第十四章 地上ついちゃいました☆ミ
ザザザザザっー。
あたりに響き渡る音。
頬にぽつぽつとあたる固いモノ。
たぶんこれ、雨だ。
乱気流にでも飲まれて、天界第二階層のどこかに不時着でもしたのだろうか…。
徐々に目を開けると遥か上空にある黒い雲。
時折激しい稲光。
そしてそこから降り立つ、おびただしい数の水滴たちが私をめがけて押し寄せる。
上空から目薬差すのはやめていただきたい。
目元を拭い、頬をパチンとし、目を覚まさせるあたし。
手を見ると真っ黒な泥水が手のひらを伝い、下へと落ちていく。
手にはドロドロとした土の感触。
体の下には固い地面の感触。
「いてててて…。」
いつもの天界のふわふわした雲じゃない。
しっかりとした土。
雨水を吸い込み、ぬかるんでいる。
ねちょっとした感触。
立てばきっちり、そこに残る、足跡。
下にあるのは紛れもなく…地面だった。
「そっか…、着いたんだ。」
バシャバシャと羽についた水滴を振り払い、周囲を見渡すと…。
遠くの方にうっすらと建物のような影。
「人でも住んでるのかな?」
「あれマリアは?」
ふと、となりをみるとそこに親友の姿はない。
たぶん、乱気流の中で揉まれてはぐれてしまったのだと思う。
というかあの稲光の中飛ぶのは無謀にもほどがあった。
「マリア―。」
親友の名前を呼ぶあたし。
あんまり、遠くに行ってなければいいけど。
地上は結構広いらしいし。
端と端に落っこちたりなんかしてたら、探せないかもしれない。
リュックの中からレインコートを取り出し、相変わらずのひどい雨でびしょびしょになりながら、マリアを探すあたし。
レインコート持ってきてよかった。
というかレインコートの下はすでにびしょ濡れなんだけど…。
それはもう仕方ない。
というか雨だと羽濡れるし、ろくに飛べないし。
帽子のつばから垂れる大量の水。絶賛、視界不良。
「マリア―。」
もう一度大きな声で呼ぶあたし。
近くの川は増水。ものすごい音を立て、岩や木を運んでくる。
「うぉっ。」
あたしのすぐ脇を流れて行く濁流。天界では見たことのない光景。大きな丸太や岩が押し流されてくる。
「危なっ。」
はじめての地上の冒険、ちっとも気が抜けない。
大きな丸太をくぐり、道なき道を先へ。
すると、どこからか声。
耳をすませば、聞こえてくる。
何て言ってるかはわからないけど、たぶんそう。
声は川の向こう側から。
「マリア―。」
岩伝いに川を降り、増水した川に引っかかった大きな木の上を進む。
足で感触を確かめ…。
たぶん外れることはなさそうだよね…。
濁流に飲み込まれたらアレだけど…。
「うん、行けそう。」
とにかく猛ダッシュで走りきる‼
見る見るうちに勢いを増していく川。
向こう岸についたとたん、木や石を巻き込んだ濁流に押し流されていく大木。
ものすごい水しぶき。
危ないとこだったよ…。
一歩間違えば川の藻屑…。蟹のお仲間入りのとこだったよ。
「アリア―ここよー。」
上の方から声。
声が聞こえたほうを見ると大きな木の枝に引っかかった羽衣と、さかさまになったマリアの姿。
「とりあえず、降ろしてくんない?」




