第十五章 人と☆天使と☆神々と☆
「ちょっとまってて。」
幹に足をかけ、木に登り、引っかかている枝を折って排除していくあたし。
濡れてて結構上りにくい上にこの雨。
つるつるして滑りやすい。
ちなみにマリアは上るのも降りるのも無理なタイプなので、あたしがお姫様抱っこの要領で下で受け止めてあげる。
「大丈夫?」
「うーん。何とか。」
そういって頭についた葉っぱをぶんぶん振り落とすマリア。
緑色のツインテールがブンブンと揺れる。
「とれた?」
「とれてないよ?」
ツインテールにぶっ刺さった木の枝や、ツンツンした葉っぱを取り除いてあげる。
「はい、きれいなった。」
「それより、羽衣は?」
落ちてきた真上を見上げるあたしたち。
そこにはビリビリに破け、木に引っかかった二人分の羽衣。
私の近くにないと思ってたけど。こんなところに?
まだ、使えるだろうか?
暗くてよく見えないけれど。
ごろごろどっしゃーん。
分厚い雲で真っ黒になった視界が真っ黄色に染まるような稲光。
稲光に照らされた羽衣はびりびりに破け、もうすでにチーズのように裂けている。
「どう見ても、使える状態ではなさそうだね。」
そして相変わらずの勢いのある雨。
愕然とするあたしたち。
雨なのか、涙なのかわからなくなった液体が目に染みる。
でも立ち止まってはいられない。水滴を振り払うあたし。
だって、ここまで来ちゃったんだから。
もう天界はあの雨雲のはるか上。
ここから見ることもそして戻ることもできない。
ならあたしたちができることは一つ。
ただ前に進むことだけ。
わんこみたいに雨粒と涙を振り払い、気合を入れるあたし。
「まっ、なんとかなるでしょ。いつか帰れるし。そもそも、帰る用として渡されてないし。行ったきりの旅。」
「進むよ、どこまでも。」
雨の中、えっへんと胸を張るあたし。
「それもそうね。」
「まずはこの雨のほうを何とかしないと。」
天を仰ぎ、暗い空と雨粒を見つめるマリア。
「何か、雨をしのげるものがあればいいんだけれど…。そうでなきゃ、風邪ひいて、倒れておしまいよ?」
「それなら問題なしだよ。向こうに建物が見えたの。ついてきて!」
「ちょっ…。」
マリアの手をつかみ、走り出すあたし。
「ほら、いそぐよ☆」
泥だらけの地面を泥を跳ねながら、手をつなぎ走り出すあたし。
目標はさっきみた人が住んでそうな建物。
ヒトってどんな感じなんだろ?
天使とはちがうのかな?
怖い人たちじゃなければいいけど…。
「ね?マリアはヒトって怖いと思う?」
「さあ、どうかしら。会ってみなければわからないわね。というか会ったことないし。」
「なんかちょっと、ちょっとだけ不安かも。」
「まさか、天使を食べたり、しないよね。」
「おまえ、うまそうとか言って。」
「そんな野生に回帰してる人間いないと思うけど…。人間には一応、理性ってやつがあるのよ?たまになくしてる輩もいるみたいだけど。」
「理性?」
「本能を抑えるブレーキみたいなやつよ。人間は良くも悪くも、欲望に忠実だからね。でもみんなが悪い奴ってわけでもないみたいよ?」
「ふーん。そう言うもんなんだねー。ところでそれ?どこ情報?」
「教科書に書いてあるわよ?次の宿題の範囲まだ手つけてなかった?」
そういえば、マリアはちゃんと予習して授業挑む派だった。
「う…。それ天界戻ったらやらなきゃいけないやつじゃん。」
もちろんあたしは当たって砕けろ派である。
「心配、しないの。アリアには私がついてるでしょ。」
「たとえ天界に戻れなくなったとしても。私、アリアがいれば何とかなりそうな気がするの。宿題分かんなきゃ教えるし。」
「それは気のせいじゃないでしょ?」
「もちろん。だってまだ、冒険は始まったばかりだもん。」
「行くよ、地の果てでも、この世の果てまでも。」
「あと、帰ったら、宿題やんなきゃ…。」
☆☆☆
「というかこの木ラジエルの言ってた剣山みたいなチクチクの木だよね。マリアお尻、穴開いてない?大丈夫?」
「空いてたら、ここにいないんだけど。というかこの木そこまで固くないよ?座ったら痛いだろうし、座らないけど…。」




