコを生で食そうとしている私の鼻にはいってくるなんだかとってもいい匂い。
「何のにおいだろ?」
どこからか漂う、すんごいいい匂い。
「幻覚?」
さっきのキノコ毒だったのかな?
いや、幻覚でもいいか。
そう思ってしまう私。
「それにしても何の匂いだろ?お料理?こんな山奥で?」
とても香ばしい匂いが山の上の方から漂う。
「こっちのほうからかな?」
匂いに寄せられ、山道を外れ、草木生い茂る、獣道へと入っていく。
イノシシの群れを素通りし、ミツバチの巣をかじるクマの前を通り、コウモリのいる洞窟を通り抜け、匂いの道をたどる。
「この辺りにお店とかはないはずだし。」
空の上の鳥たちが威嚇してくるのも気にならず、草の生い茂る道なき道を進んでいく。
「私たち以外に人って住んでるのかな?」
上流から流されてきた丸太を橋代わりに、川を渡る。
澄んだ川の水に魚の影が映る。
この先には確か、今は使っていない神殿があったはず…。
ぼーっとした頭でそんなことを考える私。
周りは藪のように、草木が生い茂っているけど、かまわず進んでいく。
さらに強くなっていくいい匂い。
そして、ふいに大きく開ける私の視界。
そこには……。
古びた大いなる女神様の神殿があったのです。
☆☆☆
幻覚かな?
それとも私はもう死んでいてここは天国?
いい匂いにつられて、入った誰もいないはずの神殿の敷地内。
のはずが…。
外には風になびく洗濯物。
暗い入口には焚火のあと。
しかも、まだ火がくすぶっている。
「まだ新しい。」
床には煤けた黒い跡。
指には黒いすすがつく。
火も消えてないし。
そばには薪も置いてある。
そして、そこからずっと奥の方まで伸びる足跡。
「ここにはヒトは住んでいないはずだけど…?」
「誰かいるのかな?」
「村の人たちはこんな中まで入らないはずだよね?」
「いや、もしかして…神様?」
あたまをプルプルと振る私。
いや、そんなわけ…。
でも、大昔にいたって言うし…。
そもそもここ女神様の神殿だし…。
村は今ピンチだし、女神様が助けに来てくれた可能性も…。
なくはないのかな?




